【掲載記事】従来のDC電圧可変ドライブを、DC電圧入力のまま高効率PWMドライブに
ロームがHブリッジモータドライバの低消費電力化を促進

ロームがHブリッジモータドライバの低消費電力化を促進

モータは古くから産業、そして生活に広く利用されている動力源であり、初の国産品誕生から100年以上を経た現在でもなお、その応用範囲は広がり続けている。

小型モータの中でもブラシモータは、小型軽量、高効率、低価格、制御が簡単、低電圧駆動、構造がシンプルといった特長から汎用性が高く、様々な機器に使われている。

ロームは、この市場を重要視しており、ブラシモータ用のHブリッジモータドライバの開発に注力し、幅広いラインアップを構築するとともに、電気電子機器の共通課題である高効率と低消費電力化に取り組んでいる。 今回取り上げたHブリッジモータドライバシリーズは、従来からのDC電圧駆動を装いながら内部でPWM駆動に変換することで、高効率と低消費電力化を実現したという。

BD62XXシリーズ Hブリッジモータドライバ
BD62XXシリーズ Hブリッジモータドライバ
Hブリッジモータ制御のレビュー

Hブリッジ回路は、モータに正転、逆転、停止、スタンバイ(空転)の4つの動作をさせるために考案された方法で、その形が「H」に似ていることから「Hブリッジ」と命名されたとされる。

スイッチ
その動作はシンプルで、4つのスイッチを使い、ブラシモータの2本の端子を、(1) 正バイアス(どちらが正とは決まっていないが)にて正転、(2) 逆バイアスにて逆転、(3) 短絡にて停止、(4) 開放にてスタンバイ(空転)に切り替えるものである。

  (1) 正バイアス(とする)    (2) 逆バイアスにて逆転     (3) 短絡にて停止 (4) 開放にてスタンバイ(空転)
正バイアス(とする) 逆バイアスにて逆転 短絡にて停止 開放にてスタンバイ(空転)

スイッチと記したが、実際はトランジスタが利用され、制御信号を受けてオン/オフし、モータドライブに必要な電流を供給する。電流がトランジスタを経由する以上、トランジスタにおける損失を考慮する必要がある。
耐圧などの観点からバイポーラトランジスタが使われているケースが多いが、VCEの飽和電圧=損失電圧は、MOSFETを使った場合の損失(RON×IDS)に比べかなり大きいのは否めない。

MOSFETを使う場合の懸案としては、低オン抵抗(RON)を追求すると昨今の同期整流式DC/DCコンバータのようにNch MOSFETをハイサイド、ローサイドの両方に使いたいのだが、ハイサイドのNch MOSFETを駆動するためにVCCより高い電圧が必要となる(多くはVCCを昇圧する回路を付加する)。
また、Pch/Nch構成では昇圧電圧は不要だが、Pch MOSFETのRONがNchに比べ大きい、または小さいものは割高といったトレードオフがある。

バイポーラトランジスタ
PNPとNPNの組み合わせ
MOSFET
PchとNchの組み合わせ
MOSFET
NchとNchの組み合わせ
 
VCESATの損失が懸案 MOSFET PchとNchの組み合わせ MOSFET NchとNchの組み合わせ 上側NchMOSFETのゲートドライブにはVccより高い電圧が必要!
VCESATの損失が懸案 使い勝手がよく損失も低減
PchのRONが検討事項
損失は最小
上側Nchのドライブ電圧が別途必要
 

駆動方法
モータの駆動と制御は、DCバイアスによる方法と、PWM(パルス幅変調)による方法がある。

以下、ドライバICを使う想定だが、DC電圧駆動の場合は、ICの電源VCCを降圧する形で、一般にモータ駆動用のVREFと呼ばれるDC電圧を作る。基本的にはリニアレギュレータと同じなので、VCC(VIN)とVREF(VOUT)の電圧差にドライブ電流をかけた電力すべてが損失となり、効率と発熱面では不利になる。

一方、PWMはスイッチングレギュレータと考えると分かりやすい。基本的にはVCC電圧をスイッチ(オン/オフ)する時間(パルス幅)を調整して得られる平均電力で駆動し、必要な電力しか取り出さないので効率は高い。また、一般に応答性や制御精度の面で有利と言われている。懸念材料は、PWM信号をどこから得るか、その部品のコストやスペースをどうするかという点だ。

 

PWM駆動の場合は電源VCCから必要な分だけを取り出すので効率が高い。対してVCCからリニアレギュレータ方式でDC駆動用のDC電圧を生成する場合は、VCCのすべてを使いあまった分を捨てて(損失)必要な電圧を得るので一般に効率が悪い。
※1:理論値。実際には効率100%にはならないが、リニアレギュレータ方式より高い効率が期待できる。

 

DC入力で高効率PWM駆動。Hブリッジモータドライバの課題にチャレンジ

ロームのBD62XXシリーズは、前項の課題にチャレンジしたHブリッジモータドライバと言える。以下に特長とメリットを記す。

特長とメリット
・DC電圧入力でPWM駆動 従来のDCバイアス感覚で使用可能、高効率、外部PWM不要
・PWM入力も可能 設計の柔軟性が高い
・Pch/Nch MOSFET構成の出力段 バイポーラトランジスタに比べ損失が小さい、昇圧電圧が不要
・軽貫通電流防止回路内蔵 上と下のMOSFETが同時にオンして大電流が流れるのを防止
・4つの保護回路を搭載 応用機器の安全と信頼性が向上

