特集:マイコン技術
「インテル®Atom™プロセッサー E600 番台」向けチップセット

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「インテル<sup>®</sup>Atom™プロセッサー E600 番台」向けチップセット

はじめに

マイクロプロセッサー世界大手であるインテル®社は、組み込み機器向けの製品展開の強化に乗り出した。従来のパソコンやサーバー向けプロセッサーに続く新たなインテル®社の事業の柱にするために、組み込み機器向けプロセッサー市場を開拓する考えである。そのための主力製品が「インテル®Atom™プロセッサー E600 番台」である。45nm世代のプロセスを使って製造する同プロセッサーは、エントリーPC、ネットブック、携帯情報機器、コンシューマ機器などに向けて同社が展開を図っている。インテル®Atomプロセッサーシリーズの特徴である86系命令セットに対応した低消費電力のCPUコアを中心に周辺回路を搭載したシステム・オン・チップ(SoC)と呼ばれるデバイスで、組み込み機器への展開を前提に設計されているのが特徴である。
具体的には、グラフィックス描画処理回路、動画処理回路、ディスプレイコントローラ、メモリコントローラ、オーディオ回路など、汎用性の高い回路をインテル®Atomプロセッサーと共に1チップに集積した。
アプリケーションに依存する機器のために必要な回路は、別の専用LSIに実装する。専用LSIとして想定しているのは、IOH(Input Output Hub)と呼ばれるアプリケーションに合わせたインターフェースを備えた入出力ICや、ASICやFPGAを使った専用回路などがある。こうした専用LSIと接続するBUSは従来インテル®独自のBUSであったが、「インテル®Atom™プロセッサー E600 番台」は、初めて業界標準規格である高速シリアルインターフェース「PCI Express」を備えている。このことによりサードパーティがIOHを開発することが可能となり、ユーザーが開発する組み込み機器の需要に合わせたコンパニオンチップの選択が可能となった。

今回ロームとロームのグループ会社であるOKIセミコンダクタは共同で、インテル®社の組み込み機器向けプロセッサー「インテル®Atom™プロセッサー E600 番台」に向けたチップセットを開発した(図1)。インテル®社と密接に連携を図りながら「インテル®Atom™プロセッサー E600 番台」の開発と並行して開発を進めることで業界に先駆けてサンプル出荷を開始した。チップセットを構成するのは、「インテル®Atom™プロセッサー E600 番台」アプリケーションの周辺I/Oを制御するIOH(Input Output Hub)、システムの電源供給とコントロールを行うパワーマネージメントLSI、システムのクロック供給を行うクロックジェネレータLSIの3種類である。IOHはOKIセミコンダクタが開発を担当し、パワーマネージメントLSIとクロックジェネレータLSIはロームが開発を担当した。「インテル®Atom™プロセッサー E600 番台」アプリケーション向けにCPU以外の主要なチップセットLSIをすべて供給できるのは世界で唯一ロームグループだけである。

[図1]「インテル®Atom™プロセッサー E600 番台」向けチップセットLSI

 

対応アプリケーションの紹介

今回「インテル®Atom™プロセッサー E600 番台」は、一般的組み込み機器関係向け(General Embedded)、高機能通信関係向け(IP Media Phone)、車載機器関係向け(In-Vehicle Infotainment)などへの組み込み機器用に設計している。ロームの開発したパワーマネージメントLSIとクロックジェネレータLSIは「インテル®Atom™プロセッサー E600 番台」向けの全てのアプリケーションに対応することが可能である。OKIセミコンダクタは高機能通信関係向けのIOH「ML7223」と車載機器関係向けのIOH「ML7213」の開発を行った(図2)。

[図2] アプリケーション別チップセット対応表

 

ローム、OKIセミコンダクタ開発チップセットLSIの紹介

ロームが開発を行ったパワーマネージメントLSIは2種類の品番を準備した。BD9591AMWV(5V入力仕様)とBD9594AMWV(12V仕様)である。いずれも20チャンネルの出力を備えたシステム電源で、「インテル®Atom™プロセッサー E600 番台」とIOH、クロックジェネレータLSIが必要な電源を1チップで供給することができる。更にシステム全体の電源管理を行うことができる複雑な電源制御回路も内蔵している。このため電源制御のための回路を外部に設ける必要がない。電源オンオフシーケンスコントローラも内蔵で、ハイパフォーマンスで省スペースを実現できる(図3-1、図3-2)。


