特集:回路動作に適合するパワーデバイスの選択法
PFCの効率改善に貢献するロームのパワーデバイス

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回路動作に適合するパワーデバイスの選択法 PFCの効率改善に貢献するロームのパワーデバイス

回路図上では同じに見えても動作の設定が違えば相応しいデバイスも異なります。
膨大な品種から最適デバイスを選び出すためのポイントは、回路中での動作と要件の把握にあります。

デバイスが回路の最終性能を左右

私たちは電源の回路設計に際して回路方式を決め、膨大な候補の中から最適なデバイスを選び出す必要があり、そして回路に相応しいデバイス選択の成否が最終的な回路の性能を左右します。賢いデバイス選択のカギは、各デバイスが回路中でどのような働きをするのかという動作の理解とデバイス要件の把握にあります。ここでは一例としてAC入力の力率を改善して高調波電流を抑えるPFC(Power Factor Correction:力率改善)回路のダイオード選択について、パワーアプリケーションに対応した幅広いラインアップを展開するロームの製品を使いながら考えてみましょう。

PFCと動作モード

<図1>はブリッジ整流と昇圧コンバータで構成されている典型的なPFC回路です。PFCでは、インダクタに電流を流し続けた状態で使うCCM(Continuous Current Mode:電流連続モード)とインダクタ電流が断続するDCM(Discontinuous Conduction Mode:電流不連続モード)電流がゼロになる時点でスイッチするBCM(Boundary Current Mode:電流臨界モード/Critical Conduction Modeとも呼ばれる)があり、200W程度までの機器ではBCMが、数kW程度ではCCMが多く使われています。

図1:PFC回路
図1:PFC回路

各部の動作を知る

次に各部の動作です。FETスイッチがオンの時は入力コンデンサ-インダクタ-スイッチという経路で電流が流れ、ダイオードに電流は流れません。スイッチがオフになると入力コンデンサ-インダクタ-ダイオード-出力の経路ができます。
このとき、CCMでは、短時間におけるインダクタ電流は小さなリップルを伴ったほぼ直流ですが、ダイオードに電流が流れている状態でスイッチがオンしてダイオードは強制的にオフされることになるため、大きな逆回復電流とそれに伴うスイッチングノイズが発生します。
これに対してBCMやDCMではダイオードに流れる電流がゼロになった時点(DCMではそれ以後)にスイッチがオンするので逆回復は発生しません。その一方で、電流はゼロから大きな値までダイナミックに変化するのでインダクタとダイオードのピーク電流はCCMより大きくなります。<図2>

図2:各部の動作
図2:各部の動作

動作に適合するデバイス要件と品種

したがって、同じPFC回路でも、CCMには逆回復特性の良いダイオードが、BCMやDCMでは大電流に対しても低損失となるように順方向電圧の小さなダイオードがそれぞれ望まれます。ダイオードにはFRDが多く使われますが、FRDの順方向電圧と逆回復時間の特性はトレードオフの関係にあります。これを踏まえロームの電源向けFRDはVF重視からtrr重視まで様々な特性のものから検討できます<図3>。

図3:ロームのFRDラインナップ
図3:ロームのFRDラインナップ

例えば、BCMモードで使うのであれば、超低VFのRFNLもしくはRFNシリーズが、CCMであれば小trrが特長のRFUHまたはRFVシリーズが最適であり、この中から耐圧と電流が合うものを選択できます。

選択と検証

以下は動作モードとダイオード品種の組み合わせによる回路性能の違いをシミュレーションした結果です。

<図4>はBCMにtrr主眼のRFVシリーズ(RFV8TJ6S)を使ったときのインダクタ電流とダイオード損失波形です。大電流部分の損失が支配的で、全体での損失は0.41Wでした。そこで、超低VFのRFNLシリーズのRFNL10T6Sに置き換えると損失は0.23Wと約半分に抑えられました。

図4:BCMモードでのダイオード損失( Po:100W Vo:383V)
図4:BCMモードでのダイオード損失
( Po:100W Vo:383V)

一方、<図5>はCCMモードでの効率シミュレーションです。BCMとは逆に、CCMではtrrの小さなRFVやRFVSシリーズの特長が活かされRFNLシリーズ比で4%以上効率アップすることが分かりました。

図5:CCMモードにおける逆回復時間と効率 ( Po:300W Vo:390V)
図5:CCMモードにおける逆回復時間と効率
( Po:300W Vo:390V)

SiCも有力候補

ここまではシリコンのFRDを使うことを前提にしてきましたが、耐圧や速度から考えるとSiC(シリコン-カーバイド)SBD(ショットキーバリアダイオード)も賢い選択です。SiC SBDは耐圧や逆回復時間などスイッチング性能に優れることはもちろん、順方向電圧の温度係数が正で並列接続が容易などの特長もあります。
ロームではいち早くSiCの研究開発に着手した結果、世界で初めてトレンチ構造次世代SiC-MOSFETを量産化。大電力機器の小型・低消費電力化に貢献する技術はEV(電気自動車)充電システムのPFC回路デバイスとしても活かされています。

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