特集:電源モジュールと電源用部品技術
最新の電源モジュールと電源用部品の技術動向

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電波新聞ハイテクノロジー掲載 最新の電源モジュールと電源用部品の技術動向

電源モジュールを取り巻く状況

電源モジュール(AC/DCアダプタなど)は、これまで電気製品の性能や機能に直接影響することが少なく、関心を持たれることも少なったが、近年、この電源への関心がかつてないほどに高まっている。その主な要因は、「環境」と言える。年々、世界各地で環境問題が頻発し、環境負荷を軽減する様々な取り組みがなされており、電源にもその施策が求められている。そのキーワードとして次の2つを取り上げる。

キーワード①:高効率化
電気製品の生産数量は年々増加し、それに比例して電力使用量も増加傾向にある。電気製品は、現在、年間50億台程度生産されており、それらのほとんどに電源モジュールや電源回路が搭載されている。仮に、これらの電源の損失を1W(ワット)改善できたとすると、単純計算で50億W、原子力発電5基分相当の省エネ効果となる。このような背景から各国の規格団体等も効率規制を強化しており、これらの基準をクリアする電源モジュールや電源回路の開発が求められている。
ここで電源モジュールに要求される高効率化の規制の代表として、アメリカ合衆国エネルギー省(DOE)が定める効率規制を紹介する。アメリカ合衆国エネルギー省は、2014年2月3日、ACアダプタなどの外部電源に対する規制強化を発表した。2016年2月10日以降(予定)、対象の外部電源は新しい基準(表1、2)をクリアしなければアメリカ国内での販売ができなくなる。このため、AC/DCアダプタメーカーなどを中心にこの規制をクリアする製品化が急がれている。

定格出力電力
Pout(W)
動作時の平均効率 無負荷時の消費電力
(W)
Pout ≧ 1 ≧ 0.5 × Pout + 0.16 ≦ 0.100
1< Pout ≦ 49 ≧ 0.071 × Ln(Pout) - 0.0014 × Pout + 0.67 ≦ 0.100
49 < Pout ≦ 250 ≧ 0.880 ≦ 0.210
250 < Pout ≧ 0.875 ≦ 0.500

表1:DOE CEC Level 6 外部電源規制AC/DC電源(出力電圧 ≧ 6V)

定格出力電力
Pout(W)
動作時の平均効率 無負荷時の消費電力
(W)
Pout ≧ 1 ≧ 0.517 × Pout + 0.087 ≦ 0.100
1< Pout ≦ 49 ≧ 0.0834 × Ln(Pout) - 0.0014 × Pout + 0.609 ≦ 0.100
49 < Pout ≦ 250 ≧ 0.870 ≦ 0.210
250 < Pout ≧ 0.875 ≦ 0.500

表2:DOE CEC Level 6 外部電源規制AC/DC電源(出力電圧<6V)

キーワード②:産業廃棄物の削減
電気製品の生産数量の増加に伴い、その廃棄物も増加しており、これらの産業廃棄物削減のため、3R(リユース:Reuse、リデュース:Reduce、リサイクル:Recycle)が求められている。電源に関しては、これまで、その構成部品、材料の一部はリサイクルされるが、多くの部分は破棄されている。現在、このような環境負荷を軽減する技術開発が進み、電源モジュールや電源回路にも搭載されるようになりつつある。近い将来、これらの技術が産業廃棄物の削減に貢献することが期待される。

本編では、これらのキーワードをもとに電源の高効率化や技術、アプリケーション等について紹介していく。

同期整流と低消費電力化の機能

図1:同期整流方式
図1:同期整流方式

電源モジュール(AC/DCアダプタなど)での高効率化を実現する技術としては、 スイッチングデバイス(MOSFET)などの部品の進歩と回路技術の改善が挙げられるが、 その中の回路技術の改善として注目されているのが同期整流方式である。
従来のAC/DCコンバータでは、回路が簡単、比較的安価という理由から、 整流素子にダイオードが使用されているが、このダイオードの順方向電圧(Vf)による導通損失が高効率化の障害となっている。
また、ダイオードの発熱を抑制するためにヒートシンクなどの放熱が必要になることもあるため、 その分のスペースが必要となり、実装面でも課題にもなり得る。この損失軽減対策として同期整流方式が使用されるようになってきている。
同期整流方式は、整流素子にMOSFETを使用し、低ON抵抗(低Ron)化により導通損失を軽減する(図1)。
動作は1次側のスイッチング動作に同期して整流素子のMOSFETをON/OFFさせる。

同期整流方式自体は、低圧(特に12V以下)のDC/DCコンバータのほとんどに採用されているため、 特に目新しいものではない。しかしAC/DCコンバータにおいては、制御方法などが課題になるため、 同期整流方式は普及の妨げになってきた。現在では、多くのAC/DCコンバータにはPWMフライバック方式(ON/OFF方式)が採用されているが、この方式は入出力条件やトランス仕様によって連続モード動作になる。しかし、同期整流方式を連続モード動作で使用すると、正常な制御ができなくなり、1次側のスイッチング素子と2次側の整流素子が同時にONしてしまい、貫通電流によって素子の破壊を引き起こす可能性があった。このため、同時ONを防止するための保護回路の追加や、連続モード動作にならない場合(疑似共振方式や不連続モード動作)のみの使用が大半である。
しかし、今回開発したロームの同期整流ICは、この課題を克服し、連続モード動作時でも特別な保護回路を必要とせずに安定した同期整流動作を実現し、採用した。それにより、従来のダイオード整流に対して、電源モジュール全体で3%以上の効率改善を実現した(当社比較)(図2)。

