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限界に挑戦 ロームとVenturi、電気自動車の未来に向けて

09/22/2017

今年7月、アメリカのニューヨークで開催されたFIAフォーミュラEチャンピオンシップは、現地で温かい歓迎を受けました。首都圏からのファン同様、米国内中からのファンがスタンドにつめかけ、スリル満点で力強く、環境にやさしいレースの雰囲気を感じました。

このレースを楽しむためにたくさんの群衆がいました。7月15-16のブルックリン・レースは、ニューヨークでの初開催で、ローワー・マンハッタンとアメリカを象徴する自由の女神を背景にレースが展開されました。

フォーミュラEレースでは、リチウムイオン電池を搭載した電気自動車を使用しているため、高効率かつ静音で、環境にも優しく、最先端の技術やトップエンターテイメントの素晴らしい一例といえるでしょう。フォーミュラEとそのチームは、持続可能な未来のために電気モビリティ開発を推進しています。
 


当然、このチャンピオンシップレースは世界クラスのイノベーターを惹きつけ、スポーツとテクノロジーの連携に拍車をかけました。フォーミュラEチームのひとつであるVenturiは、2016年10月に香港で開催された2016年/2017シーズンの開幕戦で、日本の大手半導体メーカーのロームがオフィシャル・テクノロジー・パートナーシップになったと発表しました。

この提携の理由と電気自動車分野への期待について、Venturiチームにインタビューを行いました。 Venturi Automobilesの社長兼CEOのGildo Pallanca Pastor氏は、長い間、電気モビリティ開発に投資してきました。そして、フォーミュラEチャンピオンシップを含む現代の技術革新が、電気自動車の未来の先駆けになると考えています。

「2000年、15年間車をレースに参加させた後、私は自身のスポーツカーを作るという考えでVenturiを買いました。最高のものをつくるためには、今までで最高のモーター、つまり電動モーターを車に搭載しなければなりませんでした。」と彼は語ります。

「フォーミュラEは、1999年に当社経営者のビジョンの一部になりました。彼は、電気自動車を素晴らしいレースに使用でき、非常に優れたチャレンジができるAlejandro Agag氏(フォーミュラEホールディングスのCEO)に会いに行きました。」とつけ加えました。

フォーミュラEのマシンには、28kWhの駆動力を持つバッテリが搭載されており、車の重量を考慮しながら、車の走行距離を向上させるために、いかにエネルギーを効果的に使用するかが各チームの課題となっています。
 


これに対し、ロームは、Venturiの車をより小さく、より強く、より速くするため、最先端技術を使用しています。同社は、高温で動作し、スイッチング損失を低減して高電圧および大電流に耐えることができる画期的な材料である炭化ケイ素(SiC)を活用したソリューションを駆使しました。

「ロームのおかげで、軽量かつ容積を最小限に抑えたインバータを組み込むために、最高の部品を使用するという目標を達成することができました。Venturiのマシンは、今日の課題に向けた車です。他のレースカーはこれほど進歩していません。我々は、ロームの技術を利用することができて非常に嬉しく思います。このマシンは唯一無二です。」とGildo氏はつけくわえます。

Venturiの最高技術責任者であるM.Franck Baldet氏も、「ロームと働くことで、我々は、電子部品に情熱を注ぎ、電気自動車向けに最適な製品をつくることができるエンジニアと働く機会を得ることができました。それは非常に素晴らしいことです。」と賛同しています。
 


Franck氏は、フォーミュラEが成功した理由を次の通り述べています。「エネルギーの最適化とラップタイムがすべてです。ロームとのパートナーシップにより、Venturiのドライバーは、新しいモジュールでどれほどのエネルギーを得るかを簡単に数値化し、さらにラップタイムを短縮しました。」

効率を高めつつ車体重量や回転慣性を低減するのに加えて、ロームのSiC技術より、冷却機構も小型化することができ、車の重量をさらに低減します。

シーズン3は、7月30日にカナダ・モントリオールで閉幕しました。Venturiは5月に開催されたモナコのスーパー・ポールとレース結果の両方で5位となりました。

しかし、シーズン4用の第1世代マシンとシーズン5用の第2世代マシンのテストは現在も行われており、休んでいる暇はありません。Venturiは、これらマシンの改善は、ロームが提供する最先端なSiC技術なしには実現できないと考えています。
 


「VenturiフォーミュラEチームをトップに導くためには、ロームとの協力が不可欠です。」とFranck氏は言います。

Venturi側では、フォーミュラEでの可能性を高めるために、電気自動車の限界をテストする際に集められたノウハウを活かす予定です。

016年9月、VenturiのBuckeye Bullet 3は、ユタ州ボンネビルの敷地内で、341.4 mphの素晴らしい走行速度を記録し、電気自動車の世界記録を破りました。同社はまた、3年間で、南極の科学者に以前は範囲外だった研究ゾーンへアクセスさせることで、-50℃で操作できるゼロエミッション車のThe Antarcticaを開発しました。

しかし、最終的に、Venturiは、電気自動車の開発と導入における社会的変化をロームとのパートナーシップが推進することを期待しています。「フォーミュラEは技術を加速させるチャンピオンシップです。」とFranck氏は説明します。「電気自動車業界が4年間で行っていることを、私たちは1年足らずで進めています。私たちは、高水準の部品を備えた次世代の電気自動車を設計、テスト、走行することができます。そして、電気自動車技術の力は、トラック上から素早く簡単に、道路上に転換されていくでしょう。」