近年、GSM系携帯電話の小型化・薄型化には目を見張るものがある。GSM(Global System for Mobile communications)は、欧州、アジア、中東、米国など世界100ヶ国以上の広い地域で採用されており、携帯電話のグローバルスタンダードとなっている。GSMには900MHz、1.8GHz、1.9GHzの周波数帯があり、キャリア、地域を越えて使用が可能なデュアルバンドタイプ、トリプルバンドタイプ端末の普及が進んでいる。また、生産量は、2006年で6億8,000万台、2007年は前年比3.9%増の7億640万台と増加傾向にある。その中で、必ず使用されるモジュール部品として、アンテナに最も近い位置にあるアンテナスイッチモジュールがあり、部品点数の削減、小型化、省スペース化等が要求されている。  結果として、アンテナスイッチモジュール内に搭載される電子デバイスの数量も飛躍的に増加しており、回路もより複雑になってきているのである。このような市場の動向に即し、半導体デバイスにも次のような性能が求められている。

 アンテナスイッチモジュール向けのディスクリート半導体デバイスで基本的な電気的特性に加え、特に重要視されている性能として、小型化と薄型化の2点が挙げられる。具体的内容については以下に示す。

小型化
 部品点数の増加に伴い、高密度実装と共に部品の小型化への要求が強い。携帯電話を小型化する為には、モジュール部品を小型化する必要があり、その為には、モジュール内の搭載部品自体を小型化するか部品点数を減らす為に複合化する必要がある。さらに先には、パッケージングされたデバイスではなくベアチップを用いた部品への要求もあり、小型化、省スペース化への要求は強いものがある。

薄型化
 小型化と同様であるが、モジュール部品を薄型化する為には、モジュール内の搭載部品自体を薄型化する必要がある。アンテナスイッチモジュールの場合、PINダイオードの他にチップ抵抗、チップインダクタ、コンデンサが搭載されているが、同サイズの製品を比較した場合、ダイオードの製品厚さが一番厚く、ダイオードを薄くすることでモジュールの薄型化が図れる。

 PINダイオードの特性についても同様のことが言えるが、付加的に定格値以上の特性を求められることが多い。アンテナスイッチ用のPINダイオードは一般的に送受信の切り替えを目的として用いられている。トリプルバンドタイプで6個のPINダイオードが使用され、デュアルバンドタイプで4個のPINダイオードが使用されている。その為、携帯電話の市場の伸びに対して、その数は飛躍的に増加している。また、小型化への移行も顕著であり、1006サイズ(1.0×0.6×0.4mm)であった製品が現状では0603サイズ(0.6×0.3×0.3mm)が標準となってきている。またPINダイオードに重要な特性である端子間容量、直列抵抗についても、現状より低容量、低抵抗の製品が求められている。[図1参照]

 これらの要求に対して、ロームは独自のチップデバイス機構と超精密加工技術により、0603サイズパッケージ『GMD2』を開発した。既にこの技術は携帯電話、デジタルオーディオ等の携帯機器向けに生産ラインを立上げ実績を積んできた。更に小型化、薄型化、複合化を同時に満たした画期的な製品で、超小型マルチダイオードパッケージPINダイオードを開発した。『GMD2』で開発した独自の生産技術を応用し、1608サイズパッケージ(1.6×0.8×0.3mm)に最大4チップのPINダイオード『RN142ZS8A』、2408サイズパッケージ(2.4×0.8×0.3mm)に最大6チップのPINダイオードの搭載『RN142ZS12A』に成功し、前工程をロームワコーデバイス、後工程をロームワコーにて、現在量産中である。[写真1、表1参照]

 この製品は、パッケージ内のチップをシステムの回路仕様に応じて自由に形成することができ、多彩なパターンの回路構成が可能である。具体的には、パッケージ内のアイランドサイズ(チップ搭載部)が1608サイズで8ヶ所、2408サイズで12ヶ所あり、全て同一形状としている為、チップの配置及びワイヤーリング配線を自由に選択することが可能である。[図2参照] また、アイランドの間隔が全て同一の為、端子間の容量は同一特性となっている。ショットキーバリアダイオード、ツェナーダイオードなどダイオードチップを組み合わせたバリエーションの回路構成も展開して行く予定である。また、製品サイズとして、1チップ搭載の1006サイズ従来品を4チップまたは6チップ使用した場合に比べ、実装面積比で47%削減することが可能となる。さらに、4チップ、6チップ分のPINダイオードを1パッケージ化した事により、部品点数の減少による実装費の削減、管理費の削減にも大きく貢献でき、ユーザー製造ラインでの製造コスト削減も視野に入れた製品となっている。搭載素子についても、PINダイオードで重要な特性である低容量、低抵抗を実現している。  次に薄型化には、製品厚みを業界最薄クラスの0.3mmとし、1006サイズ従来品に比べ20%低減している。両面実装でのパッケージ高さの制約が往々にしてある中でこのサイズではほとんど問題にならないと考えられる。これは、パッケージの内部構造を見直し、それらについて最適な構造を得る為、フレーム、樹脂の材料選定、チップの製造プロセスや組立プロセスについて、最適条件を導き出し、業界トップクラスの薄型化を実現している。  さらに、環境負荷物質低減へも積極的に取り組んでおり、ロームの超小型マルチダイオードパッケージではハロゲンフリーの要求も満たしている。このような市場要求を満たす小型化・薄型化のPINダイオード『RN142ZS8A』、『RN142ZS12A』は、市場で高い評価を得ている。

 

今後の展望

 今後も製品への要求特性は現状と同様の内容で進んで行くと考えられる。その中でもアンテナスイッチモジュールだけでなく、携帯電話への搭載部品については、小型・薄型・複合化が一層必要になると考えられる。更に、ユーザー毎に異なるバリエーションの回路構成や、あるいは2チップ搭載、3チップ搭載可能の複合パッケージの開発を進めて行く必要がある。ロームはいち早くPINダイオード4チップ搭載の回路構成を変更した製品もサンプル出荷し、さらにショットキーバリアダイオード、ツェナーダイオード4チップ搭載の製品をサンプル出荷し、ユーザーの視線に立った開発を進めている。
 この要求のその先にはベアチップの搭載があると思われる。先にも述べたように、部品点数の増加、実装面積の小型化などが進めば、ベアチップが台頭してくるであろう。現状では組立の方法も一定ではないようで、各社で模索をしている段階であると思われるが、ある程度の規格なり標準化が進めば一気に広がる可能性もある。市場の要求がいかなるものになろうともロームはタイムリーに新製品を供給していく所存である。
ロームのダイオードは従来から独自の設計技術、デバイス技術、さらに自社開発による生産技術などを駆使し、市場ニーズにいち早く対応した製品開発を行ってきた。今後も小型化・薄型化といったユーザサイドの視点に立った開発を進めていく方針である。

 

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