【掲載記事】「適材適所」が設計とサプライチェーンの能率を高めTime-to-Marketを短縮
ロームの新戦略 : 電源ソリューション「DC/DC MATRIXファミリ」

「適材適所」が設計とサプライチェーンの能率を高めTime-ToMarketを短縮 ロームの新戦略 : 電源ソリューション「DC/DC MATRIXファミリ」

ロームはDC/DCコンバータICの新戦略として「DC/DC MATRIXファミリ」を展開する。その第一弾としてパワートランジスタを内蔵した同期整流型の降圧コンバータ「BD9xx」シリーズのリリースを開始した。

「DC/DC MATRIXファミリ」のコンセプトは、「適材適所」である。高性能のDC/DCコンバータICをベースに、入力電圧範囲や出力電流などの組み合わせによるピン互換機能マトリクスを構築し、お客様の要求仕様にジャストフィットする電源ソリューションを提供する。

ここでは、「適材適所」の大きな利点と「DC/DC MATRIXファミリ」の性能面での特徴を検証する。

BD9E102FJを使った24Vin/5Vout、1A Iout回路

「適材適所」のメリットは非常に大きい

「適材適所」、つまり使用条件にジャストフィットする電源をアプリケーションに実装することは非常に重要である。特に昨今の「グリーン」要求に代表される省電力化や省スペース要求に対応するには、アプリケーション回路の熟考だけではなく、電源自体の効率を最大限に高めつつ、外形寸法を最小限にするための最適化が必要となる。さらにサプライチェーン・マネジメントの観点では、購入先管理、部材の入手性を始め、「必要になったものをかき集める」時代は終わりを迎え、設計から市場投入までの能率アップに対する「適材適所」の貢献度は高い。

<設計の観点から>   <サプライチェーンの観点から>
大は小を…兼ねない

たとえば5Aの電源は500mAを必要とする回路の電源として利用できるが、電源の効率はおおよそ最大出力電流近辺で最大となり、低負荷時に低下することは周知の課題である。つまり、大が小を供給する条件は、効率的には不利となる。
また、5A仕様の電源は5Aに対応する部品が必要になる。おおよそ制御ICの価格は上がり、許容電流の高いコンデンサやインダクタのコストも上がり、サイズも大きくなってしまう。

  部材購入先の数は少ない方が能率的

調達担当者にすれば、1つの製品を構成する部品の発注先が多岐にわたるのは、作業や管理が煩雑になり、コストアップの一要因でもあるので極力避けたいと考えるのは当然である。ワンストップ・ショップの台頭が目覚ましいのも伺える。したがって、調達側の能率向上を設計者にも加味してもらうことは重要である。しかし、技術面とサプライチェーンの両面を満足するメーカは思いのほか多くない。

電源仕様が決まるのはおおよそ最後

電源仕様は回路の要求電力が決まらないと設計を開始できない。さらに、市場投入時期が決まっているのでかけられる時間が少ない。ピン互換/実装互換で出力電流や入力電圧のバリエーションのあるICなら、基本設計を先に済ませ、仕様決定後に「適材」で最適化を行う方法で時間短縮ができる。

  安定供給はもちろん柔軟な対応も重要

サプライチェーン・マネジメントにおいて、納期が的確かつ安定している供給先を選ぶことは最重要課題である。この点では、やはり設計や製造の拠点もしくは管理部門が国内にあり、意思疎通が容易なことが望ましいのは事実である。また、急な変更や代替が必要になった時に、そのメーカ自体で対応できることも重要だ。

「DC/DC MATRIXファミリ」の特長

「DC/DC MATRIXファミリ」は、基本的にパワートランジスタを内蔵した同期整流式のシングル出力で、入力電圧範囲、出力電流、スイッチング周波数のマトリクスから適材を選ぶことが可能である。 BD9Axシリーズを例にとると、BD9A100MUVは1A出力でBD9A300MUVは3A、BD9A600MUVが6Aとなり、パッケージはすべてVQFN016V3030(3.0mm×3.0mm×1.0mm)でピン配置も同じである(一覧表参照)。もちろん外付け部品の定数は若干異なるが、負荷電流の変更により電源ICを変更する場合など、この互換性により設計者の負担は大きく軽減される。

