電源用半導体技術特集
ロームの次世代型カーオーディオ用システム電源

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電源用半導体技術特集 ロームの次世代型カーオーディオ用システム電源

はじめに

近年、自動車の電装化がますます進み、また自動車の低燃費化も高いレベルで要求されるようになり、自動車メーカーを中心に、車体の軽量化、タイヤの高性能化や電子回路の効率化など、様々な取り組みがなされている。こうした中、カーオーディオなどのカーインフォテインメント機器においても、USBやBlue-tooth対応などの多機能化が進んでおり、電源系統や消費電流が増加している。その消費電力が大きい場合、EV(電気自動車)やHV(ハイブリッド自動車)では燃費に直接影響するのはもちろん、ガソリンエンジン車も発電機を回すためにエンジン負荷が増えることで燃費に影響する。そのため、より低消費電力への効率改善が求められてきている。

図1:BD49101AEFS-Mの動作電力効率
図1:BD49101AEFS-Mの動作電力効率

今回は高効率なスイッチングレギュレータを採用し、動作電力を従来比-65%(当社従来比)を実現した次世代型カーオーディオ用システム電源「BD49101AEFS-M」を紹介する。(図1)

BD49101AEFS-M

  • 最大定格電圧42V
  • 動作電圧範囲5.5V~25V
  • 高耐圧スイッチングレギュレータ2系統
  • 高耐圧シリーズレギュレータ2系統
  • 低耐圧シリーズレギュレータ3系統
  • 高耐圧ハイサイドスイッチ1系統

これらに、バッテリ電源検出回路、シリアルインターフェイス、各種保護機能を備え、面実装タイプのHTSSOP-A44パッケージに1chip化したシステム電源ICである。カーオーディオの動作電力低減に加え、従来必要であった放熱板を軽量化することが可能となり、自動車の燃費向上に貢献する。

カーオーディオ用の電源ICの電源構成

カーオーディオで使用される電源ICの構成について説明する。

電源構成に関してはアプリケーションに応じて単品ICを組み合わせる構成と、複数の電源が1chip化されたシステム電源の2種類がある。前者はユーザーの部品選択や設計自由度の範囲が拡がるが、部品点数の増加や各ICのON/OFFのコントロールを個別に行う必要があるのに対し、後者は必要な電源が内蔵されているだけでなく、バッテリ電圧の検出などの機能も内蔵していることで、部品点数の大幅な削減に加え、ユーザーの設計負荷の軽減が可能となり、電源制御も一括に制御出来るなどのメリットがある。

電源の回路方式 シリーズレギュレータとスイッチングレギュレータ

ここで電源回路方式に関して説明する。

電源回路方式は大きく2つに分けられ、一つはシリーズレギュレータ、ドロッパ、LDOと呼ばれるリニアタイプのものと、もう一つはスイッチングレギュレータ、DCDCコンバータと呼ばれるスイッチングタイプのものがある。シリーズレギュレータは外付け部品が少ない、低コスト、使いこなしが比較的簡単というメリットがある反面、電力効率が悪く、発熱が大きいというデメリットがある。

カーオーディオ用の電源ICは、カーバッテリーの12Vを電源とし、ここから内部デバイスへの電源供給を行う。最近はデバイスの微細化に伴い、動作電圧が5V以下のものも増えており、また高機能化による消費電流も増加してきている。

例えばシリーズレギュレータの場合は入力電圧12V、出力電圧3.3V、消費電流0.3Aとすると、消費電力は(12-3.3)×0.3=2.61Wとなる。この場合の効率は27.5%であり70%以上が熱となって消費される。

一方、スイッチングレギュレータの場合、外付け部品が増える、回路規模が大きくなる、コストが高い、設計が複雑になるという問題があるが、先述の同条件下において、効率は85%以上大きく向上し、発熱を抑えることが出来る。

今回のシステム電源ICと従来型の比較

図2:BD49101AEFS-Mのブロック図
図2:BD49101AEFS-Mのブロック図

従来型のカーオーディオ用システム電源は、シリーズレギュレータで構成されているため、発熱が大きく、放熱板が必要なことが多い。そのため、SIP(Single Inline Package)やZIP(Zigzag Inline Package)といった挿入型タイプの大型パッケージが用いられる。
また、内蔵出来る電源チャンネル数に限度があり、カーオーディオの多機能化に対しては、別途電源ICを追加するなどの対応が必要であった。しかしながら、シリーズレギュレータを高効率なスイッチングレギュレータへ置き換えると発熱を大幅に下げることが可能となるが、外付け部品の増加やICのコストアップというデメリットがある。

そこでBD49101AEFS-Mではバッテリ電圧をスイッチングレギュレータで一度降圧し、その下に一部のシリーズレギュレータを配置するハイブリッド構成を採用した。(図2)

