特集:電源用 / パワー半導体技術
力率改善と高効率を兼ね備えたロームの最新AC/DC電源技術

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力率改善と高効率を兼ね備えたロームの最新AC/DC電源技術

電子機器の開発において、電源の高効率化は、年々重要なテーマとなっている。また電力エネルギー問題を抱える日本だけでなく、全世界の発電・送電する電力会社においては、力率改善機器の普及は、高効率と共に非常に重要である。機器の動作時の力率改善と待機時の高効率を兼ね備えたAC/DC電源技術を紹介する。

1. 力率と力率改善回路(PFC:Power factor correction)とは
力率とは、電力会社で作った電力を無駄なく電子機器に送れるかの数値であり、効率とは、その電力を無駄なく変換したかの数値である。力率は、交流電力の電圧と電流の位相差をφとすると、力率=COSφで求められ、電圧と電流の位相差がなく、正弦波の時に1となる。
分かりやすく言うと、単純な抵抗負荷時は、電圧と電流波形に位相遅れが発生しないため、力率が1となる(図1)。

力率が1の場合の波形と回路例
[図1] 力率が1の場合の波形と回路例

しかし、現代の電子機器においては、スイッチング電源が多用されており、入力の交流電圧平滑用にコンデンサが使用されている(コンデンサインプット型整流平滑と呼ばれている)。この平滑用コンデンサ負荷により、入力交流電圧が、平滑コンデンサ電圧よりも高い時にだけ流れるため、導通角が小さくなり、電流波形が正弦波でない高周波成分を含んだ電流となる(図2)。

高周波電流の場合の波形と回路例
[図2] 高周波電流の場合の波形と回路例

これにより、同じ電力を消費したとしても電源側では、一時的に大きな電流が流れるため(たとえば力率が0.5の場合、ピーク電流が力率1の場合に比べ、2倍の電流が流れる)、電力会社はこのような高周波成分を含んだ正弦波でない電流に対して、余分な発電や設備の破壊事故に対して対策費用が膨らむことになる。
これらの問題を防ぐために、世界各国では、特定電力以上の機器には高周波電流規制を行い、各国の国内法に反映した運用をしている。この規制をクリアする手段の一つとして力率改善回路(PFC)を利用し、入力電流波形を正弦波に近づけることで高周波電流を抑制する。
この力率改善の手段としては、受動素子(インダクタ)を使用したパッシブタイプとパワーデバイスのスイッチングをさせるアクティブタイプが一般的である。
パッシブタイプは、回路構成が簡単であるが、広い入力電圧範囲には対応しづらく小型化も難しい。それに対して、アクティブタイプは、広い入力電圧範囲で対応でき、小型化に有利である(図3)。

力率改善前後の電流波形比較
[図3] 力率改善前後の電流波形比較

このアクティブ方式の力率改善回路(PFC)は、効率の観点でみると自身の消費電力にて効率を低下している。特に待機モードをもつ、現代の電子機器においては、それが顕著となる。

2. 力率改善回路と高効率の両立
ロームは、力率改善回路と高効率を両立するPFC制御機能を内蔵したAC/DCコンバータIC(BM1C001F)を開発した。本製品では、力率改善回路(PFC)コントローラを任意電力でON/OFFする機能とPFC出力新制御方式を搭載した。これらの技術により、待機電力を大幅に削減を実現するとともに、国際規格のEnegy Star6.0が定める水準のクリアに貢献している。また、力率改善回路(PFC)コントローラと疑似共振回路(QR)コントローラを集積することで、従来比20%の部品点数削減や、電源の小型化にも貢献する。

<新製品の特徴>

(1)PFCコントローラON/OFF設定機能の搭載により、軽負荷時の変換効率改善と待機時の電力削減を実現(図4)

PFCコントローラ ON/OFF設定機能のグラフ
[図4] PFCコントローラ ON/OFF設定機能のグラフ

・2次側の負荷電力をモニターし、その電力に対してPFCコントローラをON/OFFすることで、
特にPFCの必要がない負荷範囲(75W以下)において電源の変換効率の改善に貢献。
・100Wクラスの電源で本ICを使用した場合、待機電力は、弊社評価ボードにて、AC100V時に85mW以下、
AC230V時に190mW以下、Energy Star6.0(米国環境保護庁制定)の要求210mW以下を達成。

(2)ローム独自のPFC出力新制御方式により、世界各国でのAC入力電源に対して高効率を実現(図5)

PFC出力新制御方式のグラフ
[図5] PFC出力新制御方式のグラフ

・世界各国でAC電源の入力範囲は異なるが、従来のPFC ICでは、出力電圧設定が一定であったために、昇圧比が大きい場合(例えば、AC100V入力時にPF出力を400Vとした場合など)、スイッチング損失が大きくなり、効率低下を招いていた。本製品は、PFC出力新制御方式を搭載することにより、AC入力電圧に適したPFC出力電圧を出力することで力率改善回路(PFC)の効率低下を抑制する。
例えば、100Wクラスの電源において、AC100V入力時の効率比較では、PFC出力を固定した場合と比べ、約2%の変換効率の改善が見込まれる。

(3)高効率、低ノイズの有利な疑似共振回路を採用
この方式は、ソフトスイッチングを実現し低EMIの貢献する、スイッチングMOSFETおよび電流検出抵抗が外付けのため自由度が高い電源設計が可能である。またバースト機能を内蔵しており、軽負荷高効率を達成している。

(4)力率改善回路(PFC)コントローラと疑似共振回路(QR)の集積により部品点数を大幅に削減
集積化することで、共通設計部分の部品点数を削減することができ、それぞれに独立した場合と比較して約20%の削減に成功。

3. すぐれた電源製品開発と充実したサポート体制について
電源回路を構成する場合、よいICだけでよい電源が構成できるわけではない。最適な電源回路を構築するには、ICの選定以上に、コンデンサ、コイルやトランス巻き線設計などの受動部品の選定、PCBアートワークなどの多くの設計ノウハウが必要となる。このため、ICを選定すると同等に、そのアプリケーション設計をサポートできるメーカを選ぶことが重要となる。
ロームでは、LSIを開発、販売するだけでなく、お客様の設計をサポートする専任部隊を用意している。ユーザーの要求仕様(出力電圧、出力電流など)に合わせて、最適な電源ツリーを提案可能である。
AC/DCコンバータ、DC/DCコンバータ、そしてMOSFET、Diode, 抵抗などのディスクリート部品と一緒に、トータル的な回路設計サポートをご提供する。(図6)

充実したサポート体制
[図6] 充実したサポート体制

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