特集:コンデンサ技術
タンタルコンデンサの技術動向

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コンデンサ技術特集:タンタルコンデンサの技術動向 2010年1月28日号掲載

はじめに

近年、ノートパソコン、デジタルスチルカメラ、携帯ゲーム機、携帯音楽プレーヤー、携帯電話、PND(パーソナルナビゲーションデバイス)等のデジタル機器の普及が目覚しい。さらにUMPC(ウルトラモバイルパソコン)、スマートフォーン、PND(パーソナルナビゲーションデバイス)等に代表される小型情報端末については、性能を落とさずに小型化・薄型化、あるいは、機器の大きさを変えずに高機能、多機能化を図ることが強く求められている。
このような市場動向の中では、当然ながら電子部品にも小型化・薄型化・高性能化が強く求められている。タンタルコンデンサにおいてもデジタル機器の小型・薄型・軽量化のため、小型・薄型での大容量化が要求されつつあり、こうしたニーズに対応した製品は、今後さらに市場拡大が期待されている。
ロームでは、近年下面電極構造を採用し、素子の体積効率を高めることで、小型・薄型・大容量品の要求に応えてきたが、今後さらにこの下面電極品の内部構造を見直すことで、さらに体積効率を高め、さらなる小型・大容量化を進め市場要求に応えていく方針である。以下にロームが生産するタンタルコンデンサの小型・大容量化・製品化・技術動向について述べる。

写真 豊富なロームのタンタルコンデンサラインアップ

タンタルコンデンサの製造方法

タンタルコンデンサの模式図を図1に示す。陽極がタンタル、誘電体が五酸化タンタル(Ta2O5)、陰極が二酸化マンガンまたは導電性高分子となり、グラファイト層、銀層となる。  
タンタルコンデンサの一般的な製造方法は、まず、タンタル金属の粉末を所定の寸法に成形し、高温(1,000~2,000℃)・真空中で焼結し、焼結体を作製する。この焼結体をリン酸水溶液等に浸し電圧を印可して、化成をし、誘電体となる五酸化タンタルを形成させる。
陰極部は大きく分けて2種類ある。従来品の二酸化マンガンと低ESR品の導電性高分子である。二酸化マンガンは、硝酸マンガン溶液を焼結体に含浸させ、熱分解させて五酸化タンタルの表面に生成される。導電性高分子は、ポリチオフェン系に代表される化学重合法とポリピロール系に代表される電解重合法により生成される。
次に、接触抵抗を低減させるためグラファイト層を設け、その後引き出し電極である銀層を設け、素子が完成する。
その後、リードフレームに素子を溶接し、樹脂封止をする。熱衝撃、標印、エージング、外観検査・電気特性測定等をしてスクリーニングをし、テーピングをして完成品となる。

図1 タンタルコンデンサ素子構造図
図1 タンタルコンデンサ素子構造図

タンタルコンデンサの大容量動向

タンタルコンデンサの大容量化については、一般的に(1)パッケージに対する素子の体積効率アップ、(2)タンタル粉末のHigh-CVパウダー採用下記の2点の技術課題の改善が必要であるが、ロームではこれらの技術的課題をクリアーし、世界一(ローム調べ)の小型・大容量品(1608/100μF・2012/330μF)を達成した。下記に弊社の小型・大容量化技術について述べる。

(1)パッケージに対する素子の体積効率アップ

従来の下面構造(図2)から新下面電極構造(図3)を採用することにより、従来比60%アップを達成した。技術的改善内容については下記の通りである。

・外形形状の改善による内部素子体積効率アップ
内部素子の体積をアップするため、従来の下面電極構造で、ロスしていた外形のテーパー構造を見直し、ストレート型にすることで、その分内部素子体積の大型化を図った。もちろんモールド肉厚は従来品と同等にキープしており、パッケージ強度も確保している。

・内部陽極側スペースの改善による内部素子体積効率アップ
  下面電極構造品では、陽極側に無駄なスペースがある。

  1. タンタルワイヤー溶接用枕部
  2. タンタルワイヤー這い上がり防止部

これらの形状や材質を見直し、改善を行った。

図2 従来下面構造
図2 従来下面構造
図3 新下面電極構造
図3 新下面電極構造
(2)タンタル粉末のHigh-CVパウダー採用による大容量化 

大容量化を達成する手段としては、(1)で述べたパッケージ効率アップ以外にタンタル粉末High-CVパウダーを使用する手段がある。
ロームでは現在、タンタルペレットの焼結体密度、ポア径の適正化及び管理により200Kcvクラスを量産化している。また、250Kcvクラス迄の技術確立もすでにできており、順次量産を開始する予定である。
(1)、(2)の大容量化技術を適応することにより、下記のラインナップを揃えることが可能であり、情報端末機器のさらなる小型化・薄型に貢献していきたい。

表1 大容量化技術適用によるラインナップ
表 大容量化技術適用によるラインナップ

Pケースクラスの特性を確保したTCSM(1608)シリーズ

新下面電極構造の採用により、従来の下面電極品の素子ボリューム比60%アップを実現し、 さらには焼結体密度、ポア径の適正化により、Mケース(1608)でありながらPケース(2012)なみの特性を確保することができた。
一例として下図に1608/4V/100μF品と2012/4V/100μF品との等価直列抵抗の比較データを記載する。

図4 等価直列抵抗の比較データ(2012/4V/100μF VS 1608/4V/100μF)

まとめ

デジタル機器の高速応答化や高周波化、多機能化、小型・薄型・軽量化等に対応するため、タンタルコンデンサは、小型・薄型・大容量化及び低ESR化が要求されている。
ロームでは新下面電極構造を採用し、パッケージに対する素子の体積効率アップ及びタンタル粉末のHigh-CV品を使いこなすことで、特性を落とすことなく世界一の小型・大容量(1608/100μF・2012/330μF)を達成し、市場要求に応えていく。また、今後は、新下面電極構造を導電性高分子品にも順次適応して、低ESRの市場要求にも応えていく方針である。もちろん環境対策として、鉛フリー、ハロゲンフリーにも対応している。
今後もさらに開発体制を強化し、短期に新商品の開発・量産を行い、お客様の要求に迅速に応えていきたいと考えている。

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