特集:自動車用半導体デバイス技術
ロームの最新LEDバックライト用ドライバー技術

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 ロームの最新LEDバックライト用ドライバー技術

はじめに

自動車用途のLEDは様々な用途でそれを使用した光源が急速に普及している。LED光源を効率的にかつ最適な駆動方法を行うための技術を持つロームは、リアランプ用LEDドライバー、バックライト用LEDドライバー、ヘッドランプ用LEDドライバーなど様々なラインアップを取り揃えている。今回は、バックライト用LEDドライバーを紹介する。

車載バックライト用LEDドライバーの開発

近年、車載用ディスプレイ分野において有害物質規制に対応するために、水銀を用いるCCFLバックライトからLEDバックライトへの移行が急速に進んでいる。また、メーターパネル・カーナビゲーション・ディスプレイオーディオ・リアエンターテインメントなど、各種車載用モニタの多様化・大型化が進んでいる。これに伴いLED灯数の増加や、高輝度・高調光率への要求が高まってきている。ロームではLED灯数増加に対応するために、高耐圧を実現する昇降圧DC/DCコンバータと、小電力のLEDの多灯駆動可能かつ高い調光率を実現するカレントドライバー回路を1chipに内蔵したLEDドライバーのラインアップを展開している。
ロームが開発しているバックライト用LEDドライバーとして、BD81A34EFV-Mを以下に紹介する。
BD81A34EFV-Mは、大きく分けてDC/DCコンバータ部・カレントドライバー部・保護回路部の3つの機能ブロックで構成されている(図1)。

BD81A34EFV-Mのブロック図
[ 図1 ] BD81A34EFV-Mのブロック図

バックライトの駆動方法としては、まずDC/DCコンバータを駆動し一定の電圧を生成する。生成されたDC/DCコンバータの出力にパネルのLEDアノード側を接続、LEDのカソード側よりLEDドライバーへ定電流をシンクしLEDを点灯させる。小電力の多灯LEDに駆動対応するためにLEDのチャネル数(接続できる列数)は4つとなっている。

LEDドライバーのエラーアンプにより、ICに接続されるLEDのカソード端子(LED1~4端子)の電圧は1.0Vになるように帰還制御される。すなわち、カレントドライバーに接続されているLEDの段数の分、つまりLEDに発生しているVFだけ、DC/DCコンバータ出力をLED端子より高い電位にするべく、DC/DCコンバータのスイッチングDutyを制御している。上記制御により、カレントドライバー部はLED電流を一定にする事が可能となる。パネルの輝度の調整用に、出力の電流をPWM-dimmingする機能がある。外部からのPWM信号の入力に同期して、LED電流のDutyを可変している。さらに、BD81A34EFV-Mは、LEDのショート、オープン故障保護、LEDの地絡保護、DC/DCコンバータ出力過電流・過電圧保護を搭載し、保護回路の充実化よりパネルの信頼性向上に貢献している。

以下、上記DC/DCコンバータ回路・カレントドライバー回路に加え、ローム車載LEDドライバーの特徴である、ちらつき防止回路について順に解説していく。

昇降圧DC/DCコンバータ

車載特有のバッテリ電圧変動や多様化するLED灯数に対して、昇圧方式や降圧方式ではLEDのちらつきやプラットフォーム設計が非常に困難であり、市場要求である高い信頼性と開発期間の短縮のトレードオフを満足することは難しい。よってバッテリ電圧に依存せず、常に安定したDC/DCコンバータ出力電圧を供給できるように、REGSPIC構成という独自の昇降圧方式を採用している。一般的に昇降圧方式で用いられているSEPIC構成に対して、REGSPIC構成のもつメリットを2つ紹介する。

①外付け部品の削減
図2にSEPICとREGSPICの回路構成を示す。図2からわかるように、REGSPIC構成では最も面積占有率の高いと思われるコイルが少なく、小型化と低コスト化を実現できる。またコイルが削減できることでコイル損失分だけ効率を改善することも可能である。