性能面では、同期整流式の採用により最大効率は91%~95%(品種により異なる)と高く、SLLM(simple light load mode)もしくはDeep-SLLMと呼ぶ軽負荷時にも高効率を維持する機能を搭載したタイプも用意されている。また、可変ソフト・スタート、過電流保護、サーマル・シャットダウン、UVLOなどの保護機能が内蔵されており、外付け部品が少なく設計がシンプルで省スペースである。以下に代表的な2品種を紹介する。

2.7V~5.5V入力、MOSFET内蔵1ch 同期整流 降圧DC/DCコンバータ BD9B300MUV/BD9B600MUV (3A/6A)

◆業界最高クラスの効率を実現

・効率93%(VIN 5V→VOUT 2.5V, IO = 1A時)
・軽負荷時Io=4mA~2Aの広範囲で効率90%以上

◆省スペース、外付け部品削減で低コスト化

・MOSFET内蔵と同期整流にて外付けFETとダイオード不要
・位相補償回路のコンデンサと抵抗が不要
・スイッチング周波数2MHz時のインダクタは0.47µHと小型

◆ 業界最高クラスの負荷応答特性を実現

・固定オンタイム制御により応答特性を高速化
・システムの安定化を向上

<アプリケーション回路例>
アプリケーション回路例

■仕様

・入力電圧範囲:2.9V~5.5V
・出力電圧範囲:0.8V~(VIN×0.8)V
・基準電圧:0.8V±1.0%
・出力電流:3A(BD9B300)、6A(BD9B600)
・Deep-SLLM制御方式(軽負荷モード)
・自己消費電流 35μA(typ.)
・過電流保護、サーマル・シャットダウン、UVLO
・可変ソフト・スタート
・裏面放熱パッケージで小型:

VQFN016V3030 パッケージ <効率曲線>
効率曲線

■アプリケーション

DSP、FPGA、MCUなどの降圧電源として最適 

・ラップトップPC / タブレットPC
・サーバ

・ストレージ機器(HDD / SSD)
・分散型電源システム

・アミューズメント機器
・二次側電源

・液晶TV
・プリンタ機器

4.5V~18V入力、MOSFET内蔵1ch 同期整流 降圧DC/DCコンバータ BD9C301FJ/BD9C401EFJ (3A/4A)

◆ 広い入力電圧範囲

・5V、12V系共に使用可能
・TVやSTB、アダプタで要望の多い入力耐圧20Vに対応

◆ 省スペース、外付け部品削減で低コスト化

・MOSFET内蔵と同期整流にて外付けFETとダイオード不要
・PchハイサイドMOSFETにてブートストラップ用コンデンサ不要
・スイッチング周波数500kHz時のインダクタは0.47µHと小型

◆ 電流モード制御

・高速過渡応答
・位相補償値はCOMP端子で容易に設定可能

■ 仕様

・入力電圧範囲:4.5V~18V(耐圧20V)
・出力電圧範囲:0.8V~(VINx0.7)V
・基準電圧:0.8V±1.0%
・出力電流:3.0A(BD9C301)、4.0A(BD9C401)
・パルス毎の過電流保護機能(OCP)
・短絡保護、過熱保護(TSD)、低電圧誤動作防止(UVLO)
・ソフト・スタート機能
・小型パッケージ

■ アプリケーション

・液晶TV
・DVD/Blu-rayプレーヤ・レコーダ
・セットトップボックス
・ブロードバンド、通信機器
・アミューズメント機器

<アプリケーション回路例>
アプリケーション回路例
<効率曲線>
効率曲線
BD9C301FJ SOP-J8 BD9C401EFJ HTSOP-J8

「DC/DC MATRIXファミリ」のラインナップ

DC/DC MATRIXファミリ

「DC/DC MATRIXファミリ」は現在、下表の「BD9xxシリーズ」のラインナップがリリースされている(一部近日リリース)。広範な製品群は品番によりわかりやすく分類されている。

