特集:自動車用電子部品技術
自動車向け低抵抗シリーズの最新ラインアップ

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自動車向け低抵抗シリーズの最新ラインアップ

背景

電流検出用途の抵抗器は、主にモーター駆動回路・電源の過電流保護・電池の残量検知に使用される。これまでも自動車市場・産業機器市場・パソコン市場などで幅広く使われていたが、特に、近年の自動車市場では電気自動車・ハイブリットカーの開発に牽引され、市場全体でのアプリケーションの高機能化や電子化が加速している。
それに伴い、自動車市場では「より高電力に対応した小型サイズの低抵抗」、「回路の消費電力を抑えるための超低抵抗」、「過酷な温度環境でも優れた抵抗温度係数を確保する高精度な低抵抗」などの要求が高まっている。ロームでは自動車市場における低抵抗への要求の多様化に合わせて、多彩な低抵抗シリーズのラインナップを展開している。(図1)

ロームの低抵抗シリーズのラインアップ
(図1)ロームの低抵抗シリーズのラインアップ

<自動車市場における低抵抗の主な用途>(図2)

・各種モーターの駆動回路
・DC/DCコンバーターの出力部
・バッテリーの充放電監視回路・残量検知・・・・・など

低抵抗のアプリケーションおよび使用回路例
(図2)低抵抗のアプリケーションおよび使用回路例

電流検出低抵抗のトレンド

電流検出用の低抵抗は負荷に対して直列に実装し、両端子の電位差をICを用いて測定することで電流検出を実現している。ICによる電流検出の精度を向上させようとした場合、低抵抗の抵抗値を高く設定することで実現可能となるが、その場合電流を流した際の製品の発熱(損失)が大きくなってしまうデメリットも発生する。このように測定精度と発熱はトレードオフの関係にあるため、低抵抗は検出精度と発熱のバランスを見て製品を選定する必要がある。しかし、近年ではLSIの性能向上により今までよりも小さな電位差で電流検出を精度よく行うことが可能となっている。すなわち、より低い抵抗値の低抵抗を使用することで大きな電流を従来よりも小さな消費電力で検出することが可能になってきており、低抵抗に対する要求が拡大している。この様な背景からロームは2014年3月に最大で150A以上の大きな電流にも対応した製品(PSRシリーズ)を開発・発表した。

低抵抗技術の概要

・面実装タイプの低抵抗は、その材料・構造から大きく二つのタイプに分かれている。ひとつは厚膜低抵抗と呼ばれる汎用厚膜チップ抵抗器の技術をベースとしたもの、もうひとつは金属材料を用いた金属低抵抗である。これらは要求される性能により使い分けられていれるが、大まかには数十mΩ~は厚膜低抵抗、数mΩ付近は金属低抵抗で作られることが多く、金属低抵抗は高い定格電力保証を特徴としている。(図3)

ロームラインアップでの金属低抵抗と厚膜低抵抗の分布
(図3)ロームラインアップでの金属低抵抗と厚膜低抵抗の分布

・チップの形状としては実装基板と接続する電極の構造で二つのタイプに分かれる。チップの短辺側に電極を形成した一般的な形状と、チップの長辺側に電極を形成した長辺電極タイプと呼ばれるものである。一般的に長辺電極タイプの製品は基板実装後の接合信頼性や温度サイクル特性が高い。更に、実装基板への放熱性も高く短辺電極タイプの製品よりも高い定格電力を保証している製品が多いのも特徴として挙げられる。(図4)

長辺電極と短辺電極(汎用品)の特性比較
(図4)長辺電極と短辺電極(汎用品)の特性比較

・電極のメッキについてはニッケルメッキ・スズメッキが代表的であるが、低抵抗の場合は低抵抗化・温度特性の改善・抵抗値測定の安定性などを考慮して銅メッキを施す場合もある。

厚膜技術による低抵抗

・厚膜チップ抵抗器における素子形成の主な工程はスクリーン印刷によるパターン形成である。スクリーンを用いた印刷工法によりアルミナ基板上に抵抗素子や電極などを形成する。低抵抗の場合は、抵抗体材料に抵抗値の低いものを用いるが、通常抵抗値の材料と比べて電極材料の組成や、抵抗体・電極の厚みにより、温度係数や温度サイクル特性などが影響を受けやすいため、それぞれ最適な条件を考慮して設計を行う必要がある。
ロームは厚膜チップ抵抗器を世界で初めて開発した厚膜チップ抵抗器のパイオニアであり、長年培った技術を活かして豊富なラインナップの厚膜低抵抗を展開している。