非常にユニークなのは、「DC電圧入力でPWM駆動」できる点だ。仕組みとしては、VREFピンに従来のDCバイアス駆動のようにDC電圧を印加すると、内部でVREF:VCCの割合のPWM信号に変換が行われ、出力はPWM駆動となる。「効率向上のためにDC駆動からPWMに変更したいが、PWM信号源がない」といった状況には非常にありがたい仕組みである。

また、直接的なPWM入力も可能になっているので、既存のPWM仕様の回路を踏襲しつつBD62XXシリーズのメリットを利用したい場合など、設計の柔軟性は高い。

BD62XXシリーズ ブロック図
 
内蔵のVREF-PWM変換回路により、DC電圧によりPWM駆動が可能。FIN、RINへのロジック入力で動作を選択。PWMのデューティ比は、VREF/VCCとなる。  例:VCC=5V、VREF=3.75V時 オン75%/オフ25%
また、FIN、RIN入力に直接PWMを入力して駆動することとも可能。(右の動作表参照)
VREF-PWM時の場合
FIN RIN  動作
H L 正転
L H 逆転
H H ブレーキ
L L 空転
外部PWM信号入力
FIN RIN  動作
PWM L 正転
L PWM 逆転
H H ブレーキ
L L 空転

Pch/Nch MOSFET構成の出力段トランジスタ(スイッチ)は、Nchのみの構成のように昇圧電圧が不要で、部品削減につながる。
前項では、Pch MOSFETのRONについて触れたが、BD62XXシリーズでは、データシートにおいてハイサイドのPchのRONとローサイドのNchのRONの合算のRONが保証されている。1A品を例にとると合算値1.5Ωが最大値として保証されている。2A品では同様に1.0Ωとなる。この値は、個別のMOSFETほどではないが、このICの機能を考えた場合、十分に小さな値と言える。

信頼性を高める保護機能を充実
実は、Hブリッジモータドライバ回路はディスクリート構成で作ることは可能なのだが、その際に非常に苦慮するのが保護機能である。電流や電圧の他温度などの測定結果をフィーバックして処理を行うアナログフロントエンドとMCUなどの組み合わせが必要になるため、ドライバ回路より複雑かつ多くの部品が必要になるであろう。その点、ICはそういった回路一式を集積することができるので、そのメリットは非常に大きい。

保護機能は以下を搭載している。

 ・貫通電流防止回路(貫通電流に関しては右図参照)
 ・温度保護回路(TSD)
 ・過電流保護回路(OCP)
 ・過電圧保護回路(OVP)
 ・低電圧保護回路(UVLO)

これらは、応用機器の安全と信頼性向上において重要な機能である。
貫通電流のイメージ
 貫通電流のイメージ
スイッチ切り替えの際に、上側と下側
が同時にオンしてしまうと地絡状態になる。
多彩なラインアップで多様なブラシモータをサポート

BD62XXシリーズは、耐圧とチャネル数、そして出力電流のマトリクスになっている。また、大電流シリーズ、高速駆動シリーズといったバリエーションも用意されており、多様なブラシモータとアプリケーションに対応できる。以下は、代表的なものの抜粋なので、関連資料のリンク先を訪ね詳細を確認いただきたい。

   Hブリッジモータドライバ:BD62XXシリーズ
定格電圧
電源電圧
チャンネル数 出力電流
0.5A 1.0A 2.0A
7V
3.0~5.5V
1 BD6210F
BD6210HFP
BD6211F
BD6211HFP
BD6212FP
BD6212HFP
18V
6~15V
1 BD6220F BD6221F BD6222FP
BD6222HFP
2 BD6225FP BD6226FP -
36V
6~32V
1 BD6230F BD6231F
BD6231HFP
BD6232FP
BD6232HFP
2 - BD6236FP
BD6236FM
BD6237FM
   Hブリッジモータドライバ:大電流シリーズ
品名 チャンネル数 電源電圧(V) 出力電流(A) パッケージ
BD62222HFP 1 6~27 2.5 HRP7
BD62321HFP 6~32 3.0
   Hブリッジモータドライバ:高速駆動シリーズ
品名 チャンネル数 電源電圧(V) 出力電流(A) パッケージ
BD65491FV 1 1.8~16 1.2 SSOP-B16
BD65492MUV 2 1.8~16 1.0 VQFN024V4040
BD65494MUV 1 2.0~9 1.0 VQFN016V3030
BD65496MUV 1 1.8~16 1.2 VQFN024V4040

注1:品名のサフィックスはパッケージタイプを示すコード。F:SOP8、FV:SSOP-B16、HFP:HRP7、FP:HSOP25、FM:HSOP-M28、MUV:VQFN
注2:「大電流シリーズ」および「高速駆動シリーズ」は、DC入力電圧でのPWM駆動(内部VREF-PWM変換)機能はもたない。

まとめ

ロームのHブリッジモータドライバ BD62XXシリーズの特長について検証してきた。一言で言うと、「効率と低消費電力化のためにMOSFETスイッチを搭載したPWM制御Hブリッジモータドライバ」となるのだが、DC電圧入力でPWM駆動ができる点は、既存のDCバイアス制御回路の代替をPWM回路の追加なしで実現するといった、非常にユーザ本位な発想を形にしたものであると言える。 今後もシリーズを拡充する方針とのことで、さらなるシリーズの充実を期待したい。

アプリケーションと関連資料

DCブラシモータ用LSI 
ステッピングモータ用LSI
モータ/アクチュエータドライバ用LSI

この記事はインデックスプロのWEBサイトに掲載されました。

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