特集:高周波デバイスとモジュール技術
ワイヤレスセンサネットワークに最適なラピスセミコンダクタのSub GHz無線ソリューション

掲載記事

Contributing Articles

ワイヤレスセンサネットワークに最適なラピスセミコンダクタのSub GHz無線ソリューション

Sub GHz無線への期待

ロームグループでは、ワールドワイドで使用可能なISM帯の一つである2.4GHz無線として、無線LANをはじめ、Bluetooth Low EnergyやIEEE802.15.4規格をベースにしたZigBee、Sub GHz無線など、さまざまな無線通信技術を有している。
また、ロームとラピスセミコンダクタの技術を融合させることにより、それぞれの通信規格の電波特性を生かした無線通信LSIやモジュールを、ユーザーニーズに合わせて、一貫して提供している。特に無線通信用LSIにおいては、ラピスセミコンダクタが得意とする低消費RF-CMOS技術と高性能MODEM技術を用い、業界最高水準の低消費電力と無線性能を実現している。

図1.ロームグループの無線通信技術
図1. ロームグループの無線通信技術

さまざま無線通信規格が用途によって使い分けられている中、今後の普及に対しさらに期待が高まっているのが920MHz帯のSubGHz無線である。(本記事では電気メータのほか、ガスメータ、水道メータなどスマートメータ全般に用いられる160-900MHz帯全体を、広くSub GHzと定義している。)背景には、あらゆる分野での省エネ意識の高まりに伴い、各国で効率的なエネルギーの利用に向けた取り組みが拡大していることがあげられる。中でも住宅では、家庭内で消費されている電力の「見える化」や、一括で管理・制御を行う事で省エネを実現するHEMS(Home Energy Management System)に注目が集まりつつある。さらに省エネだけでなく、センサを組み合わせることで、温度、湿度、照度などの生活環境情報を読み取り、防犯装置、モニタ端末、空調、照明といった家電などと通信を行い、快適で安全な生活への提案も考えられている。
また、老朽化が進むトンネルや橋梁、災害時の避難場所となる公共建築物、高層ビルに代表される大型建造物などの強度診断や劣化検出は、構造物ヘルスモニタ(SHM:Structure Health Monitoring)として注目されている。国内では、高度経済成長時代に建設された建造物の老朽化の診断や対災害安全性の継続確保の必要性のため、今後ますます普及していくと考えられる。これらを支える通信技術の1つとして、近距離無線を利用したネットワーク技術がある。特に、電波到達性が高く、広範囲のネットワークを簡易に構築できる920MHz帯無線通信にSHM分野でも関心が集まっている。
今回は、ワイヤレスセンサネットワークの代表例としてスマートグリッドの中核を構成するスマートメータを例にとり、そのソリューションとしての必要要件とデバイスの求められる特性について説明する。

スマートメータの普及

米州で普及しているスマートメータ化の流れは、世界へと広がりを見せている。欧州では、2020年に設置率80%を目標に各国でスマートメータ設置が進み、国内では2014年から実証実験が本格化している(図1)。
一方で、急速に普及したスマートフォンやタブレットに代表される無線LANとの電波干渉により、ネットワークのトラブルも多々発生している。これは、初期普及のスマートメータが、2.4GHz帯を利用した無線通信であることと、その電波伝搬におけるエリアカバー特性の乏しさにある。
こうした背景を受け、近年導入が計画されているスマートメータは、電波資源が枯渇した2.4GHz帯をさけ、さらに電波伝搬特性の優れたSub GHzを使用したものとなっている。
Sub GHz無線は、2.4GHz無線に比べて、干渉源となる他方式の無線システムが同じ帯域に存在しない事や、電波伝搬特性に優れ、物影(ビルの裏など)への伝搬が可能という優位性を持っている。

図2.スマートメータ出荷台数(単年)
図2. スマートメータ出荷台数(単年)
※日経BP社様『スマート関連の市場動向調査』より抜粋

スマートメータにおける通信ネットワークには、強靭性と低消費電力と高セキュリティが求められるが、もちろんワイヤレスセンサネットワーク全般にも、スマートメータと同様のことが重要視される。強靭性とセキュリティに関しては、スマートメータほどではないが、低消費電力については、前出のSHMを中心に最重要課題である。これは、メンテナンスの困難さと対象物に要求される耐用寿命に依存しているからである。
たとえば、国内のスマートメータに関しては、約10年程度で、機器の再設置が行われるが、SHMでは、構造物自体の耐用年数は、すくなくとも50年ある。この間、トンネルの天井裏や橋脚の頂上など高所に設置されたセンサノードは、動作し続ける必要があり、設置場所の制約から電池の交換もままならない。
ラピスセミコンダクタは、これらの市場ニーズに対応するSub GHz無線ソリューションとして、ワールドワイドのスマートメータに最適なSub GHz無線LSIとSub GHz無線LSI制御用マイクロコントローラをラインアップしている。