SEPICとREGSPICの回路構成
[ 図2 ] SEPICとREGSPICの回路構成

②高信頼性の実現
図2のSEPIC構成において、C1は出力電圧に対してチャージポンプのように動作するため、Q1にはDC/DCコンバータ出力電圧(VOUT)+バッテリ電圧の耐圧が必要になってくる。一方で、REGSPIC構成ではDC/DCコンバータ出力電圧もしくはバッテリ電圧のどちらか高い方以上の耐圧で良いため、REGSPIC構成の方が低耐圧部品で構成でき、制御が容易になる。
また、Q2は昇降圧の制御用だけでなく、LEDアノードやダイオードなどの外付け部品のGNDショートした場合にバッテリとの経路を遮断するスイッチとしても使用できるため、異常発生時に外付け部品を保護でき、高い信頼性を実現することが可能である。逆にSEPIC構成では、バッテリとの経路を遮断するためにQ3をスイッチ用途だけに使用している。

高調光率のカレントドライバー

車載パネルの高輝度化に伴い、ロームは高調光率のLEDドライバーBD81A34EFV-Mで技術開発を完了している。パネルが高輝度化すると、なぜ高い調光率が必要になるのかを説明する。パネルが高輝度化しても要求される最低輝度のレベルはほぼ変わらない。暗所などで人間の目がストレスを感じない程度の低輝度を出力する場合を考えると、元の輝度(調光率100%)がある程度低ければ、低い調光率でも低輝度の出力が可能であるが、元の輝度が非常に高い近年のパネル仕様の場合、低い輝度出力に高い調光率が必要となる。
BD81A34EFV-Mでは高調光率を実現するため、独自の技術によりカレントドライバーの出力LEDの応答性を上げている。外部からのPWM入力Dutyに応じてLED電流をスイッチング制御している。このとき、PWM信号Lowレベルでカレントドライバー回路OFF、Highレベルでカレントドライバー回路ONとなり、ON/OFF区間の時間比によってLED電流が調整される。入力のPWMと出力の電流が完全に同期し、タイミングが一致するのが理想的であり、それらを実現できれば高輝度が可能となる。実際は、入力のPWM信号から電流が出力するまでには回路遅延が生じており、その遅延のため、その時間幅以内のパルスを生成できなくなっている。
カレントドライバー回路には電流制御用のアンプが搭載されているが、従来のPWM調光方式の場合、カレントドライバー回路がOFF→ONするタイミングで、この内部アンプの起動時間として数μsオーダーの回路遅延が生じていた。市場から要求される調光率が高まるにつれ、この回路遅延が無視できなくなってくる。そこでロームは、アンプ起動時間を極小化したPWM調光回路を搭載し、さらなる高調光率の実現を可能にした。
具体的には、図3にあるように、カレントドライブアンプにLED電流出力用の帰還回路と別経路の帰還回路を用意する。

カレントドライブアンプの帰還回路
[ 図3 ] カレントドライブアンプの帰還回路

これら2つの帰還経路は各SWによって切り替わる。PWM=High(LEDがON)の区間においては、LED電流出力用の帰還回路(図3 帰還回路1)を駆動し、LED電流をLED端子からシンクする。PWM=Low(LEDがOFF)の区間においては、別経路の帰還回路(図3 帰還回路2)を駆動し、内部定電圧VREGより電流を流す。この制御を行うことによって、LED電流はOFFするが、カレントドライブアンプは常に駆動状態となり、PWM=Low→High時にスムーズにLED電流を立ち上げることが可能となる。帰還経路2による電流I2は数μAに設定してあるため、本回路構成による消費電力の増加は殆ど無視できるレベルとなる。
出力とは別の帰還経路の有無によって、PWM信号に対するLED電流の追従性がどう変化するかを比較したデータを図4に示す。

