ロームとAPEIが共同で高速・大電流(1000A級)のSiCトレンチMOSモジュールを開発!
発表日:2011.10.04
半導体メーカーのローム株式会社(本社:京都市)はこのほど、EV、HEV車や産業機器向けに、SiCトレンチMOSを搭載した高速・大電流モジュール「APEI HT2000」をパワーシステムやパワーパッケージで技術を持つArkansas Power Electronics International(APEI)社と共同で開発しました。このモジュールでは従来のSiモジュールのデザインを変え、SiCデバイスの特長を最大限に活かすために電気的・機械的特性を大幅に改善することで、超小型化、軽量化、高効率化を同時に実現しSiCモジュールの普及にむけて大きく前進しました。このモジュールはローム開発のSiCトレンチMOSを合計で16個搭載し600V/1000Aの動作を確認し、Si-IGBTでは実現不可能な数十nsの高速スイッチングスピードも実現しました。さらにこのモジュールは1200Vクラスまでの搭載も可能です。また250℃の高温動作も可能となりました。これらの特長により従来のSi-IGBTモジュールだけでなく現在盛んに開発が行われているSiCモジュールの中でも電気的にも機械的にも優れたモジュールの開発に成功しました。このモジュールは特殊用途向けに2012年からサンプル出荷を開始し、3〜4年後の実用化を目指します。
近年、急速に発展しているハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)などに代表されるパワーエレクトニクスの分野では、モジュールの更なるハイパワー化や高効率化、さらに高温駆動化などが求められています。従来の材料であるSiではこれらの課題をクリアすることができませんでしたが、材料物性の優れたSiCを用いることでこれらの要求に応えることが可能となってきました。このためパワーエレクトロニクスの市場もSiモジュールから高効率のSiCモジュールが求められてきています。
これまでロームで開発を行ってきた超低抵抗(約2mΩ・cm2)のSiCトレンチMOSFETは、1チップで100A級の電流を流すことが可能でしたが、今回さらにMOSFETのゲート容量の低減に成功し、既存のSiC-DMOSに比べ50%、ロームの従来のSiCトレンチMOSと比較しても30%のスイッチングスピードの高速化が実現可能になりました。しかし、従来のモジュールでは、デバイスから発生する熱を放熱させてデバイスの動作温度を保つために、モジュール面積を大きくする必要があり、その為モジュールの寄生インダクタンスを増大してしまう原因になっていました。このためSiCトレンチMOSを搭載しても、その特長を活かすことがモジュールの制限によってできませんでした。そこで今回APEIは、モジュールの面積を小型化し、さらにレイアウトを最適化することで、寄生インダクタンスを大幅に低減したモジュールを開発しました。また、このモジュールにトレンチMOSを搭載することで1000A級レベルの大電流を流すことができ、従来のSi-IGBTモジュールに比べ、オン抵抗を半分にすることが可能となりました。さらにスイッチング時間が数十nsの超高速動作が可能で、これによりSi-IGBTに比べスイッチング損失を3分の1に低減することに成功しました。加えて、使用する材料を高機能材料に変更することにより、モジュールの面積で30%の小型化を実現し、さらにSi-IGBTでは実現不可能な高温(250℃)駆動も同時に可能となりました。さらに端子の接続方法によりハーフブリッジ、フルブリッジ、シリーズでの選択使用が可能です。またロームが開発するすべてのSiCデバイスを搭載可能で、お客様の要求する仕様に合わせた設計が可能となります。
従来のSiCモジュールは、Siモジュールに使われるSiデバイスを単にSiCデバイスに置き換えることで高効率化や高温化を行ってきましたが、Siデバイス用のモジュールデザインでは、材料物性が優れているSiCの特長を最大限に活かすことができませんでした。今回、モジュールのデザインを大幅に変更しSiCデバイス用に最適化することで、SiCの特長を最大限に活かすことができるモジュールの開発に成功しました。
なお、この開発成果は、10月4日〜8日に千葉・幕張メッセで開催される「CEATEC JAPAN2011」のロームブースで展示する予定です。
■主な特長
- 超軽量
- 超小型
- ハイパワー(1000A級)
- ハイスピードスイッチング
- 高温駆動
■主な仕様
| サイズ |
7.5cm×8.13cm×1.23cm |
| 重量 |
135g |
| 定格電圧 |
600V |
| 定格電流 |
1000A |
| 搭載デバイス |
SiCトレンチMOSFET |
| オン抵抗 |
1.5mΩ |
| スイッチング時間 |
ターンオン 35ns/ターンオフ 42ns |
| スイッチング損失 |
ターンオン1.5mJ/ターンオフ 8mJ |
■モジュールのオン特性
■モジュールの回路構成
■SiCトレンチMOSモジュール「APEI HT2000」
■Arkansas Power Electronics Internationalの概要
| 社名 |
Arkansas Power Electronics International |
| 所在地 |
535 W. Research Center Blvd. Fayetteville, AR 72701 U.S.A |
| 代表者 |
President & CEO, Alexander B. Lostetter |
| 従業員数 |
36人 |
| 生産品目 |
パワーモジュール、ゲートドライバーなど |
■用語説明
- 寄生インダクタンス
モジュール内のワイヤーや配線が持つインダクタンス