特集:電源と電源用部品技術
自動車業界の潮流と車載向け超汎用電源ICシリーズとの関係

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自動車業界の潮流と車載向け超汎用電源ICシリーズとの関係

カーエレクトロニクス化という時代

近年、自動車の電装化がますます進んでいる。自動車を取り巻く"ハイテク"な電子機器の搭載は進み、従来の機械制御が多くを占めていた時代からすると、電子制御・電動化された機器が占める割合は非常に多くなってきている。そして、この自動車の電装化、カーエレクトロニクス化という動きはこれからも堅調に推移することが予想される。現に自動車の販売台数は2020年頃まで年率3~4%で伸びると言われているのに対し、自動車の電子部品関連におけるそれは年率7~8%と言われ、自動車台数自身を上回る伸びを示している(図1、2)。

[ 図1 ] 自動車の年間販売台数イメージ
[ 図1 ] 自動車の年間販売台数イメージ(2013年を"1"と換算してグラフ化)
※富士キメラ総研様『2014 ワールドワイドエレクトロニクス市場総需要調査』をもとに弊社で作成

[ 図2 ] 車載電子部品の電源ICの販売金額イメージ
[ 図2 ] 車載電子部品の電源ICの販売金額イメージ(2013年を"1"と換算してグラフ化)
※富士キメラ総研様『車載電装デバイス&コンポーネンツ総調査 2013』をもとに弊社で作成

カーエレクトロニクス化の要因として、大きく3つのキーワードがある。
キーワードの1つ目は「環境」である。一般車両へのHV(ハイブリット自動車)、EV(電気自動車)の普及は目覚しいものがある。また自動車メーカー同士の低燃費化競争も激化している。これらの躍進は、多くの技術的な要因により支えられているが、そのうちの1つに"ハイテク"な電子部品による制御がある。低燃費化についての例を挙げると、ガソリン噴出量を効率的に抑制するためのセンサーや各バルブの調整、オルタネータの高効率化などがあり、この1つ1つが下支えとなってエコ化に貢献している。例に挙げたこれらは、電子化された複雑で緻密な制御により実現しており、当然HV、EVの普及や燃費の性能向上に伴い、搭載される電子機器は増加していく。

2つ目のキーワードは「情報、快適」である。スマートフォンへの普及などに代表されるようにモバイル機器の発展は目覚しい。自動車にもその流れは押し寄せてきている。自動車本来の目的である移動手段としてだけではなく、好きな音楽をダウンロードして聴いたり、これから訪れる場所の情報をその道のりの間に得たりと、より日用品に近い存在として自動車のスマート化も進んでおり、これらを実現するための通信関連の電子部品も多く存在してきている。また快適性の向上に関しては、キーを持たずしてドア開閉やエンジンスタートが可能なスマートキーが一般車のほとんどに普及してきているなど、車室内をより居心地の良い空間にするための電子化も進んでいる。

最後のキーワードは自動車には欠かせない「安全」である。長年、自動車の安全性は、これまで車両フレームの剛性強化や衝突時の衝撃吸収、乗員へのエアバッグ動作などの危機発生"事後"の対策によるものが多かった。しかし、近年では電子機器性能の向上により、危機発生"前"の対策にフォーカスされ始めている。例を挙げると衝突防止装置、車両走行位置維持のための車線認識などである。車載カメラや車載センサーの精度、動作信頼性の向上により今や自動車の走行安全を実現する電子機器は1つの重要な分野として確立されてきており、これからも様々な機能の安全機器が開発、市場投入されていくだろう。

このように「環境」「情報、快適」「安全」という自動車にとって重要な成長分野は、電子制御・電動化により実現されたものが多く、今後もこれらの発展がカーエレクトロニクス化の流れをより強く推し進めていくことは確実である(図3)。

