【掲載記事】ロームのアドバンテージを凝縮した次世代新シリーズ
高機能、高信頼性、36V耐圧ステッピングモータドライバ

ロームのアドバンテージを凝縮した次世代新シリーズ 高機能、高信頼性、36V耐圧ステッピングモータドライバ

ステッピングモータは、アナログ時計を始め、ハードディスクや光ディスクドライブ、デジタルカメラ、プリンタやコピー機、自動車のX-by-wire、産業用ロボット、各種製造/組立装置など、そのアプリケーションと市場は非常に幅広く、現代の様々な機器の電動機能を担う重要なデバイスであることは言うまでもない。

そして、その制御には、ステップやシーケンスを発生するPLCやマイクロコントローラと、モータのコイルを励磁するドライバが必要であり、ステッピングモータの発展とともに機能と性能、そして信頼性と安全性を高め進化を続けている。

ロームは先般、自社のステッピングモータドライバICシリーズの次世代品と位置づける新シリーズ3機種をリリースした。これらには、多彩なステッピングモータドライバICを展開するロームの最新技術が投入されているという。本稿では、その詳細を検証する。

パッケージ

1A、1.5A、2Aの3機種ともに、この小型低背パッケージで供給

36V耐圧、出力電流1A/1.5A/2A、クロック入力、バイポーラ駆動PWM定電流ドライバ

最初に、新シリーズ3機種の概要と特長を示す。3機種はピンおよび機能互換で、基本的に出力電流と出力のオン抵抗が機種間の違いとなる。機種名の数字の下2桁が出力電流と一致しているので判別しやすい。

BD63710AEFV: 出力電流 1.0A(ピーク 1.5A)、オン抵抗 1.20ΩTyp.(上下合計)
BD63715AEFV: 出力電流 1.5A(ピーク 2.0A)、オン抵抗 0.95ΩTyp.(上下合計)
BD63720AEFV: 出力電流 2.0A(ピーク 2.5A)、オン抵抗 0.65ΩTyp.(上下合計)

下記の特長の箇条書きが示す通り、汎用性が高い仕様を備えつつ、ノイズブランキング、温度/電圧/電流に対する保護の他、隣接ピンの短絡保護など信頼性向上のために多くの配慮がなされている。

右の応用例のように外付け部品はわずかで、パッケージは小型低背であり省スペースである(前項寸法図参照)。また、裏面に金属パッドが露出している放熱性能が高いパッケージにより、小型化とともに1A、1.5A、2Aという出力電流が異なる機種を同じパッケージに収め、完全ピン互換を実現している。

BD63710AEFV ブロック図および応用例

BD63710AEFV ブロック図および応用例
(クリックで拡大)

BD63710AEFV / BD63710AEFV / BD63710AEFVの機能概要と特長
低オン抵抗DMOS出力 同パッケージで2Aまでの出力電流を供給
電源定格36V、推奨動作範囲19V~28V 24V系に最適
シングル電源(レギュレータ内蔵) 制御回路とドライバ用に別個の電源が不要
PWM定電流制御 出力電流検出と内部2bit DAC、CRタイマによる制御
クロック入力駆動(変換器内蔵) PLCやMUCのロジック信号を直接利用
出力オン時スパイクノイズブランキング 外付けノイズフィルタなしで定電流駆動
励磁モード Full Step、Half Step(2種類)、Quarter Step対応
Mixed Decayモード Fast / Slow Decayを切り替え比率をリニアに設定可能
正転逆転切り換え機能 CW_CCW端子のロジックレベルで切り替え
パワーセーブ機能 低消費スタンバイ状態にして出力も開放状態にする
パワーオンリセット 電源投入時の状態初期化
完全な保護 温度(TSD)、過電流(OCP)、低電圧(UVLO)、過電圧(OVLO)
電源未印加時誤動作防止 入力信号の電源流入を防止(Ghost Supply Prevention)
隣接ピン間短絡保護 天絡、地絡以外に隣同士のピンの短絡に対する保護
HTSSOP-B28パッケージ 小型、低背、裏面放熱 9.7×6.4×1.0mm(H)
ロームのステッピングモータドライバのアドバンテージ