ラピスセミコンダクタのSub GHz無線ソリューション コンセプト

ラピスセミコンダクタのSub GHz無線LSIのラインアップは、国や地域ごとに異なる周波数帯や通信規格に最適なだけでなく、スマートメータネットワークのユースケース毎に最適化された商品群とソリューションを取り揃えている。
電力メータでは、メッシュやクラスタツリー構造の比較的複雑な通信ネットワーク構造が用いられる。一方、ガス / 水道メータを中心に一部電力メータでは、集落やコミュニティに分散配置された全ノードを一手に集約する1:Nという比較的単純な構造の通信ネットワークを用いる傾向にある。このネットワークの違いに対応し、最適化した商品群をそろえている。さらに、最近のリリース商品では、セット開発リソースの軽減に貢献できるよう、パッケージはもちろんのこと端子配置を共通することで、セット基板のパターン共通化を可能にした。また、LSI制御レジスタを共通化することで、制御ドライバソフトの共通化も図っている(図3)。

図3.共通デザインRF-LSI
図3. 共通デザインRF-LSI

通信ネットワークとして1:N構成をとるスマートメータの多くは、通信到達距離を伸ばすために、比較的大きな送信パワーが要求される。この問題の解決策として、ラピスセミコンダクタでは、外付けパワーアンプを含めたシステムで、無線特性を確認・チューニング等の検証可能な評価ボード(図4)を提供している。

図4.ML7345+PA評価ボード
図4. ML7345+PA評価ボード

ラピスセミコンダクタのSub GHz無線ソリューションとしては、前述の通信ネットワークの違いに起因するユースケースに合わせたリファレンス回路図の提供の他に、システムの低消費電力化に貢献するために低消費電力のマイクロコンピュータと組み合わせ、スマートメータの通信プロトコルまで包含したシステムソリューションを提供している。

 

Sub GHz無線LSI製品の特長

① 通信ネットワークの強靭性に貢献する高性能・高安定無線性能

PA専用レギュレータを搭載することで、電源電圧変動による特性変動を抑制するとともに、PA電流の温度補正を行うことで、周囲温度変動による特性変動を吸収する(図5)。

図5.送信パワーと受信感度の温度特性
図5. 送信パワーと受信感度の温度特性

受信毎に、受信電界強度(RSSI)を測定し、最適な受信アンテナを自動で選択するアンテナ・ダイバーシチ機能で、フェージングが起きやすい広エリアネットワークでの通信ネットワークの強靭性に貢献する(ML7406)(図6)。

図6.アンテナ・ダイバーシチ
図6. アンテナ・ダイバーシチ

② システムの低消費電力化に貢献するアドレスフィルタ機能搭載

アドレスフィルタ機能で、自分あてのデータを判別するので、CPUでのデータ処理が不要で、システムの低消費電力化を実現する(図7)。

図7.アドレス・フィルタリング
図7. アドレス・フィルタリング

③ 受信時の平均電流を従来品比1/10以下にし、通信ネットワークの低消費電力化に貢献

業界トップのピーク時受信電流と電波検出時間を達成し、受信時の平均電流を従来品の1/10に低減した(ML7344C/J)(図8)。

図8.高速電話チェック時の電流プロファイル
図8. 高速電話チェック時の電流プロファイル

 

④ 統一設計コンセプトにより、セットのハードウェア、ソフトウェア開発資産の有効活用に貢献

2013年以降のリリース商品においては、パッケージ、端子配置、制御レジスタマッピングを共通にした統一設計コンセプトにより、異なる周波数帯や通信ネットワーク、各国対応のためのセット基板の共通化やソフトウェア資産の再利用などセット開発リソースの低減に貢献する(図3参照)。

Sub GHz無線ソリューションに最適な低消費電力マイクロコントローラ

また、無線での低消費電力と高セキュリティ要求は、通信制御用マイクロコントローラ(以降MCU)に対する要求にもつながっている。ラピスセミコンダクタでは、低消費電力でありながら、電池駆動機器をはじめ、高速処理を必要とする機器に最適な16bitローパワーマイコンシリーズを開発した。

<16bitローパワーマイコンシリーズの特長>

① 超低消費電力でありながら高機能処理を実現

従来のLAPIS製8bit、4MHz動作のMCUに比べ本MCUは、16bit、16MHzと、バス幅2倍、動作周波数4倍に性能を向上させつつ、Halt時の消費電流は450nAで従来と変わらない。低消費電力で高機能な処理が可能なため、本MCUは高セキュリティ要求に対する暗号化処理が実行可能だ。

② 複数のパワーダウンモードで低消費電力化をサポート

一般的に、MCUは、動作不要な時には消費電力の少ないパワーダウンモードにし、平均消費電力の低減を図った。本MCUは、パワーダウンモードを細分化し、その最適な組合せにより、低消費電力化が実現できる。

今後の取り組み

ラピスセミコンダクタは今後も、スマートメータをはじめ、拡大するワイヤレスセンサネットワーク市場に対応するため、得意とする低消費電力技術と無線技術を駆使し、セットの小型・軽量化と通信ネットワークの強靭化に必要な無線通信関連商品の開発を進めている。
また、単体LSIにとどまらず、ユースケースに合わせたデザイン・リファレンスや、通信ネットワーク・プロトコルを包含し通信システムとしての提案が可能なソリューションの開発、提供にも注力していく。

この件についてのお問い合わせ