[ 図3 ] カーエレクトロニクス化を取り巻く3つのキーワード
[ 図3 ] カーエレクトロニクス化を取り巻く3つのキーワード

自動車向け電子部品供給における潮流

今回は電子部品の各アプリケーション(機能)を動作・制御するために必要な電源を供給する"電源IC"と呼ばれる半導体部品を例に、自動車業界における車載部品の潮流を紹介する。
自動車に用いられる電源ICとは、バッテリなどからの電圧を各機能に応じて適切な電圧に変換し、アプリケーションを動作させるマイコンなどにその電圧を安定して供給するものである(図4)。電源ICには大別してリニア電源(※1)とスイッチング電源(※2)の2つがあり、ロームの電源開発では各アプリケーションに応じた最適な電源ICを実現すべく、日々新しい技術、新しい製品の開発に取り組んでいる。アプリケーションごとにその制御を担うマイコンはそれぞれに存在するため、このマイコンに電源を供給するための電源ICもまたその1つ1つに必要である。従って、前述したカーエレクトロニクス化が進み、それに伴う電子制御部品が増加すれば、電源ICの需要も多様化し、増加することになる。

(※1)3端子レギュレータや入出力間の電位差が少ないLDO(Low Drop Out)などに 代表される出力電圧を連続的に安定化する電源を指す
(※2)DC/DCコンバータなどに代表される、電圧のスイッチング動作を用いて 出力電圧を不連続的に安定化する電源を指す

[ 図4 ] 電源ICは各アプリケーション1つ1つに必要
[ 図4 ] 電源ICは各アプリケーション1つ1つに必要

リニア電源ICにおいて、昨今の増え続ける電子部品と反比例するような低消費化を実現すべく、ロームは低消費電力化という付加価値をつけることにより、そのニーズに貢献する技術を開発してきた。しかし、ここ最近は車載要素部品への各自動車メーカーの要求に変化が生じてきている。

まず1つ挙げられるのが、市場ニーズが多様化してきているということだ。前述した「環境」「情報、快適」「安全」のキーワードに対するアプリケーションは多種多様であり、それぞれ求められる各要素電子部品の仕様もそれに応じて多様化してきている。電源ICの例で言うと、ひとつはアプリケーションの複雑化により、従来よりも大きな消費電力を発生するようなマイコンが用いられることがある。電源ICはマイコンに対し電圧を供給するため、マイコンの消費電力を満たすために大きな電流能力を持ち、かつ大きな消費電力による発熱に強いことが求められる場合がある。
他方では、電子部品が増えてきたことによる自動車内の搭載スペースの縮小化が起き、それを満たすための小型パッケージが求められる場合もある。それ以外にもマイコンの種類や用途によって、電源ICに求められるパッケージや供給電圧値、その電流量などはどんどん細分化している。電源ICにおいては多種多様なニーズに対応できる細かい仕様が必要となってきている。

もう一つは、上述した電子部品ニーズの多様化とは一見相反する流れではあるが、どこでも使えるような汎用的なニーズの高まりがあるということだ。これまでは単に機械制御の機器を電子制御・電動化することに主眼が置かれ、アプリケーションごとに異なるメーカーや様々な電気的特性の電源ICが各箇所に使用されており、その積み重ねにより結果的に自動車の価格上昇を招いてしまうことも多々あった。そして、それらは必ずしもメーカー間で(場合によってはメーカー内ですら)互換があるわけではない。

しかし、もはや自動車開発において電子部品の増加というものが避けられなくなってきている昨今においては、これらの低コスト化、合理化は急務となってきている。そのため、特に最近のカーエレクトロニクス化は新しいフェーズに入ろうとしており、他の電装システムとの協調や統合制御化によって重複する電子部品点数を削減しようとする動きや、標準プラットフォームの展開というだけに収まらず、電源ICに至るような各要素部品の共通化・標準化により統合的な低価格化、合理化を目指す動きが高まっている。この共通化・標準化にさらに拍車をかけたのは、昨今の東日本大震災を代表とする災害等による操業への影響だ。