前項では、機能の概要を示したが、ここではロームのステッピングモータドライバのアドバンテージとなる機能の詳細を説明する。ステッピングモータドライバICを提供しているメーカーは多く、制御原理は基本的に同じであるが、如何に確実な動作をするか、そして安全面を含めた信頼の高い動作を確保できるかが差別化のポイントになる。

◆ シングル電源

ステッピングモータドライバは、簡単に言えば出力制御のための検出および制御回路部と、モータをドライブするドライブ回路部で構成されている。検出および制御回路部は入力インターフェースを含め、例えば5Vといった低いシステム電圧で動作し、ドライバ部は高電流を出力するために、例えばこの機種では19V~28Vのモータ駆動用の高電圧を直接扱う。したがって、ICとしては2系統の電源を必要とし、ICによっては2つの電源を準備する必要があり、システム電源が利用できない場合は、回路に降圧レギュレータを追加しモータ駆動電圧から検出および制御回路部用の電圧を作らなければならない。これは、説明するまでもなく、コスト、スペースの追加につながる。
これらの機種は、降圧レギュレータを内蔵することにより、モータ駆動電源だけで、検出および制御回路部の電源を意識せずに使用できるように設計されている。これは電源の追加が不要になるだけではなく、電源投入シーケンスの構築、スイッチングレギュレータを使った場合のノイズに関連した基板配線の考慮など、関連するすべての課題をクリアにしてくれる。

シングル電源のメリット

シングル電源のメリット

電源未印加時誤動作防止機能

電源未印加時誤動作防止機能

◆ 電源未印加時誤動作防止機能(Ghost Supply Prevention)

一般的にICのロジック信号などの入力回路には、保護のために入力から電源とGNDにダイオードが挿入されている。このため、電源が与えられてない状態で入力に信号が入ると、信号電圧からダイオードのVFを差し引いた電圧が電源に流入し誤動作を引き起こすことがあり、これはそのICだけではなく同じ電源ラインを共有する他のICにも及ぶので留意が必要である。これを防止するために、入力から電源への電圧流入経路を排除した設計がなされている。

◆ Mixed Decayモード

PWMの電流駆動では、出力トランジスタがオンすると電流が上昇し、設定電流に至ると電流が減衰する動作を繰り返す。この電流の減衰(Decay)方法には、Slow DecayとFast Decayがあり、それぞれのメリットとデメリットがある。使用条件によっては下図のように電流の減衰波形に歪が生じ、振動やノイズが発生するなどの問題が生じる場合がある。これを解決する機能として、減衰特性の最適化を可能にするMixed Decayモードが搭載されている。
Mixed Decayモードは、電流減衰期間にSlow DecayとFast Decayを切り替え、さらにその時間比率をリニアに調整可能とすることで最適化を行う。Slow DecayとFast Decay、そしてMixed Decayの特徴を下表にまとめた。

Slow Decay
  • 電流減衰時にモータコイル間にかかる電圧が小さく、回生電流が穏やかに減少するため、
    電流リップルが小さく、モータトルクには有利
  • 小電流領域において電流制御性の悪化による出力電流の増加がある
  • Half Step、Quarter Stepモードにおける高パルスレート駆動時に、モータ逆起電圧の影響を受けやすい
  • 電流制限値の変化に追従できずに電流波形が歪み、モータ振動が増加する
  • Full Stepモードや低パルスレート駆動のHalf Step、Quarter Stepモードに適する
Fast Decay
  • 回生電流が急激に減少するため、高パルスレート駆動における電流波形の歪みを軽減できる
  • 反面、出力電流のリップルが大きくなるために平均電流が低下し、
    (1)モータトルクの低下、(2)モータの損失が大きくなり発熱が増加する
  • (1)および(2)の問題が無ければ高パルスレート駆動の Half Step、Quarter Stepモードに適する
Mixed Decay
  • 電流減衰中にSlow DecayとFast Decayを切り換えることで、電流リップルを大きくせずに電流制御性を改善する
  • MTH端子に入力する電圧によって、Slow DecayとFast Decayの時間比率をリニアに調整することができる
  • あらゆるモータに対して制御状態の最適化を図ることが可能
Mixed Decayモード:電流衰退中にSlow DecayとFast Decayを切り替える

