特集:IoTを支える無線通信技術特集
ロームのIoT市場の拡大を支えるSub-GHz無線通信技術

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電波新聞ハイテクノロジー掲載 IoTを支える無線通信技術特集

はじめに

IoT技術は、様々な業界において、新しい価値を生み出すための技術として注目されており、様々なソリューションが提案されている。あらゆるモノからデータを収集し、データを分析・解析・活用することで、利便性向上や、異常の早期発見・未然防止、自動制御に活用するものである。IoT市場では、サービス開発に目が向きがちではあるが、ソリューションの構築においてはソフトウェアだけでなく、その設置やメンテナンス、導入の容易性にも気を配ったシステムでなければ、価値を生み出さないものとなってしまう。それらを支えるコア技術が、センシング技術や無線通信技術であり、IoTの拡大を支えるためには必要不可欠なものである。

近距離無線通信方式

あらゆるモノからデータを収集するためには、センシングとそのデータを集約するしくみが必要である。センサは、通常複数個存在し、温度・湿度・照度などといった環境データや、人間または機械の動きや位置、消費される電力等のデータを収集する。収集したデータは、解析や分析を行うために、サーバーへ保存されるが、センサからサーバーまでのネットワークを構築する必要がある。有線でのネットワーク構築は、複数個あるセンサへの配線敷設に大きな工数がかかるため、近距離無線通信の適用が進んでいる。

ロームグループでは、複数の近距離無線通信方式に対応できるラインアップを準備している。(図1)
近距離無線通信にも様々な種類があり、どこにセンサを設置して、どのような動作をさせるかによって、最適なものを選択する必要がある。また、接続性にも配慮が必要であるため、以下の事を念頭にラインアップ化を図っている。

  1. 通信プロトコルが国際規格規定されていること
  2. 顧客のアプリケーション(用途)に応じて最適な無線方式を提供する
  3. 電波法の認証(工事設計認証)はモジュールで取得し、セット設計の工数を削減する

図1:ロームグループ 近距離無線通信デバイスのラインアップ
図1:ロームグループ 近距離無線通信デバイスのラインアップ

ロームグループでは、無線通信LSI及び無線モジュールの製品化を行っており、顧客要望にきめ細かく対応する事が出来る。 高周波パターン設計が可能な顧客向けには、無線通信LSI単体での提供が可能である。 また、設計工数削減が必要、もしくは無線導入経験のない顧客向けには、モジュールとして提供が可能である。 特にモジュールにおいては、ソフトウェア内蔵、アンテナ内蔵(電波法認証済)品の製品化に注力しており、 顧客での高周波設計が不要なモジュールとなっている。アプリケーション(用途)によって、最適な提案が出来るラインアップを保有し、 顧客要望にきめ細かく対応できる事が、様々なIoT技術の活用アイディアを具現化するためには必要である。

また、無線通信周波数についても、2012年に電波法の改定により解放された、920MHz帯(以下、Sub-GHz帯)に適用できるラインアップを準備している。 Sub-GHz帯周波数を使った無線は、以下の特徴を備え、今後も適用アプリケーションの拡大が大きく期待されている技術である。

  1. 2.4GHz帯に比較し、電波の回折・回り込み特性が良いので通信可能エリアが広い
  2. 2.4GHz機器の影響を受けにくく、混信の心配がない
  3. 工場設備や電子レンジ等、2.4GHz帯でノイズ源となる装置からの影響を受けにくい

ロームで取り組む、Sub-GHz無線通信のいくつかを紹介していく。

スマートメータへ採用されたWi-SUN通信

「Wi-SUN」とはWireless Smart Utility Networkの略語で、最大1km弱程度の距離で相互通信を行う省電力無線通信規格であり、物理層IEEE802.15.4g、MAC層IEEE802.15.4eで規格化されている。スマートメータ(次世代電力量計)用の無線方式として認定されている。また、スマートメータや家庭用エネルギー管理システム(HEMS)と、家電製品などを連携させるHome Area Network用として「Wi-SUN HAN」も策定されており、2016年4月からの電力自由化に伴うスマートメータの設置数拡大に伴い、コントローラ機器への搭載が進む無線通信方式である。(図2)
従来、メーカー依存であった家庭内機器の連携がオープンな通信規格で実現でき、消費者はメーカーを選ばす、利便性を享受できる技術として期待されている。

