特集:高周波デバイスとモジュール技術
920MHz帯 特定小電力無線通信モジュール

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920MHz 帯 特定小電力無線通信

さまざまな無線通信規格に対応するロームグループ

ロームグループでは、無線LANをはじめ、BluetoothやZigBee、そして今年7月に日本で解放された920MHz帯 特定小電力無線など、さまざまな無線通信技術を有している。
 ロームとラピスセミコンダクタの技術を融合させることにより、無線通信用LSIからモジュール化まで一貫して行えることが強みで、ユーザーニーズに合わせて、それぞれの通信規格の電波特性を生かした通信LSI、モジュールを提供している。
 特に無線通信用LSIにおいては、ラピスセミコンダクタが得意とする低消費RF-CMOS技術と高性能MODEM技術を用い、業界最高水準の低消費電力と無線性能を実現していることも大きな特徴である。
 今回は、幅広い無線通信用LSI、モジュールの中から「920MHz帯 特定小電力無線通信モジュール」と「無線LANモジュール」について紹介する。

1.はじめに

近年、あらゆる分野で省エネの意識が高まっており、各国で効率的なエネルギーの利用に向けた取り組みが拡大している。中でも住宅では、機器同士をネットワークでつなぎ、電力需給のモニタリングを行うことで、機器を効率的に制御するHEMS(Home Energy Management System)に注目が集まりつつある。エネルギー管理に必要な電力の「見える化」のためには、スマートタップなどが度々使用され、さらなるエネルギーの管理・制御システムへの期待が高まることが予想される。
こうした中、今月7月に開放された920 MHz帯は、既存の無線との電波干渉を起こしにくく、低消費電力でありながら長距離のデータ通信が可能な電波帯だ。表は2.4GHz帯のZigBeeと無線LAN、そして同じ特定小電力無線の400MHz帯と920MHz帯の特性をまとめたものである。920MHzはZigBeeや無線LANが使用する2.4GHzに比べて電波の回り込み特性に優れているため、壁や障害物がある場所でも安定した通信を確保することができる。住宅の中で使用する場合、電子レンジやワイヤレスマウスなどの無線機器は2.4GHzを使用しており、非常に混雑している状況である。それに比べ920MHz帯は電波干渉を起こしにくい。また、同じ特定小電力無線である400MHz帯は占有帯域幅が狭いため、通信速度が遅い。以上より920MHz帯はHEMSに最適な周波数帯であると言える(図1)。
また、900MHz帯は既にアメリカ、中国、韓国、オーストラリアで使用されており、欧州でも開放が検討されるなど、世界で共通して使用される周波数帯となりつつあり、今後もますます市場が拡大されると考えられている。

無線性能比較
[表1]無線性能比較
 
HEMSにおける無線方式比較
[図1]HEMSにおける無線方式比較

2.ロームの920MHz帯特定小電力無線モジュール技術

<低消費電力>
ロームでは、HEMS向けに920MHz帯特定小電力無線モジュール「BP3596」を開発した。大きな特徴は、ローパワーを強みとするロームグループ ラピスセミコンダクタの無線通信LSI「ML7396B」を使用することで実現した、業界トップクラスの低消費電力である。スマートタップや家電製品など、あらゆる機器に搭載でき、低消費での無線ネットワークが構築できる。センサー機器など、AC電源が供給されにくい場所に設置するような機器にとって、低消費電力であることは非常に重要である。電池駆動の機器は電池交換にかかるコストが大きいため、約10年間は電池交換無しで動作する必要があると言われている。電池容量にもよるが、ローム製920MHz帯特定小電力無線モジュールはその優れた低消費性能により、電池駆動の機器であっても電池交換無しで10年間もの使用が可能である。

<アンテナ内蔵>
チップアンテナを内蔵しており、高周波設計をすることなく使用できる。金属筺体の機器に組み込む場合、金属ケースが電波シールドとして働き通信できなくなるが、アンテナコネクタを準備しており、アンテナコネクタに外付けのアンテナを接続する事で通信を確保することができる。

