特集:LEDと関連部品技術
LEDマトリクスドライバの技術

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LEDマトリクスドライバの技術

携帯電話や家電製品などの民生機器は世界的な競争環境が激しくなるなか、デザイン面での差別化が重要な要素となってきている。そのため様々なデバイスを用いたデザイン・表示が採用されており、特に最近ではLEDの小型化・薄型化に伴い、電子機器の各種表示部分にLEDマトリクスディスプレイを搭載したり、携帯電話のキー部分や筐体にきらびやかなLED装飾をほどこしたりと、デザイン性を高めたセットが増えつつある。また白物家電の分野でも、ある程度市場が成熟してきつつある中国・インドなどの市場で今後高機能化が進むと考えられ、多くのLEDを用いた表示や装飾は視覚的に差別化しやすい為、需要が拡大していくと考えられる。


LEDドライバの動向

以上のような背景のもと、LEDに流れる電流を印加・点灯させる装飾用のLEDドライバICには、より多くの数のLEDを、より自在な点灯パターンで制御することが求められている。
だが従来LCDバックライトなどに用いられる定電流方式のLEDドライバは、LED素子1つに対して1つの定電流回路で構成されており、LED灯数を増やすことはすなわちチップ面積・コストの増大につながるため敬遠されがちであった。しかし近年LEDの高輝度化が進み、少ない電流値でも輝度としては問題にならないレベルでの点灯が可能になったことで、定電流回路自体は増やさず、LEDの電源(アノード)側に順次駆動するPMOSトランジスタを内蔵し時分割点灯する事により、より多くのLED個別制御が可能となる(図1)。図の例では、従来のLEDドライバが6chの定電流回路でLED6素子を点灯していたのに対し、マトリクスドライバでは3chのSW回路と3chの定電流回路で、LED9素子を個別点灯制御することが可能である。

[図1]従来のLEDドライバとLEDマトリクスドライバの回路構成

119個のLED素子を個別制御

一般に人間が視覚的に検知可能な周波数は100Hz以下であり、それ以上の速さでLEDが点滅しても、そのON/OFF比(=Duty)で平均化された輝度として認識される。これをPWM(=Pulse Width Modulation)制御方式といい、LEDドライバの調光方法として広く使われている。定電流回路のON Dutyを制御することにより、DC的な定電流値はそのままで電流値(=LEDの輝度)の調節が可能である(例えば定電流値を20mA、ON Dutyを50%とした場合10mAの定電流を定常的に流すのと同じになる)。LEDマトリクスドライバでは、これを図1のマトリクス接続と組み合わせることで、SW回路×定電流回路分のLED素子の個別制御を可能にした(図2)。 マトリクスドライバではLED素子のアノードとカソードをマトリクス状に接続し、アノード側のSW回路を時分割でONする。カソード側の定電流回路はその各々のONタイミングでLED素子ごとに設定された定電流値をドライブし、LEDを点灯する。ロームが開発したBD26502GULはSW回路7ch、定電流回路17chを内蔵しており、合計7x17=119個ものLED素子を個別制御する事が可能である(図3)。
BD26502GULは約4msec周期(=250Hz)で時分割点灯しており、SW回路が7chあるため各LED素子の点灯時間はその周期のさらに1/7となる。このため、時間的に平均したLED電流量は定電流回路設定値の1/7となり、BD26502GULにおける定電流回路の最大値設定時(=20mA)でも20mA/7≒2.9mA程度であるが、LED発光効率の向上もあり、表示・装飾用途としては十分な輝度が確保できている。

[図2]LEDマトリクスドライバ(図1)による動作例
[図3]BD26502GULによるLED制御回路構成例

BD26502GULの特徴

また、ただ単に多くのLEDを点灯するだけではなく、「人目を引く」「美しい」点灯パターンを、いかに制御用CPUの負荷を少なく実現できるかも重要である。BD26502GULは13パターンのスロープ機能や8方向への自動スクロール機能を内蔵しており、CPUに負荷をかけることなく、表現力豊かなLED点灯が可能である(図4,5)。さらに、7x17のマトリクス点灯データを2面分記憶可能なRAMを搭載しており、それらのデータを書き換えながら交互に繰り返し表示することで、アニメーションのようにダイナミックな表現が可能となる。