Mixed Decayモード:電流衰退中にSlow DecayとFast Decayを切り替える

Quarter Step時の電流波形の歪み

Quarter Step時の電流波形の歪み

◆ 各種保護機能

形あるものの動作が伴うモータ駆動アプリケーションでは、動作の正確性はもちろん、異常動作の回避や、動力によっては相応の電力を扱うことから発熱や破損といった安全性と信頼性の確保は非常に重要である。そのために、先に示した電源未印加時誤動作防止機能や隣接ピン間短絡保護の他に、4つの保護を搭載している。

グラフは過電流保護(OCP)の有無による振る舞いと、OCPが高速であることを示している。ヒューズによる保護より、高速(4µs typ.)かつ信頼性の高い保護が得られる。(グラフの縦軸は出力電流)

OCPなしとOCPありの比較

温度保護回路(TSD) ICの過熱保護対策としてのサーマルシャットダウン回路。ICチップ温度が175ºC(typ.)以上でモータ出力を開放状態にする。150ºC(typ.)以下で自動復帰。
過電流保護回路(OCP) モータ出力間短絡、天絡、地絡時のICの破壊防止。規定電流が規定時間(4µs typ.)流れるとモータ出力を開放状態にラッチ。電源再投入かPS端子によるリセットで復帰。
低電圧時誤動作防止機能(UVLO) 電源電圧が正常動作できる電圧より低い場合にICの誤動作を防止。VCC電圧が15V(typ.)以下で、モータ出力を開放状態にする。
過電圧時出力オフ機能(OVLO) 電源電圧が過剰な場合にIC出力およびモータを保護。VCC電圧が32V(typ.)以上で、モータ出力を開放状態にする。
◆ チャージポンプ不要

ブリッジ出力段をすべてNch MOSFETで構成すると、オン抵抗を低減しやすいが上側のトランジスタのゲート駆動のために、ソース電圧(=VCC)より高い電圧が必要になる。そのために、チャージポンプ回路を構成しVCC電圧を昇圧するのが一般的だが、VCC電圧はモータ駆動電圧ゆえに高いため、チャージポンプ用の外付けコンデンサは耐圧の高いものが必要となる。たとえ、チャージポンプ回路やダイオードが内蔵されていたとしても、高耐圧コンデンサが2個必要になることを、低オン抵抗とのトレードオフとして許容できるかは難しいところである。
これらの機種は、上側のトランジスタにPchを採用することで昇圧回路を必要としない。これによって、高耐圧コンデンサ2個が不要になる。オン抵抗に関しては、上下(Pch+Nch)の合計の最大値が保証されており、先に示したようにDMOSの採用により十分に小さい値が確保されている。

まとめ

ロームのステッピングモータドライバICシリーズの次世代品3機種について、基本機能と性能、そしてそれらがもつアドバンテージの詳細を確認してきた。基本的に広範なステッピングモータに対応する汎用性を備え、Mixed Decayモードによるさらなる最適化、外付け部品を削減する回路構成、信頼性と安全性のための様々な保護機能といったアドバンテージを備えている。

ラインアップの観点では、BD63710AEFV、BD63715AEFV、BD63720AEFVは、すでに多くの採用実績をもつBD6387xEFV シリーズの次世代品として進化したシリーズであり、機種追加も予定しているとのこと。ユーザーの視点では、高性能でありながら使いやすく信頼性の高いステッピングモータドライバの継続的な開発を今後も期待したい。

関連資料
この記事はインデックスプロのWEBサイトに掲載されました。
この製品についてのお問い合わせ