不揮発性ロジック技術 電源供給なしで情報を保持する回路 起動時の処理時間をゼロ化 待機時の消費電力をゼロ化

ロームは、世界で初めて、LSI内部のレジスタ*1と呼ばれるデータの記憶領域に不揮発性のロジック回路を組み込んだLSIの開発に成功しました。これは、世界で初めてFeRAM (Ferroelectric Random Access Memory : 強誘電体*2メモリ) の量産化を開始したロームが、この技術をさらに発展させて、電源の供給が無くてもLSI内部の演算処理の状況を保持できる「不揮発性ロジック技術」として完成させたものです。

従来のロジック回路

機器の高機能化に立ちはだかる壁

一般に、機器の高性能化が進むなかで、高速化を実現するために大きな電力を消費するようになってきています。そこで、次のような観点から省電力化を実現することを検討しました。例えば、パソコンで対話型の入力処理(考えながら文書を入力する場合など)を行う場合、他に何も処理を行っていなければCPUは稼動していないに等しいのではないでしょうか。このとき、CPUの電源を遮断することができれば、劇的に省エネ効果のあるシステムが実現できるのではないかと考えました。

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LSIのデータ保持にはレジスタへの電流供給が不可欠

CPUに代表されるロジック系のLSIは、さまざまな処理に関する経緯や結果に関する情報を一時的に保持したり、LSIや周辺機器の動作状態を保持・変更するレジスタと呼ばれる演算処理の状況保持回路を持っています。現在一般的に使われているロジック系LSIでは、一旦電源が切られるとレジスタに保持された演算処理状況は消滅(揮発性*3という)してしまいますので、保持回路の電源を切ることができませんでした。

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レジスタの不揮発化で問題解決

ロジック回路のレジスタ部分に、電源供給が無くてもデータが消えない特性(不揮発性*3という)を持つ強誘電体素子を実装する、不揮発性ロジック回路の技術開発に取り組みました。

LSIのレジスタを強誘電体素子によって不揮発化することは今までも取り組まれてきましたが、電力負荷の増大や信号遅延といった問題が発生するため、殆ど使われていませんでした。

ロームでは、新たに強誘電体セパレート構造を開発、これらの問題を一挙に解決し、LSIのロジック性能と信頼性を損なうことなく、レジスタ領域の不揮発化を実現しました。

この技術があれば、電源を切ってもデータが消えないため、演算処理を行っていない回路では、レジスタも電源を遮断できます。

写真1 不揮発性CPUのチップ写真(拡大)
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写真1 不揮発性CPUのチップ写真(拡大)

写真2 不揮発性ロジック技術を用いたCPU(不揮発性CPU)の試作例
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写真2 不揮発性ロジック技術を用いたCPU(不揮発性CPU)の試作例

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従来の低消費電力化技術を克服

従来からの低消費電力化技術としては、「クロックゲーティング」と呼ばれる演算処理を行っていない時に回路のクロックを停止する方法や、「パワーゲーティング」と呼ばれる演算処理を行っていない回路の電源を遮断する方法などが挙げられます。しかし、クロックゲーティングでは、回路内のリーク電流は止めることができないため、リーク電流が増大する傾向のある微細プロセスでは効果が少なくなるという課題があります。また、パワーゲーティングでは、電源を遮断することで大部分のリーク電流を止めることができますが、レジスタの電源は切れないため、少なからずリーク電流が消費されてしまうという課題があります。これらに対して不揮発性ロジック技術では、レジスタも含めて回路の電源を遮断できるため、演算処理を行っていない回路の消費電力(待機電力)を完全にゼロにすることができます。

比較

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ゲーム機のCCPUの消費電力を70%削減

この不揮発性ロジック技術を実際に応用(例えば、ゲーム機のCPUを置き換えると仮定)した場合、ゲームの起動中であっても、頻繁に発生するCPUの待機時間の消費電力がゼロとなるため、CPUの消費電力を約70%削減できることが確認できました。(図1)

また、CPUの動作時でも、情報の書き込み/読み出しを行うブロック以外は電源を遮断するなどの設計変更を行えば、CPUの消費電力の85%以上を削減することが可能と考えています。さらに、このブロック内部をレジスタ・演算回路レベルで細かく電源のオン・オフを管理すれば、CPUの消費電力の95%以上を削減させることも期待できます。(図2)


図3
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図1 不揮発性CPUの動作例

図2 基本的なCPU処理のブロック図(左)と不揮発性CPUの電力制御(右)

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例えばそれは、テレビ感覚でパソコンを使用できる技術

今回の技術をパソコンに応用した場合、これまで何十秒もかかっていたパソコンの起動時間を大幅に短縮、パソコンをテレビ感覚で利用できるストレスフリーな環境の提供も可能となります。家電製品においても、機器内部のデータを保持する為に電源オフ時にも常時通電して電力(待機時消費電力)を消費し続けているものが多く見られ、ロームでは推定で日本だけでも約150億kWh/年(「待機時消費電力調査報告書」((財)省エネルギーセンター)から推定)におよぶ電力が無駄に消費されていると試算しています。あらゆるエレクトロニクス商品に数多く使用されているロジック系LSIに不揮発性ロジック技術を応用することで、エレクトロニクス市場全体における省エネルギー化の推進が可能であると期待しています。

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不揮発性ロジック技術の応用先の一例

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用語解説

*1 レジスタ
ディジタル処理(ロジック)回路において、演算途中のデータや演算処理状況を一時的に保持したり、動作状態を保持するのに用いられる記憶領域のことをレジスタといいます。一般的に、ロジック回路内に分散して配置されています。

*2 強誘電体
誘電体の一種で、電界を加えることで情報を変化させられる物質です。電気分極の状態を利用するため、低電圧で高速に変化させることができる特徴があります。

*3 揮発性、不揮発性
演算処理の途中結果データなどを記録するための回路や素子の性能を表す言葉で、電源を切るとデータが消えてしまう記憶回路や素子は揮発性、電源を切ってもデータを残すことができる記憶回路や素子は不揮発性といいます。


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最新号 vol. 4 / 2009.01

Cover Story 1
電源供給なしで情報を保持する回路
不揮発性ロジック技術

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