[図4]LED素子ごとに設定できる13パターンのスロープ機能(CPU負荷を低減)
[図5]BD26502GULのスクロール機能例

BD26502GULは制御用クロックの入出力ポートを持っており、本ICを複数個同時に動作させることも可能である(図6)。スロープやスクロールなどの機能は、通常内蔵の発振回路でクロックを生成し時間を制御しているが、内部発振回路は各ICで周波数にばらつきを持つため、時間的に全く同一の点灯パターンとはならない。本ICではこのクロックを端子からの外部入力に切り替えることが可能であり、同一のクロックを使用して複数のIC間の点灯タイミングやスロープ・スクロール時間を同期させることができる。図6のようにクロック発生源から各々のICへ並列にクロックを入力するか、本ICのクロック入力/出力ポートを介した直列接続によって、全てのICを同じクロック信号で同期して制御することが可能である。この機能によって、LED素子数が7×17=119個以上のアプリケーションでも完全に同期した全く違和感の無い点灯制御が可能である。

[図6]BD26502GUL複数同時動作構成例

さらに、ローム独自の技術によって定電流回路の飽和電圧を50mV(ローム評価結果)と大変低い値で実現している。飽和電圧とは定電流回路に使用しているトランジスタの下限動作電圧であり、これ以下の電圧では定電流回路のドライブ電流が低下し、所望のLED輝度が得られない。近年、市場が拡大しているスマートフォンは大画面で多機能なことから、いわゆる電池切れに対するユーザーの不満が多く、セット全体の消費電力に対し大きな割合を占めるLEDドライバへの消費電力低減の要求は厳しい。従来のLEDドライバはLED素子のVfを確保するため昇圧回路が必要であり、この昇圧回路の効率が電池の持ちを左右する大きな要因として重要視されてきた。
しかし現在、LEDのVfが下るにつれ昇圧回路がなくともバッテリ電源電圧のみでVfを確保出来るケースが増えてきており、そこでキーとなるのが上述の飽和電圧である。定電流ドライバ端子には電源電圧からLEDのVf分低い電圧印加されるため、その飽和電圧が低ければ低いほど、昇圧回路不要でLEDを通常点灯させられる範囲が広くなる(図7)。

[図7]LEDドライバの定電流駆動回路と駆動可能時間

ロームでは長年培ってきたLEDドライバ技術を生かし、マトリクスドライバのみならず様々な製品分野でセットの差別化や高級化につながる

表示・装飾用LEDマトリクスドライバを開発している(表1)。
RGB装飾用(BD1606MUV、BD28xx)や様々なアプリケーションに対応可能なOpenDrainタイプのディスプレイドライバ(BD7844EFV)など、

幅広い用途に応じてユーザーが選択可能なラインナップ展開を引き続き行う予定である。

Part No. LED Driver Charge Pump Illumination Pattern LED max Current Other Size [mm]
BD1606MUV RGB 2Ch (6LEDs) - 30mA/Ch - 4.0x4.0 OFN
BD2802GU RGB 2Ch (6LEDs) - Yes 30mA/Ch - 2.8x2.8 CSP
BD2812GU RGB 2Ch (6LEDs) Yes 30mA/Ch Sleep Mode 3.1x3.1 CSP
BH6948GU 7x7 Matrix Slope 31mA/Line - 4.1x4.1 CSP
BD26502GUL 7x17 Matrix - Scroll, Slope 20mA/Line - 4.1x4.1 CSP
☆BD26503GUL 7x17 Matrix - Scroll, Slope 30mA/Line - 3.6x3.6 CSP
★BD26503EUV 7x17 Matrix - Scroll, Slope 30mA/Line - 8.1x12.5 SOP
☆BD7844EFV 16CH Open Drain - - 80mA/Ch max 20V input 6.4x9.7 SOP
☆Under Development
★Under Planning
[表1]LEDマトリクスドライバ製品一覧


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