特集:新エネルギー関連技術
産業機器に最適なリチウムイオン電池用電池監視LSI

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新エネルギー関連技術特集
産業機器に最適な
リチウムイオン電池用電池監視LSI

2016年9月15日号

1. はじめに

近年、スマートフォンやノートPCなどのアプリケーションをはじめとし、使用電圧が高い産業機器や自動車においてもセットの小型・軽量化の要求が高まってきている。その要求に伴い、エネルギー密度の高いリチウムイオン電池を使用するアプリケーションが急増している。これは、リチウムイオン電池が、他の2次電池に比べ、体積あたり、重量あたりのエネルギー密度が非常に大きく、同じ駆動電圧なら使用する電池セル数を少なくでき、電池パックの小型、軽量化に適しているためである (図1) 。

一方で、リチウムイオン電池には注意しなければならない特性も有している。リチウムイオン電池は、化学反応により、リチウムイオンが電池内で正極と負極の間を移動することで、充電、放電を可能にしている。このため、過充電の状態を継続すると、発熱、発火、爆発するといった危険な状態に至る。また、負荷を接続し過放電の状態を継続すると、電池容量の低下や、電池寿命を速め、再充電してもすぐに消耗してしまう (図2) 。従って、リチウムイオン電池は、常に電池セルの状態をモニタし、過充電、過放電といった状態を回避するための専用の保護回路が必要となる。その保護回路の中心的役割を担うLSIが、電池監視LSIである。

リチウムイオン電池の特長
図1 リチウムイオン電池の特長

リチウムイオン電池の注意すべき特性
図2 リチウムイオン電池の注意すべき特性

2. 電池監視LSIの基本構成

電池監視LSIは (図3) に示す基本構成でリチウムイオン電池を監視し保護している。この保護回路には以下の3つの役割が求められる。

① 過充電、過放電を検出
リチウムイオン電池の各電池セルの電圧測定回路で構成され、各電池セルの電圧値を検出。
② 過電流を検出
電池パックに流れる回路電流を、電流測定回路で検出。
③ 異常温度を検出
外付けサーミスタを使い、温度測定回路で検出。

リチウムイオン電池や電池監視LSIなど部品が搭載された電池パックでは、電池セルが異常な状態になっていないか、電圧、電流、温度を常に検出し、異常の有無を判定している。もしどれか一つでも異常ありと判定されると、充放電制御用スイッチで電流回路を遮断し、電池セルやシステム回路の保護を実行する。

ラピスセミコンダクタの電池監視LSIは、マイコン制御不要で単独でリチウムイオン電池を保護するスタンドアロンタイプと、マイコン制御により高精度、多彩な機能で保護を行うアナログフロントエンドタイプがある。

以下に、新商品のスタンドアロンタイプの電池監視LSI、2商品について解説する。

電池監視LSIの基本構成
図3. 電池監視LSIの基本構成

3. マイコンレスで小型機器に最適、電池監視LSI: ML5233

ML5233」は電池駆動のコードレス掃除機や電動工具などの小型機器のシステム用に、動作時消費電流を業界最小クラスの25µA (@Typ.) に抑えた、10セル対応のリチウムイオン電池監視LSIである。リチウムイオン電池パックの異常検出をマイコンレスで実現可能なため、実装面積をマイコン駆動の従来品から約20%、主要な部品点数を4個から1個に削減でき、電池保護システムの小型化に貢献し、お客様の開発負担の軽減が可能である (図4) 。

ML5233の特徴
図4. ML5233の特徴

<特長>

(1) 業界最小の低消費電流を実現
① 動作時
消費電流を従来品比約50%減の25µA (@Typ.値) と業界最小クラスを達成したことで、システムの省エネ化にも貢献。
② パワーダウン時
業界最小クラスの低消費電流0.1µA (@Typ.) を実現。電池パックの長期保管時でも電池容量にほとんど影響与えず、充電された電池を有効活用。
(2) 業界トップクラスの電圧検出精度で、充電効率を7%向上

高精度な過充電検出精度を実現。電池パック内の各セル電圧を、±15mVと高精度で検出。従来の±50mVの場合と比較して、電池の充電効率が最大で7%アップ。

(3) 各種異常検出・保護機能をマイコンレスで実現し、実装面積を20%削減

温度検出回路とショート電流検出回路を内蔵したことで、マイコンレスで充放電時の異常温度(高温)検出と電池パックのショート検出が可能。これにより、実装面積を約20%、主要な部品点数を4個から1個に削減。MOSFET、電流検出用シャント抵抗およびサーミスタを外付けすることで完全ハード化できるため、電池保護システムの小型化に加え、お客様の開発負担を軽減。