現在のラインナップは、「BD」に続く「9」で降圧であることがわかり、続くアルファベットは最大入力定格電圧、そして次の数字は出力電流を表している。

複雑かつ意味がわからない数字とアルファベットの組み合わせによる品番が多い中、ユーザフレンドリな品番設定と言える。

品 番 lout Vin Vout SW 周波数 モード SLLM パッケージ
 BD9Axシリーズ              
  BD9A100MUV 1A 2.7V~5.5V 0.8V~Vin×0.7V 1MHz 電流 VQFN016V3030
  BD9A300MUV 3A 2.7V~5.5V 0.8V~Vin×0.7V 1MHz 電流 VQFN016V3030
  BD9A600MUV 6A 2.7V~5.5V 0.8V~Vin×0.7V 1MHz 電流 VQFN016V3030
 BD9Bxシリーズ              
  BD9B300MUV 3A 2.7V~5.5V 0.8V~Vin×0.8V 2MHz/1MHz オンタイム *1 VQFN016V3030
  BD9B600MUV 6A 2.7V~5.5V 0.8V~Vin×0.8V 2MHz/1MHz オンタイム *1 VQFN016V3030
 BD9Cxシリーズ              
  BD9C301FJ 3A 4.5V~18V 0.8V~Vin×0.7V 500kHz 電流 SOP-J8
  BD9C401EFJ 4A 4.5V~18V 0.8V~Vin×0.7V 500kHz 電流 HTSOP-J8
  BD9C501EFJ 5A 4.5V~18V 0.8V~Vin×0.7V 500kHz 電流 HTSOP-J8
  BD9C601EFJ 6A 4.5V~18V 0.8V~Vin×0.7V 500kHz 電流 HTSOP-J8
 BD9Dxシリーズ              
  BD9D320EFJ 3A 4.5V~18V 0.765V~7V 700kHz オンタイム HTSOP-J8
  BD9D321EFJ 3A 4.5V~18V 0.9V~7V 700kHz オンタイム HTSOP-J8
 BD9Exシリーズ              
  BD9E100FJ-LBG 1A 7V~36V 1.0V~Vin×0.7V 1MHz  電流 SOP-J8
  BD9E101FJ-LBG 1A 7V~36V 1.0V~Vin×0.7V 570kHz  電流 SOP-J8
  BD9E102FJ 1A 7V~26V 1.0V~Vin×0.7V 570kHz 電流 SOP-J8
  BD9E300EFJ-LB 2.5A 7V~36V 1.0V~Vin×0.7V 1MHz 電流 HTSOP-J8
  BD9E301EFJ-LB 2.5A 7V~36V 1.0V~Vin×0.7V 570kHz 電流 HTSOP-J8
 BD9Gxシリーズ              
  BD9G101G *2 0.5A 6V~42V 1.0V~Vin×0.7V 1.5MHz 電流 SSOP6
*1: Deep SLLM
*2:ダイオード整流型
パッケージ寸法(W×L×H)
VQFN016V3030
HTSOP-J8
:3.0mm×3.0mm×1.0mm
:4.9mm×6.0mm×1.0mm
SOP-J8
SSOP6
:4.9mm×6.0mm×1.65mm
:2.9mm×2.8mm×1.25mm

まとめ

ロームの新戦略である「DC/DC MATRIXファミリ」は、「適材適所」のメリットと汎用性の高い高性能なDC/DCコンバータのプロダクト・マトリクスとなっている。このマトリクスによって得られる数々のメリットは上述のとおりであるが、ロームという優れたアナログのテクノロジーをもち、すでに多くの電源ICでの実績をもつ国産メーカが、サプライチェーン全体に貢献する広範なラインナップを構築し提供することから得られるメリットは非常に大きい。特に多くの設計リソースを必要とするスイッチング電源の設計には、技術的メリット、設計のサポート、そして選択肢の広さと供給の安定性は欠かすことができない。

アプリケーションと関連資料

ロームの全同期整流式DC/DCコンバータ一覧    
形名の構成
●アプリケーションノート: 降圧コンバータICのコンデンサ計算
●アプリケーションノート: 降圧コンバータICのインダクタ計算
●アプリケーションノート: 降圧コンバータICの出力電圧設定用抵抗値早見表
●アプリケーションノート: 熱抵抗について
●アプリケーションノート: 降圧コンバータのPCBレイアウト手法
●アプリケーションノート: 降圧コンバータに使用する積層セラミックコンデンサの留意点

この記事はインデックスプロのWEBサイトに掲載されました。

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