<電波法認証取得済み>
既に国内電波法認証を取得しているため、無線通信試験を行うことなく、セットに組み込み、すぐに無線設備として使用できる。高周波回路の設計ノウハウや無線特性測定を行う装置がないお客様でも簡単に使用できる。

<シリアルナンバー>
ネットワークで使用する16桁のシリアルナンバーをラベルで標記している。シリアルナンバーと一緒にQRコードも標印しており、QRコードにはシリアルナンバー情報をもたせている。セットに組み込む際、QRコードを読み込んでラベルを出力することで簡単に筺体にシリアルナンバーを明記することができる。

※QRコードはデンソーウェーブの登録商標です。

<無線設定値調整済み>
モジュールにはEEPROMを内蔵しており、シリアルナンバーだけでなく出力パワーの調整値なども書き込んでいる。そのため無線機の煩わしい調整を行わなくても使用することができる。

BP3596外形寸法図
[図2]BP3596外形寸法図

<ハードウェアの簡単な接続>
RF制御用マイコンとRFICとの接続にはSPI(5pin)、EEPROMはI2C(2pin)、 GPIO、で接続される。RF制御用マイコンとの結線図を図3に示す。このように、少ない配線数で簡単に接続することができる。

RF制御用マイコン結線図
[図3]RF制御用マイコン結線図

<各国の電波帯に対応> 900MHz帯は世界各国で通用できる帯域として期待されている。アメリカ、中国、韓国、オーストラリアでは既に900MHz帯を免許不要のSub-GHz帯域とし、周波数割り当ての国際協調化が進んでいる。ローム製のBP3596はモジュールの調整を行うことで、各国の電波帯への対応が可能である(各国電波規格については別途相談)。

3.BP3596の使用方法

<スタック構成例>
BP3596は、物理層までをカバーしたモジュールである。そのため使用する場合は、MAC層より上位のプロトコルを準備して頂くことになる。家電に組み込む場合のスタック構成例を図4に表している。
ECHONET Lite対応の場合は図4のようなスタック構成例になり、BP3596とマイコンボードを介してセット機器に接続している。このようなスタックを準備すれば、HOST側の本体の変更を最小限にして920MHz帯特定小電力無線を組み込むことが可能である。もちろん直接HOSTに格納する形でも使用できる。

スタック構成例
[図4]スタック構成例

<HEMSの実現>
実際の住宅での使用イメージを図5に示している。HEMSの大きな役割である電力需給の「見える化」と、「効率的な制御」を実現している。家の中の各端末へ920MHz帯特定小電力無線モジュールを組み込み、特定小電力無線でネットワーク化を行う。各機器の電力需給状況をHome Gate Way へ情報集約させる。モニター画面に需給状況を表示し電力の「見える化」を行い、さらにHome Gate Wayから一括で管理する事で効率的に機器を制御する。
さらにHome Gate Wayから無線LANを経由し、インターネット経由で電力状況を確認することも可能である。

HEMS構成例
[図5]HEMS構成例

4.今後のモジュール開発

ロームで既に量産している無線LANモジュールのノウハウを活かして無線LANとAPI互換のプロトコルスタックを内蔵した特定小電力無線モジュールの開発も進めている(図6)。これによって今まで無線LANの開発を行った事があるお客様が、そのリソースを使うことで、開発スピードを大幅に短縮することができる。

スタック内蔵タイプ特小無線モジュールのコンセプトプラン
[図6]スタック内蔵タイプ特小無線モジュールのコンセプトプラン

今後もロームではお客様がより使いやすいモジュールを提供し、ローム製のセンサーと920MHz帯特定小電力無線を組み合わせることで、省エネだけでなくより便利で快適、安心で安全な生活を提供できるような製品を開発し、世の中に貢献していく。

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