図2:Wi-SUN通信の適用事例
図2:Wi-SUN通信の適用事例

スマートメータを中心としたWi-SUN通信には、電力会社からスマートメータまでのAルート、スマートメータから建物までのBルート、建物内HAN等が規格化されているが、ロームは、いち早くWi-SUN通信対応の無線通信モジュールを製品化しており、スマートメータや、ゲートウェイへの採用が進んでいる。国内電波法の認証取得はもちろんの事、Wi-SUNアライアンスの運営する相互接続試験の基準機認定も取得(CTBU : Certified Test Bed Unit)しており、安心して導入いただけるデバイスである。Wi-SUN Bルートに対応できるBP35A1を既に量産化。また次世代製品として、Wi-SUN Bルート/HAN 両対応 BP35C0, BP35C2のサンプル出荷を開始している。BP35C0は、小型化を追求した面実装タイプ、BP35C2はUSBドングルになっており、USBポートを持った既存ゲートウェイのWi-SUN通信対応化が、ハードウェアの変更無しで使用可能である。(図3)

図3:Wi-SUN通信対応モジュール 製品ラインアップ
図3:Wi-SUN通信対応モジュール 製品ラインアップ

電池レスセンサを実現するEnOcean通信モジュール

Wi-SUNと同様に、Sub-GHz周波数帯を採用した、電池レス無線通信が可能なEnOcean通信モジュールも、ロームで販売を行っている。無線センサの設置には電源(電池)供給課題や、電池交換運用の課題もつきまとうため、電池レスでセンサノードが設置出来、設置工数削減、メンテナンスフリーを実現できる技術として様々なアプリケーションでの検討・採用が進んでいる。(図4)

図4:電池レスセンサノード適用事例
図4:電池レスセンサノード適用事例

超低消費電力無線通信プロトコルと、エナジーハーベスティング(環境発電)技術を組み合わせたモジュールであり、指で押した力を電気に変換する電磁誘導発電と組み合わせた、電池レス無線スイッチモジュールや、小型光発電を備えた無線温度センサモジュール、無線開閉センサモジュールを既に販売している。

環境発電と組み合わせた電池レスセンサノードは様々提唱されているが、モジュールとして製品販売を唯一行っているのがEnOcean無線モジュールであり、IoT向けアプリケーション開発への適用が進んでいる。

実証用電池レス振動センサの開発

ロームは、デバイスレベルのサポートはもちろんの事、アプリケーション開発のサポートも積極的に実施している。センサ機器、ゲートウェイを含めたシステム等は、外部パートナー社の協力を仰ぎ、システムレベルの実証実験も積極的に進めている。アイディアレベルを素早く、手軽に実証を行い、その効果を検証していく事で、IoT市場でのビジネス化を加速させる事に貢献している。以下にロームで開発した、実証実験用の電池レス振動センサを紹介する。

IoT市場の中で、特に注目されているのが、工場向けセンシングソリューションである。ドイツで提唱されているIndustory4.0や、IIC(Industry Internet Consortium)等、製造現場でのIoT化の議論が活発に行われており、製造設備の故障予知も重要なアプリケーションの一つである。ロームは、電池レス無線通信技術を活用し、製造装置へのセンサ設置実証実験を進めている(図5)。
加速度をセンシングし、装置の振動をモニタリングするシステムにおいて、低消費EnOcean無線通信と振動発電素子、電流発電素子組み合わせ、電池レス、配線レスでセンサノードを構築した。配線レスでセンサノードを構成する事により、後付け容易、設置工事削減が可能となり、既存設備へのセンサ追加の負担が大きく軽減され、工場全体でのセンサネットワーク構築に貢献できる。電池レスセンシングデータをWi-SUN通信で中継し、広域エリアで無線通信を行うためのネットワーク化も可能であり、無線通信モジュールのラインアップを豊富に持っているロームグループでこそ可能となるソリューションである。

図5:電池レス振動センサ Demo機開発事例
図5:電池レス振動センサ Demo機開発事例

従来から進めている、温度、湿度等の環境センシングに加えて、振動センシングをシステムインテグレーションしていく事で、工場の管理・監視に必要なセンサネットワークの構築が可能となり、製造現場における工程改善に大きく貢献できる。開発したDemo環境を活用し、製造装置への設置を進め、データを取得していく事で、今後の分析・解析から予防保全につながるアルゴリズム開発を行うためのビッグデータ取得を行う予定である。ロームの自社工場だけでは無く、パートナー社となる顧客工場においても実証設置を行い、センサネットワークソリューションの付加価値となる、データ分析につなげていく事をもくろんでいる。

最後に

このように、ロームグループでは、LSIデバイスから、モジュール、実証用実験機の開発を通して、顧客から求められる課題解決に最適なソリューションを提案していく事が可能である。また、自社だけでは無く、パートナー社の協力も仰ぎながら、今後もより良いソリューション開発を行っていき、顧客のビジネス上の課題、社会課題の解決に結び付けていく。

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