世界初!モータに内蔵可能なSiCトレンチMOSFETモジュール・
ショットキーバリアダイオードモジュールの開発に成功!

発表日:2010-10-04


ローム株式会社(本社:京都市)は、このほどSiC(シリコンカーバイド)-トレンチMOSFETを搭載したモジュール(600V/450A) と、SiC-SBD(ショットキーバリアダイオード)を搭載したダイオードモジュール(600V/450A)のモータへの内蔵および駆動に成功しました。今回ロームが開発した600V/450Aクラスのモジュールはローム独自の低オン抵抗SiCトレンチMOSFETとSiC-SBDを採用することで従来のSiを使用したモジュールと比べて体積比で約半分という小型化と高温環境での動作を実現しています。これにより、200℃の環境下でも動作可能となり、モータへの内蔵が実現できました。

近年、急速に発展しているハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)などに代表されるパワーエレクトニクスの分野では、デバイス駆動時の電気エネルギーから機械エネルギーへの変換効率を上げる事が最重要課題となっております。電子デバイスをモータ内に搭載し直接モータを駆動できれば、従来発生していたギアや駆動軸での損失を抑える事が可能になり、課題となっている損失低減に貢献する事ができます。モータ内部は最高で200℃近い高温の環境になるため、従来のSiモジュールではモータ内で駆動ができませんでしたが、200℃を超える高温環境下でも駆動できるSiCモジュールであれば、モータ内の高温環境下でも動作させる事ができます。

今回開発したSiC-MOSFET、SBDデバイスの素子単体での特性では既存のSi-IGBTでは困難な200℃以上の環境下での動作と、冷却システムが不要になることでのモジュールサイズの小型化を実現しています。また、モジュールの小型化で電力密度が上り、素子の温度が上昇する問題を抑制するため、素子の裏面だけでなく表面からも放熱できる構造になっております。これらの技術により、モータへのモジュール内蔵が可能となり、モータの効率向上が期待できます。この技術はHEVやEV、産業機器への応用が可能で、パワーエレクトロニクス分野で課題となっている損失の低減に貢献できる技術です。

SiCデバイスは、高速で低損失のスイッチングが可能なため、この特長を活かした用途への検討がこれまで行われていましたが、今回、スイッチング特性だけでなく、高温環境中での駆動が必要なモータに搭載した事により、低損失のみならず、高温駆動が求められる分野へも適用可能である事が確認できたことになります。

ロームは、今後も大電流を扱うパワーエレクトロニクス分野で必要な電力変換デバイスの、さらなる応用展開を進めてまいります。

なお、この開発成果は、2010年10月5日から9日まで、千葉県・幕張メッセで開催される、「CEATEC 2010」のロームブースにて展示される予定です。


600V/450A SiCトレンチMOSFETモジュール 6素子入り600V/450Aダイオードモジュール
600V/450A SiCトレンチMOSFETモジュール 6素子入り600V/450Aダイオードモジュール


(グラフ)225℃での静特性 (グラフ)室温と高温での順方向特性
225℃での静特性 室温と高温での順方向特性

モータへのモジュール搭載イメージ
モータへのモジュール搭載イメージ

語句の説明

  1. SiC(シリコンカーバイド:炭化珪素)
    バンドギャップがシリコンの約3倍で、絶縁破壊電界が約10倍、熱伝導率が約3倍というすぐれた物性値を持つ化合物半導体であり、 これらの特性がパワーデバイス応用と高温動作に適している。
  2. MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistorの略)
    金属-酸化物-半導体電界効果トランジスタのことで、FETの中では最も一般的に使用されている構造である。スイッチング素子として使われる。
  3. SBD(ショットキー バリア ダイオードSchottky Barrier Diode の略)
    金属と半導体を接触させることでショットキー接合が形成され、整流性(ダイオード特性)が得られることを利用したダイオード。 少数キャリア蓄積効果が無く高速性に優れているという特徴を持つ
  4. トレンチ型構造
    トレンチは溝を意味する。チップ表面に溝(トレンチ)を形成し、その側壁にMOSFETのゲートを形成した構造。 プレーナー型MOSFETに構造上存在するJFET抵抗が存在せず、プレーナー構造よりも微細化が可能なため、SiC材料本来の性能に近いオン抵抗が期待できる。
  5. オン抵抗
    パワー素子の動作時の抵抗値。パワーMOSFETの性能を左右する最も重要なパラメータで、値が小さいほうが高性能である。
  6. パワーエレクトロニクス
    電力(パワー)を半導体デバイス(エレクトロニクス)を用いて都合の良い形態に変換し、自由に制御する技術である。家庭用の電気製品から、産業、鉄道、電力などのシステムに適用されており、現代の生活に無くてはならない存在である。
    ※ 正田英介 楠本一幸 パワーエレクトロニクス オーム社
  7. ハイブリッド車(HEV)
    内燃機関と電動機を組み合わせた動力源を持ち、状況に応じて単独、あるいは複数と、電力源を変えて走行する自動車のこと。総合効率が電気自動車や燃料電池自動車と同程度であり、環境負荷の低い実用車として注目されている。
  8. 電気自動車(EV)
    電力により推進する自動車。二次電池(稀に一次電池)を動力源とし、外部からの充電または電池交換により走行用の電力を得る自動車。
     

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