
超小型パワーモジュール開発の背景 | SiCパワーデバイスの特徴 | SiCトランジスタの現状 | SiCパワーモジュールの特徴 | 今後の展開 | 関連情報
超小型パワーモジュール開発の背景
近年、急速に発展しているEV/HEV車などに代表されるパワーエレクトロニクスの分野では、更なるハイパワー化や高効率化、小型化が求められている。車載のパワーモジュールや冷却システムの小型化が進めば、自動車内での居住空間が広くとれるなど、私たちの生活をさらに快適にすることができる。このため、パワーエレクトロニクス分野では、より小さなパワーモジュールでより大きな電力を扱えるよう、電力密度を向上することが最重要課題と考えられ、各社で開発が加速している。
ロームでは、これまで開発を進めているSiCデバイスやモジュール技術を用いて電力密度の向上を図っている。従来のSiパワーモジュールでは動作温度は150℃までで、オン抵抗にも限界が見えていたので、チップサイズの小型化は限界まできていると考えられていた。これに対し、ロームはSiCパワーデバイスを用いて200℃以上の高温環境での動作を実現し、チップのオン抵抗を既存のSiデバイスよりも1桁程度低くすることに成功した。このように、ロームではいち早くSiCの特徴に着目し、開発を進めてきた。2010年10月には、世界で初めて225℃の高温で動作するSiCトレンチMOSFETを搭載したモジュールとSiC SBD(ショットキー・バリア・ダイオード)を搭載したモジュールを開発し、モータへ内蔵させて動作を確認した。この高温動作の技術を用いて、パワーモジュールの電力密度の向上を達成してきた。
そして2011年10月、さらなる小型化を目指し、後述する225℃耐熱のトランスファーモールド型のパワーモジュールの開発に成功した。これは従来のSiパワーモジュールと比較して大幅な損失低減や小型化だけでなく、これまでのケース型SiCパワーモジュールと比較して大幅なコストダウンが可能になり、SiCパワーモジュールの普及に大きく貢献する技術である。 |
SiCパワーデバイスの特徴
図1は各種パワーFETの構造と性能の比較である。SiCパワーFETが、パワーデバイスに要求される全ての性能を満たしていることがわかる。SiCパワーデバイスが高性能な理由は、Siに対し、絶縁破壊電界が約10倍大きいため、同耐圧を得るために必要な耐圧保持層(エピタキシャル層)の不純物濃度を約100倍に、厚さを約1/10にすることができ、パワーデバイスの主抵抗であるエピタキシャル層の抵抗をSiの理論上約1/500程度(キャリア移動度を考慮した場合)に低減することも可能になるからである。
さらに、SiCはバンドギャップがSiの約3倍であること、さらに熱伝導率がSiの約2.5倍であるため、放熱性に優れており、200℃以上の高温動作が可能である。そのため、冷却機構の小型化が期待でき、システムとしてみた場合のメリットは非常に大きいと考えられる。
また、SiCデバイスに期待される耐圧領域(600V以上)のSiデバイスは、バイポーラデバイス(電子と正孔をキャリアとするデバイス)構造のため応答速度が遅いが、SiCデバイスはユニポーラデバイス(電子をキャリアとするデバイス)構造で同耐圧領域をカバーできる。
つまり、Siデバイスよりもより高速なスイッチングが可能なため、大幅なスイッチング損失の低減が期待できる。 |
| [図1] パワーFETの構造と性能の比較 |
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SiCトランジスタの現状 |
SiCパワーモジュールの特徴
ロームが開発を進めているSiCパワーモジュールの特徴は、徹底した小型化にある。従来のSiデバイスは、オン抵抗が高いためにチップサイズを大きくする必要があった。さらに150℃までの温度制限が小型化の大きな課題となっていた。SiCパワーデバイスはオン抵抗が小さく、200℃を越える高温環境下でも動作が可能なため、パワーモジュールのサイズを小さくすることが出来る。ロームでは、ケース型に比べて小型化、低コスト化、量産化に有利なトランスファーモールド型の開発を進めてきた。しかし、200℃以上の温度で使用可能な封止樹脂は硬い材料が多く、高温環境下で割れるなどの課題があり、200℃を超える高耐熱のトランスファーモールド型は開発が困難だった。
今回、ロームでは、樹脂の物性値とモジュール構造の最適設計を行うことでこれらの課題を解決した。これにより225℃の耐熱性と小型化を達成し、トランスファーモールド型で225℃での大電力動作を世界で初めて可能にした。開発したモジュールは、6素子搭載で600V/100Aのモジュールである。SiCデバイスを使用した場合でも、150℃までの温度条件では75A程度が限界ではあるが、225℃まで温度を上げられることにより、扱える電流を100Aまで増加させる事が可能になった(写真)。 |
| [写真] 225℃動作可能 トランスファモールドモジュール |
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SiCデバイスとしての特徴と今回の新パッケージの組み合わせにより、例えば同じ機能を持つ従来のSi-IGBTモジュールと比較した場合、体積比で50分の1の小型化の実現が可能になった。さらに電気的特性面でもフルSiC(トレンチMOSとSBD)化を実現したことにより、スイッチング時間が半分となり、大幅な高速化に成功した。実際のスイッチング波形を見ると、70nsec以下の時間でのスイッチングを達成していること、225℃の高温環境下においても、正常にスイッチングを行っていることが分かる(図6)。 |
| [図6] 開発したモジュールのスイッチング特性 |
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今後の展開
開発したモジュールは、今後も、量産性を高めつつ、信頼性を確立させることで、3〜4年後の量産を目指す。 |
関連情報
