世界初!"フルSiC"パワーモジュールを量産開始
スイッチング損失を85%低減し、産業機器等の電力損失を大幅に削減

発表日:2012-03-22

製品写真

<要旨>

半導体メーカーのローム株式会社(本社:京都市)は、内蔵するパワー半導体素子を全てSiC(シリコンカーバイド:炭化ケイ素)で構成した"フルSiC"パワーモジュール(定格1200V/100A)の量産を開始します。
産業機器や太陽電池などで電力変換を担うインバータ、コンバータに組み込むことで、一般的なSi(シリコン)製のIGBTモジュールに比べて、下記のような優位点があり、世界のエネルギーや資源など地球環境問題にも大きく貢献します。
●スイッチング損失を85%以上低減。
●従来の400AクラスのSi-IGBTモジュールを置き換えた場合、体積を約50%削減
●低損失なため熱の発生が少なく、冷却装置も小さくすることができるので、機器全体の小型化が可能
本製品は、ローム本社工場(京都市)で3月下旬から量産・出荷する予定です。

 

<背景>

近年、産業機器や太陽電池、電気自動車、鉄道などパワーエレクトロニクスの分野では、Siデバイスよりも電力変換時の損失が少なく、材料物性に優れたSiCデバイス/モジュールの実用化が切望されています。
従来のSi半導体を全てSiCに置き換えた場合の省エネ効果は日本国内だけで原発4基分※2に相当するとの試算も出ており、各社、研究開発を強化しています。こうした中、ロームでは、2010年に世界に先駆けてSiC-SBDやSiC-MOSFETといったSiCデバイスの量産に成功、業界をリードしてまいりました。
一方、搭載されるパワーデバイスを全てSiからSiCに変えた"フルSiC" パワーモジュールにおいては、長年世界中のメーカーで試作が進められてきましたが、信頼性の面で課題が多く、量産化には至っていませんでした。

モーター制御と電力変換の効率化に大きく貢献するSiCモジュールの量産が劇的な省エネ効果を生む

※1:ローム調べ(2012年3月22日現在)
※2:エンジニアリング振興協会調べ:2020年時点で日本国内主要分野でSiCパワーデバイスが導入された場合
        (100万kW級原発1基=8.8TWh/年として試算)

 

<新製品の詳細>

今回、ロームでは、独自の欠陥抑制技術やスクリーニング法を開発することで信頼性を確保。また、SiC特有の1700℃に及ぶ高温プロセスでの特性劣化を抑制する技術などを開発し、世界初の"フルSiC"パワーモジュールの量産体制を確立しました。
最先端のSiC-SBDとSiC-MOSFETのペアを2素子搭載し、従来のSi-IGBTモジュールに比べて電力変換時の損失を85%以上低減することができます。また、IGBTモジュールに比べ10倍以上となる100kHz以上の高周波動作を実現。定格電流は100Aですが、高速スイッチングと低損失化により、定格電流200~400AのSi-IGBTモジュールを置き換えることが可能です。
さらに設計及びプロセスの改善により、放熱性の良いモジュール開発にも成功。従来の400AクラスのSi-IGBTモジュールを置き換えた場合、体積を約50%削減することができます。低損失なため熱の発生が少なく、外付けの冷却装置も小さくすることができるので、機器全体の小型化にも大きく貢献します。

ロームでは、SiCをはじめとしたパワーデバイス事業を成長戦略の一つと位置付けており、今後もさらなる高耐圧化、大電流化を実現したSiCデバイス/モジュールのラインアップを強化するとともに、SiC トレンチMOSFET やSiC -IPM(インテリジェント・パワー・モジュール)など、SiC 関連製品のラインアップ拡充、量産化を進めてまいります。

<特長>

1) スイッチング損失を85%低減
最先端のSiC-SBDとSiC-MOSFETを搭載したフルSiCモジュールの実現により、従来のSi-IGBTに比べて、スイッチング損失を85%低減することができます。
スイッチング損失を85%低減

 

2) 小型・低背のパッケージを実現
設計及びプロセスの改善により、放熱性の 良いモジュール開発にも成功。機器の小型化 要求にも大きく貢献します。

小型・低背のパッケージを実現

<回路図>

回路図

 

<用語説明>

  1. IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistorの略)
    絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ。ゲートにMOSFETを組み込んだバイポーラ・トランジスタ。
  2. MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistorの略)
    金属-酸化物-半導体電界効果トランジスタのことで、FETの中では最も一般的に使用されている構造である。
    スイッチング素子として使われる。
  3. SBD(ショットキー バリア ダイオードSchottky Barrier Diode の略)
    金属と半導体を接触させることでショットキー接合が形成され、整流性(ダイオード特性)が得られることを利用したダイオード。
    少数キャリア蓄積効果が無く高速性に優れているという特徴を持つ。

 

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