(4) 多段接続機能により10セル以上のシステムにも対応可能

ラピスセミコンダクタオリジナルの高耐圧プロセスで、LSI一つで4から10直列システムまで対応、14Vから最大36Vまでの電動工具などでも安心して使用可能。
一例として本LSIを2個使用することで、20直列システム (72V) に拡張でき、電動自転車、乗用カートなど幅広い高電圧アプリケーションにも対応。

4. 機能安全とシステムの小型化を実現、二次保護LSI: ML5232

最近はリチウムイオン電池の用途が拡大するのに伴い、人体、財産を守る機能安全規格に準拠した信頼性の確保が社会的に求められている。万が一、リチウムイオン電池監視システムに搭載される電池監視LSI側のシステムが不具合により機能しなくなった場合に、リチウムイオン電池の事故を防ぐ機能有する対策として二次保護LSIを使用するケースも増加してきている (図5)。

機能安全
図5. 機能安全

ML5232」は、最大14直列セルまでの検出が可能で、従来の4直列対応の二次保護LSIと比較し、部品点数の大幅削減と、回路の簡略化が実現できる。これまでリチウムイオン電池の二次保護を実現するためには、複数の二次保護LSIとその周辺回路が必要であったが、これらを「ML5232」1個で置き換えることが可能となる。さらに過充電検出時にヒューズを切断すると同時に、充電制御用MOS FETもオフにすることが可能な2種類の保護信号を搭載しているため、システムの高信頼化が実現できる (図6)。

ML5232の特徴
図6. ML5232の特徴

<特長>
(1) 業界最大、14直列セルの接続を可能にし、約50%のシステムの小型化に貢献

従来の電池二次保護LSIは、4直列、または5直列対応品のみであったが、「ML5232」はミックスドシグナル回路とラピスセミコンダクタの高耐圧プロセスを駆使したことで、最大14直列セルまでのリチウムイオン電池監視システムへの対応が可能となった。これにより、部品点数を削減でき、従来比約50%の実装面積を実現し、システムの小型化に貢献。また高電圧のシステム構築が可能になったことにより、幅広いアプリケーションでプラットフォームの共通化も可能である。

(2) 過充電検出時の独自の2種類の保護信号を搭載

リチウムイオン電池監視システムに搭載される一次保護LSI側のシステムが不具合により機能しなくなった場合、「ML5232」が即座に保護信号を出力。本LSIは、NchオープンドレインタイプとCMOSタイプの2種類の充電経路を遮断する出力端子を搭載し、過充電検出時にヒューズを切断すると同時に、充電制御用MOS FETもオフさせることで、システムの一層の高信頼化が実現できる。

5. サポートサイト

これらの商品やその他ラインアップの電池監視LSI商品のデータシートや評価ボード情報(回路、部品、使用方法のマニュアル)などはホームページからユーザ登録していただくことで、入手可能となる。またご質問、ご要望に応じ、充実した技術サポートを実施している。

詳細は、ラピスセミコンダクタのホームページ (http://www.lapis-semi.com/) のサポートサイトからログインし参照のこと。

6. 最後に

リチウムイオン電池の技術的な発展、応用範囲の拡大にともない、電動工具、電動アシスト自転車、蓄電システム等の動力系ハイパワーを使うアプリケーションでの需要が高まりつつある。ラピスセミコンダクタではこれらの産業機器市場をターゲットに、ラピスセミコンダクタが得意とするミックスドシグナル回路とオリジナルの高耐圧プロセスを活用し、3直列セルから200直列セルなど、多くの電池セルを直列接続して使用する電池パックに向けて、

  • 多セルに対応
  • 低消費電流、高精度な電圧測定
  • 周辺回路内蔵(省スペース)

などの特長ある商品を今後も開発していく (図7) 。お客様のアプリケーションに最適な電池監視LSIのラインアップをさらに充実させ、リチウムイオン電池監視LSI/二次保護LSIで一般・産業機器市場の高電圧電池監視システム開発・発展に貢献していく。

今後の展開
図7. 今後の展開