【掲載記事】ロームのスマホ・ウエアラブル機器向け
気圧センサ/地磁気センサ/MEMS技術

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電波新聞ハイテクノロジー掲載 進化するロームの最新パワーデバイス

背景

近年、スマートフォンやウェアラブル機器の普及により、屋内でもGPSのように移動中にリアルタイムな位置検出を行いながら、立体的な情報も含めて正確に目的地を目指すことができる3次元インドアナビゲーションのアプリケーションが数多く提案されるようになってきた。例えば、何階のどの位置にいるかを認識して、建物内のナビゲーション機能が提供されるようになる。この3次元インドアナビゲーションを実現する為には、従来と比べて高精度なセンサが必要で、ロームでは新たに開発したMEMS(微小電気機械システム:Micro Electro Mechanical Systems)の気圧センサで高さを検出し、地磁気センサ(MI)で方位を検出する方式で、より高精度なナビゲーションが可能となる事を提案している。

ピエゾ抵抗効果を利用した気圧センサ

気圧センサにはいろいろな検出の種類があるが、当社の気圧センサはピエゾ抵抗効果を利用している。ピエゾ抵抗型気圧センサは、真空に形成した空洞と、シリコン基板をエッチング等により薄くしたダイアフラム(受圧部)上に拡散やイオン打ち込みで形成したゲージ抵抗(ピエゾ抵抗)のピエゾ抵抗効果を利用している。(図1)

図1(気圧センサ断面図)
図1:気圧センサ断面図

ピエゾ抵抗効果は、応力によって起こる分極現象である圧電効果とは異なり、抵抗に加わった応力によって電気導電率すなわち抵抗率が変化する現象である。この現象は、加わった応力により結晶格子に歪が生じ、半導体中のキャリアの数や移動度が変化するため起こると説明されている。ダイアフラムが圧力を受けてたわむと各ゲージ抵抗にはダイアフラムのたわみ量に応じた応力が発生する。この応力に比例してゲージ抵抗(ピエゾ抵抗)の抵抗率が変化し、それによる電気抵抗の変化を電圧変化として取り出して気圧を検知する。しかしながら、この抵抗の変化は極めて小さい為、4つの抵抗によるホイーストンブリッジ回路を利用し高感度を図っている。
今回、当社は市場が拡大するスマートフォンやウェアラブル機器、活動量計などに向けて、気圧情報を検知し、高度や高低差検出に利用できる気圧センサ「BM1383GLV」を開発し、2015年4月より量産を開始している。これは、長年培ってきたセンサ開発のノウハウを駆使し、高精度な検出用MEMSと低消費電力かつ高精度なA/Dコンバータを搭載し、業界最高クラスの相対高度精度±20cm(相対気圧精度±0.024hPa)を実現した。(図2)また従来、気圧センサは低温時の検出精度を追求することが難しいという課題があったが、ローム独自の補正演算アルゴリズムによる温度補正をIC内部で行うことで、低温時にも高精度の気圧検出を行うことが可能である。(図3)同時に外部のマイコンに温度補正機能を搭載する必要がなくなるため、設計負荷の削減にも貢献し、センシングブロックと演算ブロックの小型化に成功した。これにより温度補正機能内蔵の気圧センサとしては業界最小クラス(2.5mm×2.5mm×0.95mm)のパッケージサイズを実現した。

図2:気圧測定結果例 図2:気圧測定結果例

図3:温度依存気圧測定結果例 図3:温度依存気圧測定結果例

気圧センサは用途が拡がるにつれて、より高精度な気圧検知・高度検出が要求されるようになると同時に、スマートフォンやウェアラブル機器の小型化・高機能化に伴い、センサの小型化も強く求められている。これらの要求に対して2016年4月より量産予定なのが「BM1385GLV」である。すでに量産しているBM1383GLVの特長は継承しつつ、気圧検出用MEMSと制御回路の再構築を行うことで、ローム従来品と比較して面積を36%削減し、世界最小パッケージ(2.0mm×2.0mm×1.0mm)の気圧センサを実現した。(図4)(2015年7月14日ローム調べ)

図4:PKGサイズイメージ図
図4:PKGサイズイメージ図

MI素子を用いた地磁気センサ

これまで方位を検出する地磁気センサにはホール素子が採用されていたが、精度に課題がありインドアナビゲーションの普及には至っていない。また、精度に強みがあるMR(Magneto-Resistive)素子も登場したがモバイル機器の消費電流としては課題が残る。これらの課題に対して、ロームは2013年より愛知製鋼株式会社と業務提携を行い、精度、消費電流などで既存技術を凌駕するMI素子を使用した地磁気センサを開発した。MI素子とは特殊なアモルファスワイヤにパルス電流を印加し、その時のMagneto-Impedance変化をワイヤ周辺に形成したピックアップコイルによって検出する素子である。このMI素子をX軸、Y軸、Z軸の3軸分と制御用ASICで1chip化したICがロームのBM14xxシリーズ(chip size 2.0×2.0×1.0mm)である。
この地磁気センサ(MIセンサ)の特長としては以下の2点が挙げられる。1点目は検出精度誤差が世界中どこでも±0.3度以下に抑えられる事である。(図5)

高感度MI素子とノイズに強い高精度なA/Dコンバータを搭載したアナログフロントエンド回路を組合せることで、σノイズの影響を一般品比の1/7となる0.06μTに低減する事を可能とした。これにより業界最高の方位検出精度誤差±0.3度以下を達成しIoTやセンサネットワークのイノベーションを加速することでインドアナビをはじめとした新しいセンサアプリケーション実現に貢献出来る。2点目はモバイル機器に最適な超低消費電力である。(図6)

図5:方位誤差実測比較 図5:方位誤差実測比較

図6:消費電流比較 図6:消費電流比較

一般的な地磁気センサは、精度向上のためにセンシング(演算)回数を増やし平均値を出す必要があるが高感度なMIセンサは、センシング回数を減らしても高い精度を実現出来る事から、演算処理に必要な電力を大幅に低減する事を可能とした。これにより業界最小となる一般品比の1/20となる消費電流0.15mA(100Hz時)を実現し、スマートフォンやウェアラブル機器の長時間使用に貢献出来る。この様な特長を持つMIセンサの今後の用途としては、拡張現実(Augmented reality)サービスが挙げられる。これは目の前にある現実をスマートフォンやタブレットPC上に表示して、その画面より物体の位置情報、方位情報を割り出し特定し、そのものの情報をインターネットから入手し画面上に重ねて表示するサービスである。また、地図サービスと併用すれば目の前の建物を特定しその建物のホームページなどに自動的にアクセスする等のサービスも可能である。これは、方位検出精度が非常に高いMIセンサでこそ実現可能となる。

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