・自動車市場での高い接合信頼性・定格電力の要求に応える製品として、ロームでは長辺電極タイプの低抵抗LTRシリーズを展開している。チップの長辺側に電極を配置することにより、高い接合信頼性や温度サイクル特性を実現。さらには長辺電極タイプの高い放熱性を生かし、通常の厚膜低抵抗よりも更に高い定格電力(例:3216サイズで1W保証)に対応している。

・基本的な製品としては一般的な汎用厚膜チップ抵抗器のMCR/低抵抗シリーズ(47mΩ~)や、MCR/低抵抗シリーズよりも広い抵抗値範囲(11mΩ~)をカバーし、かつ電極サイズの拡大/抵抗体材料の変更により高い定格電力/優れた温度特性を保証したUCRシリーズをラインアップしている。このUCRシリーズは定格電力/温度特性のメリットに加えて実装時の抵抗値ズレ低減を考慮した裏面実装構造を採用している。(図5)また、UCRシリーズは自動車市場で検討が活発になっている超小型0603サイズ(UCR006シリーズ)を-55℃~+155℃の使用温度範囲で保証しラインナップしている。

UCRシリーズの裏面実装構造
(図5)UCRシリーズの裏面実装構造

・これらの厚膜低抵抗(LTRシリーズ/UCRシリーズ)はその高い定格電力により、従来品(MCR/低抵抗シリーズ)からさらに小型パッケージへ置換えが可能であり、基板の小型化にも貢献できる製品となっている。

金属抵抗材料による低抵抗

・抵抗体金属を用いた低抵抗は厚膜低抵抗の技術とはまったく異なる構造になっており、抵抗体素子として数十μm~数mm程度の厚みの抵抗体金属材料を用いている。この抵抗体材料をエッチングや機械加工など種々の加工技術を用いて、素子形成することにより狙いの抵抗値や特性を出現させている。金属低抵抗は同サイズの厚膜低抵抗と比較して高い定格電力保証や高精度の抵抗温度係数保証が可能なことを特徴としている。また、0.2mΩから10mΩ程度の極めて低い抵抗値の領域では比較的厚い抵抗体金属を使用するため抵抗体そのものをチップとして形成する工法が一般的である。

・定格電力4W以上の領域でロームは0.2mΩ~3.0mΩの抵抗値範囲をカバーしたPSRシリーズを展開している。PSRシリーズは抵抗体金属と銅電極を独自の溶接技術を用いて接合し、高い放熱性と熱容量を持った構造を実現している。(図6)また、大型の銅電極により放熱性を確保し最高5Wの高い定格電力を実現しており、最適な抵抗体金属を抵抗値ごとに選定することにより、高精度な抵抗温度係数を達成しているのが特徴である。

PSRシリーズの外観と構造
(図6)PSRシリーズの外観と構造

・定格電力2W以下の領域では1mΩから10mΩの抵抗値範囲でPMRシリーズを展開している。PMRシリーズの構造はPSRシリーズとは異なるが、抵抗体金属を本体とした製品である点はPSRシリーズと同様である。また、PMRシリーズはトリミングによって抵抗値の調整を行わないローム独自の設計となっており、使用時に問題となることが多い抵抗体の発熱を低減することが可能な構造が特徴である。(図7)

同サイズ/同抵抗値での抵抗体の熱集中の比較
(図7)同サイズ/同抵抗値での抵抗体の熱集中の比較

PMRシリーズはサイズ展開としても世界最小クラスの開発が完了しており、今後さらなる小型化を進めていく。またPMRシリーズを長辺電極構造にして接合信頼性や放熱性を高めたPMLシリーズのラインナップも展開している。

今後の展開について

1W以上の領域において、金属材料を使用して数十mΩ以上の低抵抗領域に対応しようとすると金属抵抗体の厚みが100μm前後となるため、抵抗体そのものを本体とした構造ではチップ形成が困難となる。これは本体となる基材に抵抗体材料を固定することでチップ形成が可能となるが、従来のロームでは展開していなかったラインアップである。この領域はリード抵抗や厚膜低抵抗を用いて回路を構成するユーザーが多かったが、近年では検出精度の向上/基板の小型化/リード部品の削減などの多様な要求の増加により金属低抵抗に対する要求が高まっている。これらを見てロームではこの領域を今後の金属低抵抗の重要なラインアップと位置付け、小型・高放熱をコンセプトとして新商品の開発に注力している。
冒頭でも述べたように、今後の自動車市場では低抵抗への要求がさらに高まると考えられており、ロームでは高い定格電力・高放熱・小型化などをキーワードにさらなる低抵抗製品のラインアップ拡充を目標に開発を進めていく。

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ニュース
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5W相当のパワー抵抗器を新たにラインアップ

製品情報
高電力 シャント抵抗器 / 超低抵抗 金属板(PSR)

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