これらの災害時に、特に製造業、自動車産業においては事業を継続することが困難になる程大きなインパクトを受け、全世界的に事業継続計画BCP(Business Continuity Plan)への意識が高まった。結果として、生産地域の2拠点化や標準化した電子部品の並列購買を例とするような、在庫を抱える以外での生産や購買の柔軟性や危機発生時の対応力を強化する動きに貢献する部品体系というものが求められるようになってきている。  "市場ニーズに応じた仕様の多様化"と"リスクヘッジを考慮した部品の共通化・標準化"は一見相反するものに思えるが、実はW/Wスタンダードとなり得る部品のファミリ群を求めていることに他ならない。多種多様なニーズに応えられる製品群を備え、かつ要素部品のスタンダードとなる汎用性を持つような製品があれば、それは自動車業界が求める時代の潮流に合致するものとなるはずである。

超汎用的なL DOシリーズ製品の一大ファミリ

ロームは先日、車載用として新規にLDOタイプのリニア電源IC(以下LDO)、2シリーズ全43機種を開発した。主にボディ系 / パワートレイン系用途に向けたBD4xxMxシリーズ16機種と、カーインフォテイメントなどの車載情報機器系に向けたBDxxC0Aシリーズ27機種の2つのシリーズ製品である。これだけの広い用途に対応できる車載用のLDO製品群を一気に投入したのは、これまで述べてきたようなカーエレクトロニクスの堅調な発展を土台とし、新たな「ニーズの多様化」に応え、「生産や購買の冗長性」に貢献するためである。細かい電気的特性の数値等の説明は省くが、この2シリーズの製品群は、その特性においては、より多様化した車載LDOのニーズにも十分応えられる高い汎用性を持ち、そしてそのラインアップにおいては、出力電圧やパッケージなど豊富なバリエーションを持ちながら統一性をもった一大ファミリを構築している。自動車業界の潮流に乗り、ユーザの利便性を高めている点が1つのアピールポイントである(図5)。

[ 図5 ] 新しいロームの車載向けLDOファミリ BD4xxMxシリーズ
[ 図5 ] 新しいロームの車載向けLDOファミリ BD4xxMxシリーズ

これまでロームの得意としてきた低消費電流についても、2シリーズともに低消費と言える消費電流値に分類される。特にBD4xxMxは消費電流40μA程度であり、これは十分に低消費の要求に応える値となっている(図6)。また、2シリーズとも出力電流が増えても無負荷時の消費電流値がほぼ変わらない特性を持つ。ほとんどのLDOは出力電流の増加に伴い、LDO自身の消費電流も直線的に増加し、発熱への影響が無視できなくなるが、ここに対して技術的な優位性を持つ。シンプルで使いやすいLDOだが、発熱による制限が課題となるため、この消費電流特性はこの課題に対して非常に大きな貢献である。

[ 図6 ] 暗電流だけでなく、アプリケーション動作時も低消費電流を実現
[ 図6 ] 暗電流だけでなく、アプリケーション動作時も低消費電流を実現

また、車載向けシリーズ製品として開発するにあたり、この2シリーズは開発段階から完全なる車載用として設計されており、近年車載用ICの規格として実質的な業界標準になっているAEC-Q100に対応している。既にロームは自動車産業向けの品質マネジメントシステムISO/TS16949も取得しており、車載向けの開発に求められる高い品質や温度条件を始め、厳しい環境下での使用における信頼性を十分クリアしている。もっとも、このことは10年以上続く自動車への納入実績が、何よりも証明している。

ロームが新規に開発したBD4xxMxシリーズとBDxxC0Aシリーズは、高い汎用性と豊富なバリエーションにより、利便性と自動車産業向けとしての品質と信頼性を備え、長期安定供給が可能な車載用LDOである。この超汎用的なLDOシリーズ製品の一大ファミリは、自動車業界が求める時代の潮流に合致し、W/Wスタンダードとなり得る電源ICとなると大いに期待される。これからの車載向け部品は、品質レベルの切磋琢磨は当然のことながら、顧客満足度という点において、このLDOシリーズ製品のように「ニーズの多様化」と「生産や購買の冗長性」を両立することが、1つのサクセスモデルになると考えている。

関連情報

■製品情報
車載向けLDOレギュレータシリーズ
BD4xxMxシリーズ/BDxxC0Aシリーズ

■新商品速報
新商品速報
車載向けLDOレギュレータシリーズ(AEC-Q100対応)BD4xxMxシリーズ / BDxxC0Aシリーズ (354KB)

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