出力と別の帰還回路有無によるLED電流の追従性比較
[ 図4 ] 出力と別の帰還回路有無によるLED電流の追従性比較

別の帰還経路が無い場合、PWM=OFF→ONのタイミングから、LED電流が立ち上がるまでに約10μsの遅延時間が生じている。これに対し、別の帰還経路がある場合、遅延時間は殆ど見られず、最小PWMパルス幅1μsまで追従可能となる。仮に、PWM周波数を100Hzに設定している場合を考えると、1μsのパルス幅であれば10000:1の調光率が実現可能になる。このようにBD81A34EFV-Mは、高調光率を実現し、パネルの高輝度化に貢献している。

LEDちらつきを防止するためのDC/DCコンバータ出力電圧ディスチャージ回路

DC/DCコンバータ出力をLEDアノードとしてLED制御する場合に問題となるのが、DC/DCコンバータ のOFF状態から再起動する場合に見られるLEDのちらつき現象である。
LEDドライバーにイネーブルOFF信号の入力や、異常検知時の保護動作などでDC/DCコンバータのスイッチング出力がOFFした場合、出力容量に電荷が残ることになる。残留電荷はDC/DCコンバータ出力電圧をフィードバックするための抵抗分圧回路(図5 ROVP1・ROVP2)を通って放電される。しかし、放電時間が数秒と非常に長いため、この電荷を残した状態での再起動という状況を想定しなければならない。この場合、残留電荷はLED素子を通って放電し、その後通常の起動制御が行われる。この瞬間的な放電が、LEDのちらつきとなって現れる。

LEDちらつきの防止回路
[ 図5 ] LEDちらつきの防止回路

従来では、このちらつきを防止するために以下2つの方法のどちらかを選択していた。一つ目は図5-1のように、DC/DCコンバータ出力に外付けスイッチ素子を追加し、回路OFF時に強制ディスチャージする方法である。これにより再起動時のちらつきは回避されるが、スイッチ素子や制限抵抗など、部品点数の増加につながってしまう。
二つ目は図5-2のように、過電圧保護用抵抗値を下げる方法である。抵抗分圧回路の抵抗値を下げて残留電荷のディスチャージを促す。この方法の場合、通常動作時の消費電力増加が問題となる。
そこで、BD81A34EFV-Mでは図5-3のように、ちらつき防止用出力ディスチャージ回路をIC内に内蔵した。この回路により、数msオーダーで出力電荷の放電が完了する。さらに外付け部品点数の増加や消費電力の増加を伴わない。例えば、BD81A34EFV-Mの外付け部品推奨値であるCout=20uF、ROVP1=360kΩ、ROVP2=30kΩの場合、DC/DCコンバータ出力電圧(Vout)を30Vとすると、

出力ディスチャージ回路なし:放電時間=約7.8s
出力ディスチャージ回路あり:放電時間=約1.5ms

となり、ディスチャージ時間の大幅な短縮と、それによるLEDちらつきの防止が可能となっている。

今後の展望

今後はさらなる高機能化に向け、通信機能内蔵や、多チャンネルLEDドライバーの開発を進めていく。通信機能内蔵により、各モデルによって異なるLED電流や電圧設定、保護機能などを通信で設定するができ、モデルごとに駆動回路を作成することなくプラットフォーム化を進めることが可能となる。さらに、Diagnostic(診断)機能を搭載することにより、LED電流や異常状態などをリアルタイムに監視しマイコン側にフィードバックすることが可能となり、状況に応じた制御を実施し、機器の安全性を実現できる。また、多チャンネル化によって各種ランプ (DRL、ターンランプ、ポジションランプなど) を動作する駆動回路を1つのICに集約することが可能となり、必要なチャネル数にフレキシブルに対応できることができる。ロームはお客様のニーズに合わせた高性能ICを開発し、自動車の省エネ・高機能化に貢献できるICを開発していく。

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