[図3-1] BD9591AMWV, BD9594AMWVブロック図   [図3-2] BD9591AMWV, BD9594AMWV出力電圧、電流表
 

クロックジェネレータLSIのBU7335MWVは、インテル®Atom™プロセッサー E600 番台用に加えて、PCI Express、SATA、グラフィック、USBなどシステムで必要なクロック信号を内蔵している。また、パワーマネージメントLSIからのコントロールによりシーケンス制御が可能である。更に、周波数精度の高いPLL技術に加え、SS(Spread Spectrum)技術を盛り込むことで「インテル®Atom™プロセッサー E600 番台」のプラットフォームに最適なハイパフォーマンス1チップクロックシステムを実現した(図4-1、図4-2)。


[図4-1] BU7335MWVブロック図   [図4-2] BU7335MWV内蔵周波数表
 

OKIセミコンダクタが開発を行った高機能通信関係向けのIOH「ML7223」は、SATAやUSBなどの標準的なインターフェースに加えて、ギガビットEthernet MAC、暗号処理回路、IPsecハードウェアアクセラレータなどを搭載した。さらにオプションでハンズフリー通話機能に欠かせないエコー/ノイズキャンセラー機能を組み込める。加えて、外部FPGAをML7223にカスケード接続することによりIOHの機能拡張が行える高速BUSも有しており、共通の基本設計で幅広いレンジのアプリケーション開発が容易に、かつ、短期間で行える(図5-1)。
車載機器関係向けのIOH「ML7213」は、ビデオ入力/出力やUSBなどの標準的なインターフェースのほかに、車載ネットワーク「MOST」に対応した「Media LB」などを搭載している。車載部品の品質に関する規格「AEC-Q100」にも準拠する(図5-2)。


[図5-1] ML7223ブロック図   [図5-2] ML7213ブロック図
 

リファレンスボード(コードネーム: GOJYO)の紹介

今回、インテル®Atom™プロセッサー E600 番台、IOH、パワーマネージメントLSI、クロックジェネレータLSIと周辺I/Oを搭載したリファレンスボード(コードネーム: GOJYO)の開発を行い、「インテル®Atom™プロセッサー E600 番台」の正式発表と同時に実際に動作するデモンストレーションをいち早く公開した(図6)。
リファレンスボードはSATA×1系統、USB×2系統、ギガビットEthernet×1系統、Micro SDのインターフェースと5インチLCDディスプレイを搭載した。OSはLinux(Fedra ver.10)に対応している。また、デバッグ用コネクタを搭載しているのでプログラムのデバッグや外部フラッシュメモリへのダウンロードが簡単に実行可能である。
従来はこれらの部品を搭載した開発、回路設計、評価はユーザー側で行う必要があり、開発期間を短縮することが困難であった。
今回開発したリファレンスボードを使用することで、「インテル®Atom™プロセッサー E600 番台」の特性確認を行うことができる。また周辺回路を接続するだけで周辺I/Oの特性確認の評価を行うことができる。ユーザーは開発前にシステム全体の評価を行うことができるため、開発期間を短縮することができる。更に、機密保持契約を締結したユーザーに対しては、リファレンスボードの回路図、レイアウト図提供を行っており、ユーザーの回路設計期間の大幅な短縮に貢献する。

[図6] リファレンス基板[コードネーム: GOJYO]

サポート体制

今回の「インテル®Atom™プロセッサー E600 番台」に向けたチップセットの開発はロームとOKIセミコンダクタの開発力強化の成果の一つである。ロームとOKIセミコンダクタがそれぞれ得意とする技術を駆使して高機能なLSIデバイスを開発したことで、「インテル®Atom™プロセッサー E600 番台」を使用する世界中のユーザーに対して、ワンストップソリューションを提供することが可能である。また、システム設計、開発期間の大幅短縮や、ユーザーでカスタマイズされる場合のトータルサポートやチップセットのマッチングのし易さなど、他社にない付加価値を提案することが可能である。


まとめ

今回は、ロームとOKIセミコンダクタが共同で開発した「インテル®Atom™プロセッサー E600 番台」向けチップセットLSIの紹介を行い、併せてユーザーの開発期間を大幅に短縮することができるリファレンスボードの紹介も行った。今後もインテル®社との関係を強化していき、インテル®社が開発するCPUに向けたシステム全体の開発をロームとOKIセミコンダクタが有する高い技術を基に提案を行っていく。




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