2個のスイッチングレギュレータと5個のシリーズレギュレータの組み合わせの最適化を行い、効率の大幅な改善とコスト低減の両立が可能となった。

図3:面実装パッケージの採用
図3:面実装パッケージの採用

効率を向上させたことで発熱を大幅に抑えられた結果、従来の挿入型パッケージから面実装型パッケージの使用が可能となり、当社従来比約1/14の小型化も実現した。(図3)

低消費電力技術

図4:効率比較図
図4:効率比較図

スイッチングレギュレータは効率が良いが、負荷電流が小さい場合は効率が悪化する。

 

カーオーディオの場合、駐車中などでカーオーディオの電源がOFFしている場合もマイコン等の一部の回路はスタンバイ状態で動作するため、電源供給を行う必要がある。この時マイコンの消費電流は1mA以下に低下する。これはスイッチングレギュレータの負荷電流よりも回路自体の動作電流が上回る状態であり、効率は7%以下とシリーズレギュレータの効率より低下する。(図4)

また軽負荷時の効率改善技術として高負荷時はPWM制御で動作し、低負荷時はPFM制御に切替える方式がある。こちらは軽負荷時のスイッチング周波数を低下させ、スイッチング損失を減らす方式である。ただしスイッチング周波数が変化しノイズ対策が難しくなることや、1mA以下といった少ない負荷電流の場合、シリーズレギュレータの効率を上回ることは難しい。そこで常時動作しなければならないマイコン用電源にはスイッチングレギュレータとスタンバイ用のシリーズレギュレータを切り替える方式を採用し、高効率とスタンバイ時の低消費電流化の両立を実現した。

しかしながら本方式には切替時の電圧変動という課題がある。特にスタンバイ状態から通常動作に入る時は、マイコンが動作し始めるため負荷電流が大きく増加する。この時シリーズレギュレータからスイッチングレギュレータへ単純に切り替えた場合、出力電圧が大きく低下することがあり、電圧低下が大きい場合は、マイコンがリセットすることがある。大容量のコンデンサを付けることで改善は可能だが、部品コストや実装面積の問題が発生する。

ここでスイッチングレギュレータの動作原理を簡単に説明する。

図5:スイッチングレギュレータ構造図
図5:スイッチングレギュレータ構造図

スイッチングレギュレータは出力電圧を基準電圧と比較するエラーアンプ、その出力をランプ波と比較するPWMコンパレータ、コンパレータで生成されたパルスで駆動される出力トランジスタ、そしてその電流出力を平滑化するLCフィルタで構成され、パルス幅が一定となるフィードバック動作を行うことで電圧が保たれる。(図5)

切替時に電圧が低下するのは、この一連のフィードバック動作が切り替え直後はすぐに行なえないためである。

今回はこれを改善するために

  • 切替時に一定区間、両方のレギュレータを動作させる
  • その間にPWMコンパレータが所定のパルス幅をすぐに出力できるようにエラーアンプ出力を一定の電圧へプリチャージする。
  • シリーズレギュレータをOFFし、スイッチングレギュレータのみの動作を行う。

という3つの制御を行った。

これにより短時間でフィードバックループが安定動作に入るため、電圧低下を抑えることが可能となり、単純に切り替えた場合の300mV以上の低下に対し、40mV以下に抑えることが出来た。(図6)

図6:安定動作への改善
図6:安定動作への改善

この方式を採用したことで、スタンバイ時の本ICの消費電流は100μA(typ.)を達成、自動車のエンジン停止時に流れるカーオーディオの暗電流の低減を可能とした。

さらなる高機能化へ

またBD49101AEFS-Mではカーオーディオの高機能化へ対応すべく、USB用電源にはケーブルインピーダンス電圧補正機能を搭載。(図5)

これはUSBケーブルの配線抵抗で発生する電圧低下分を電源IC側で出力電圧を上昇させ、ケーブル端の電圧を一定に保つことでUSB規格の要求を満たすものである。その補正量は外付け抵抗で設定することで、使用するケーブルに合わせて、調整が可能である。さらに過電流検出時は出力を停止するのに加え、マイコンへ通知するための専用端子を設けている。
また、バッテリ電源検出回路は0.1Vステップで設定が可能で、セットの低電圧動作にも対応出来るように、検出電圧を7.7V~8.4Vの範囲に加え、5.7V~6.4Vも用意した。

まとめ

ロームは環境に配慮した製品の開発割合を増やす取り組みを積極的に行っている。
今回のBD49101AEFS-Mで低減できる電力は自動車全体の消費電力量から見れば決して多くはないが、このような製品のラインアップををさらに充実させていくことで社会に貢献していく。

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