特集:LEDと関連部品技術
LED照明用ドライバLSI

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LED照明用ドライバLSI

はじめに

家庭から産業まで、幅広い範囲で環境意識が高まるなか、既存の照明器具(白熱電球・蛍光灯など)の置き換えとして、省エネ効果のある、
LED照明が急速に普及している。
LED照明は、電球などの小型照明から、街路灯などの大型照明まで広範囲の電力を駆動する電源が必要である。また、既存照明器具で

使われている「トライアック調光」、LED照明向きの「PWM調光」、ボリューム抵抗で調光が可能な「リニア調光」など多種の調光方式に対応
した電源が必要である。
LEDを安定して点灯・調光するには、LEDドライバLSIが必要で、電力・調光方式など多種多様の電源に適したLEDドライバLSIが求められている。

ロームのLED照明用ドライバLSIの特徴

ロームでは、前記の市場のニーズに対応するために、LED照明用ドライバLSIの開発を行っている。
LEDを一定の明るさで点灯させるには、定電流制御をするLEDドライバLSIが必要になる。一般的に、AC電源から定電流制御を行うのに、降圧型スイッチングレギュレータ方式が用いられる(図1)

[図1] 一般的な照明用電源モジュール

従来方式では、入力電圧変動・出力電圧変動が大きく、アプリケーションの条件によっては、電源モジュールを設計し直す必要がある。
入力電圧変動が大きいと、AC電圧の周波数(全波整流後:100Hz~120Hz)でリップルをもつ入力電圧に対し、LEDの明るさにゆらぎが発生してしまう。
入力電圧を安定させる工夫が電源モジュールを設計する上で必要である。出力電圧変動が大きいと、光源の出力電圧(LEDの個数)ごとに、 外付け部品の定数を変更する必要があり、電源モジュールが多様化してしまい、設計工数が増大してしまう(図2)。
また、LEDのVfのばらつきが原因で、LED照明器具間で明るさのばらつきが生じてしまうケースもある。

[図2] 入力電圧特性   [図2] 出力電圧特性
 

スイッチングレギュレータは、スイッチングのOn時間とOff時間の比で、LED電流値を制御している。一般的な従来方式の制御方法として、
スイッチングのOn時間をコイルのピーク電流で決定している。
その方法では、入力・出力電圧の変化により、コイル電流の傾きが変化し、その結果、LED電流値も変化してしまう。(図3-1)

[図3-1] LED電流波形(ピーク検出制御)   [図3-2] LED電流波形(平均値制御)
 

この問題を解決するためには、LED電流をピーク電流ではなく、 LED電流の平均値で制御(平均電流制御)することが必要である。
ただし、平均電流制御は、一般的に行われているアナログ電源 制御で実現するのは困難とされており、外付け部品が増える 傾向にある。
今回開発したBD555AKFVは、デジタル電源制御を導入することで、外付け部品を増やすことなく、コイルの電流を検出するのみで、 前記の課題を解決している。(図4) デジタル電源制御を導入することで、入力・出力電圧に依存することなく、LED電流の平均値を制御することが実現できている(図2)。 これはコイル電流をサンプリング(A/D変換)しデジタル化を行い、 サンプリングデータから、LED電流の平均電流が一定になるように、ピーク電流の演算を行う。そして、その演算結果をD/A変換し、 ピーク電流を検出するコンパレータにフィードバックする(図3-2)。 この手法を用いて完全にデジタル制御で実現したのは、ロームが 業界初である。
スイッチング電源において、デジタル電源制御の注目度は高まって いたが、一般的にDSPを使用するために、「回路が大きい(コスト高)」、「消費電力が大きい」などの問題があり、LED小型照明への採用は 困難であった。BD555AKFVでは、LED照明の機能に特化した専用 ロジックを開発し、デジタル電源制御の弱点である、回路・消費電力の増大の問題をクリアにしている。
デジタル電源制御の特徴は、平均電流制御機能に加えて、調光機能 にも生きている。「BD555AKFV」は、「トライアック調光」「PWM調光」 「リニア調光」の3種の調光方式に対応しており、幅広い調光機能付き 照明器具に適応することが可能である。

[図4] トライアック調光付きLED照明用ドライバLSI BD555AKFV ブロック図

トライアック調光付LED照明用ドライバLSI

LED照明を既存の照明器具で使われている調光器と組み合わせて使用するニーズがある。既存の調光器とは、トライアックなどのスイッチ素子を用いて交流入力電圧の一部をカットし、その位相角から明るさを調光する方式で、トライアック調光器と呼ばれている。
トライアック調光器は、トライアックがOnすると保持電流を流し続ける必要があり、保持電流を下回ると、トライアックがOffしてしまう。LED照明は、既存照明と比べて電力消費がきわめて低いので、トライアックの保持電流を下回り、これにより、調光器が不定期にOffしてしまうことによるフリッカ(ちらつき)が発生することがある。(図5)
これを防ぐために、保持電流を確保するためのブリーダ回路が必要であり、各メーカーは様々な方式でブリーダ回路を構成している。BD555AKFVは、ローム独自のブリーダ回路を搭載しており、無駄な損失を防ぐ工夫をしている。

[図5] トライアックの誤動作時の波形

ただし、保持電流を確保するブリーダ回路を搭載しても、トライアック調光器によっては、誤動作は防ぐことができない場合がある。その原因として、トライアックのOn時に入力コンデンサを充電する突入電流により、大きなリンギングが発生し、瞬間、保持電流を下回ってしまい、トライアックがOffしてしまうからである(図6)。リンギングを防止することは、効率を悪化することになり、容易に対策することは難しい。そこで、ロームでは突発的に発生するリンギングに対し、フリッカを発生させない対策をデジタル制御によって行っている。

[図6] トライアックOn時のリンギング電流

従来方式では、トライアックの位相角の検出をコンデンサによって 平滑化した電圧を調光デコーダに入力する。
コンデンサが、リンギングによる誤動作をフィルタリングする役割を 果たしているが、100Hz/120Hzと低周波領域で発生する誤動作に対し、完全にフィルタリングすることはできず、フリッカが発生してしまう。
BD555AKFVでは、ICにデジタルフィルタを内蔵することで、上記の問題を解決している。BD555AKFVは、位相角をサンプリングし、デジタル値としてメモリに格納している。調光の明るさを調整する前に、トライアック調光に特化したデジタルフィルタを通すことにより、突発的なトライアック調光器の誤動作に対し得られたエラー値を完全にマスクし、フリッカを防止することが実現できている。(図7)

[図7] トライアック調光器誤動作時のBD555AKFVのLED電流波形

今後

ロームでは、多様化するLED照明器具に最適なLEDドライバLSIを提案し、LED照明の普及に貢献していく。今回紹介したデジタル電源技術と調光技術をはじめ、今後も様々な技術で、力率改善回路内蔵など、幅広い用途に応じてユーザが選択可能なラインアップ展開を行う予定である。

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