図2:Diode整流/同期整流 効率比較
図2:Diode整流/同期整流 効率比較

またロームの同期整流ICは、同期整流制御部+シャントレギュレータ部の構成になっており、 一つのICで二つの機能を有している。シャントレギュレータ部は低電流動作(40uA)を実現し、 同期整流制御部は、無負荷時などに自動でスリープモードに入ることで、動作電流を軽減する。 これにより、従来の汎用シャントIC使用時と比較して無負荷時の消費電力を25mW以上軽減した(当社比較)。

環境負荷軽減技術:USB Power Delivery

図3:USB Power Deliveryとは
図3:USB Power Deliveryとは

環境負荷を軽減する技術の一つとして期待されるのが、USB Power Delivery(USB PD)である。
USB PDはUSB接続を通じて最大100Wまでの電力供給を可能にする。 USB PDは、それぞれの機器の電源電圧に合わせてAC/DCアダプタ等の電源の出力電圧を制御する。 これにより、従来は機器ごとに電源が必要であったが、USB PDでは1つの電源を共通して利用できる。 また、機器間においてもこれまではデータ通信が中心であったが、USB PDにより互いに電力供給することも可能になる (図3)。

 

図4:USB PD Type-C アプリケーション例
図4:USB PD Type-C アプリケーション例

USB PDの普及においては、USBコネクタの進化も重要な要素になっている。これまでのタブレットやスマートフォンで普及しているType-A/Bコネクタでは最大10W程度であるが、これは1Cellのリチウムイオンバッテリーの充電を前提としており、充電側の電源電圧(USB VBUS)は5Vに制限されていた。そこにType-Cコネクタが新たに出現し、USB PDと組み合わせて使用することで、電源電圧を5Vに制限せず、最大20Vまで大きくすることで最大100Wまで電力供給できるようになる。これにより、これまでのバッテリー充電等の小電力用途から機器本体のメイン電源として利用できるようになる。また、Type-Cコネクタでは、裏表関係なくケーブル挿入が可能になるなど、最大電力以外でも進化が進み、今後のUSBコネクタの主流になっていくことが予想される。
ロームでは、従来のUSB Type-A/B規格に対応したUSB PD制御IC(BD92Sシリーズ)に加え、最新のUSB Type-C規格Rev1.1とUSB PD規格Rev2.0に対応するUSB PD制御IC(BM92Tシリーズ)を開発した。BM92Tシリーズでは、従来10W程度までの電力供給しかできなかったType-C対応機器間で、最大100W(20V / 5A)までの受給電を可能にする。これによりPCやTVなど大きな電力を必要とする機器でも、USB端子からの給電による動作が可能になる(図4)。
同時に、USB端子の従来用途であるスマートフォンやタブレットなどにおいては、従来比約4倍以上の急速充電が可能になる。また、USB通信信号線に映像信号を通すことができるようになるAlternate-Mode制御にも対応しており、映像専用ポートが不要になるため、給電しながら映像信号も映すなど利便性の高い環境構築にも貢献する。

環境負荷軽減技術:ワイヤレス給電

環境負荷を軽減する技術としてはワイヤレス給電も注目される。
タブレットやスマートフォンなどのモバイル機器が普及し、データ伝送は無線が当たり前になっているが、 電力伝送は充電器(AC/DCアダプタなどの電源モジュール)による有線が主流である。ワイヤレス給電は、 このような有線による充電や機器ごとに充電器を用意しなければならない煩わしさを解消することで注目されているが、 充電器を削減できる点で環境に対するメリットもあると言える。
現在、WPCやPMAをはじめとするワイヤレス給電の普及を目指した規格団体が立ち上がり、国際規格が策定されることで、 欧米を中心にスマートフォンやインフラへの導入が徐々に始まっている。

ロームは、タブレットやスマートフォンなどのモバイル機器向けに、 ワイヤレス給電制御IC(BD57015GWL:受信・端末側、BD57020MWV:送信・充電側)の開発を進めている。
この2製品は、ワイヤレス給電の国際規格:WPC(Wireless Power Consortium)の 最新Qi規格ミディアムパワーに準拠するチップセットで、タブレットなど10Wクラスのアプリケーションで ワイヤレス給電を実現する。また、受信・端末側のBD57015GWLは、北米市場で展開しているワイヤレス給電の 国際規格PMA(Power Matters Alliance)にも対応し、自動切り替えによるWPC(10W)とPMA(5W)の デュアルモード受電を実現する。(図5)

図5:ワイヤレス給電
図5:ワイヤレス給電

電源モジュールや電源回路は、今後、更に強化される効率規制や環境問題に直面することが予想される。 これらの要求に対応していくには、電源モジュールや電源回路に留まらず、電気製品全体を見据えた取り組みが求められる。
ロームでは、これらの市場要求実現のためにトータルアプリケーションに注力し、製品開発を進めていく。

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